スキルガチャはずれた不遇のおっさん、酔った勢いで最難関ダンジョンをクリアする〜欲望のまま生きると決めたのに、周囲からはなぜか聖人と呼ばれます〜
くろの
1章
第1話
目が覚めると、そこは宇宙だった。
俺は宇宙を光の玉になって彷徨っていた。
「あれ……? 確か、残業の後久々に家に帰って、それで……」
そこから先の記憶が無い。というか、口がないのに声が出てるのはどういうことだ? 目も普通に見えるし。
辺りを見回すと、俺と同じような光の玉がいっぱい浮かんでいる。
……なんだか死後の世界みたいだな。
そんな風に考えていると、突然虚空に少女が現れた。
ウェーブかかった髪の、目が冴える程の美少女だ。
美少女は枕片手に欠伸をしている。なんだっけああいうの。ダウナー系っていうんだったか。
『ども、あたしは神。えー、君たちは死にました。ってわけで、これから異世界に送るからよろ』
ダウナー系女神はかったるそうに言い放った。
そうか。俺死んだのか……
まあいつ過労死してもおかしくないようなブラック企業勤めだったので、あまり驚きもしないが。
『まあ、SDGsとか色々配慮しなきゃいけない時代だからね。ある程度若い魂はリサイクルすることになってるの』
流石に説明不足と思ったのか、ダウナー女神はそう付け加えた。
神の世界にも環境問題とかあるのか。
『ま、こっちも時間無いから疑問は受け付けないんでよろしく。まあ過酷な世界だし一応の配慮はしてあるから』
ダウナー女神が手を振りかざすと、虚空から巨大なガチャガチャの機械がドスンと音を立てて落ちて来た。
『このスキルガチャを一人一回引かせてあげる。それじゃ、さっさとやって』
世間の認知度が上がってきたからか、神の圧倒的な存在感に抗えなかったからか。みんな文句も言わず列に並ぶ。
俺は様子見の為、敢えて後ろの方に並んだ。
最初の1人がガチャを回す。すると金色の花火が打ち上がり、引いた奴はおお!と歓声を上げた。恐らく当たりを引いたのだろう。
なるほど、当たるとあんな感じで演出が出るのか。一昔前のソシャゲのガチャみたいだな。
その後も金、銀、虹など、引くたびに当たりのエフェクトが続いた。金がSRで、銀がR、虹がURといった感じだろうか。偶にハズれるものの、基本的にはいいスキルが手に入っているようだ。
——だが、その偶にハズレるというのが俺にとっては大学問題だった。
「俺昔からソシャゲのガチャ運くっそ悪いんだよなぁ……」
ピックアップの天上課金は当たり前。完凸なんて目指そうものなら諭吉が10枚以上必ず吹っ飛ぶ。その上、せっかく凸したキャラが次のイベントですり抜けまくったりするのだ。
あれマジでなんなんだろうねクソ運営ぶっ殺してやる!!!
おっと話が逸れた。とにかく俺は死ぬほどガチャ運が悪いのである。
やがて遂に、俺がガチャを引く番が回って来た。
目の前に神がいるのに変な話だが、当たれ!と祈りながらレバーを回す。虹とは言わないまでも、せめて通常レアである銀くらいは当たって欲しい。
「……あれ?」
だが、いくら待っても花火が上がる様子はない。
『ああ、貴方は『はずれ』だね。演出はないけど、一応スキルは手に入ってるはずだよ』
「は、はずれ……? そんなのいくらなんでも酷くないか?」
言われて意識を集中すると、頭の奥にぼんやりと文字が見えてきた。
――――――
【ステータス】
名前 源田源五郎
HP 100
MP 100
力 G
守り G
知力 F
敏捷 G
運 G
【スキル】
・ランダムダメージ(はずれ)
効果 : 対象一体に1~9999の中からランダムに固定ダメージを与える。
クールタイム:10分
消費MP :70
射程 :長い
——————
あれ? ステータスは疲れた社畜らしい貧弱なものだが、スキルは言うほどはずれか……?
固定ダメージ系のスキルは、ラノベとかだと優良枠だ。はずれとはいえ、やはり生きていくのに困らない程度の性能ではあるのかもしれない。
そんな淡い希望は、次の瞬間に打ち砕かれた。
『プッ、凄いね君。はずれなんて、今回はそれ一つだけしか入ってなかったのに。いやほんとウケる』
女神が馬鹿にした調子で笑ってくる。
確かに、言われてみればクールタイム10分なのもMP的に1発しか打てないのもキツイか。
成長したら強くなるとしても、それまではネトゲでいう介護プレイが必要になって来るタイプのスキルだ。そして、俺みたいなおっさんが育つまで介護してくれるステキな上級者は……きっと過酷な異世界にはいない。
「うおっ、なにこれウルトラレア……《光の剣》!? めっちゃ強そうじゃん!」
しかも、俺の次に引いた奴はマツケンサンバばりのド派手な演出でしっかりとチートを引いている
なるほど、虹はURではなくSSRで、マツケンサンバがURだったか。
『お、それ一番の当たりだね。……てかこの前に『はずれ』を引くとか惨めすぎる……くくっ』
女神は再度馬鹿にしくさった様子で俺を嘲笑って来る。
もう神だとか関係なく一発殴りたいなこいつ。まあ今は腕がないから無理なんだけど。
『ま、人生超ハードモードだと思うけど頑張ってね~』
……こうして俺は、はずれスキルと共に異世界へと飛ばされたのだった。
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