表裏の追記~能力のある現実世界~ 俺たちは、異世界にいる感覚~
綺暖 心菜[きだん ここな]
第一章::::::この世界の実態::::::
第0話「冤罪」
灯の灯らない蛍光灯が、薄暗い裏路地に切なく設置されている
目の前の光景は、非常識を意味するものだった
数分前の笑い声はなんだったんだろうと、疑問に思う
それはもう、いない
女子高生の制服がギタギタになり、髪の毛は赤い液体とともに下水道へとゆっくり流れていく。普段、目の当たりにしない光景。それに快感すら覚えてしまう。
一言だけの呪文、それが全てを消え去り、自分だけが残る。
いつからこうなってしまったのか、ずっとチカチカする星に問いかけるも、答えは返ってこない
明日には、警察の捜索が始まるだろう。そして関わっていったものから次々と姿を消す
その地獄絵図は最高の蜜の味がした
空気を踏み台に、ふわりと浮かぶ
そしてそのまま姿を消し…
____________
________
_____
重たい瞼を上げると、切ない天井が広がっていた
またか
心でそう呟く
意味もない人生だと思うようになったあの夜、手に入れた
毎日毎日、違う夢を見ている
違うことが、人生においての向上心につながる
私の能力は「予知夢」
とか言っても、完全に夢のとうり世界が動くことなんてない
せいぜい、蛍光灯の灯りが灯らなくなることぐらい
だから、わざわざまだ鉛を背負ったような体を頑張って持ち上げたのに…
ドアを開け、いつものジャンプで下まで一気に降りる
「Good morning」
そういったまま、テーブルに直行
いつもの温かい味噌汁が用意されて、隣には好物のレモンの薄切りまで置いてある
そこで、奥に置かれた皿…に、トマトが置いてないことに気づいた
そこでものがいつも散乱しまくっている台所に入り、野菜室を開けたのだが…
いきなりの悪臭に、鼻だけでなく、目も閉ざしてしまった
足元が濡れる。冷たい。
吐き気を覚えた私は、目をつぶりながらトイレに駆け込む
便器でつまずく自分を恥ずかしいと感じながらも、黄色い粘膜を必死に出す
ようやく落ち着いてところで、考える
さっきのは…
一瞬だけ見えた赤色の悲劇
確認するため、鼻を抑えて、速急に台所へと駆けて行った
母親のタヒ体を確認できた
「被告人にタヒ刑を言い渡す」
ちょうど3ヶ月後に聞いた第一声
なぜか私は裁判所にいた
その時に沸々と上がった怒り、怒りなのか?
もちろん母を56したのは私じゃない
無能の警察が証拠を色々並べた後に訴えた偽の真実は、通報人である私の殺人容疑
状況からも私が犯人なのは確信していたようだ
何より、母親は莫大な資産を持っていた
裁判官の「タヒ刑」という言葉が、深く心に傷をつくった
そのままなるがままにふざけ、たまに殴っられ、タヒ刑のときにはボロボロで…
最後に見た床が、私をからかっているような気がした
____________
________
_____
「ただいま」
誰も居ない家に、誰かがいるという期待も込めて挨拶をする。沈黙の挨拶を受け取った俺は、青色のスニーカーを脱ぎ、動きやすくて変な制服もそのまま脱いでしまう。
今日の出来事に思わずにやけてしまう自分が、好きだった。カバンを服の上に放り投げ、そのまま猛ダッシュで脱衣所へ直行。5秒もかからずに風呂場にhole inする。
風呂をいつもの45度という少し熱い温度に設定し、沸かし始める。こうして風呂場は、一瞬で水の音に満たされた。
濡らした髪にわずかにこびりついた垢をとりながら、ふと思う。いつも通りの自分を通してきた自分が、今ここにいるか。
その答えはすぐに出た。ここにいる。
体全体を流した後は、いつものおふざけタイムだ。
一気に透明感をまとった物質に、顔を突っ込む。
そこから、体内タイマーがスタート。
1、2、3、4、5、6…
肺の中に溜めていた酸素がなくなったところで、ずっと無表情でいた顔を勢いよく上げる。
その反動で、外にビチャっと水が落ちたが、いつものことなので気にしない。
最後に頭に浮かんだ数字は、512。そこから60を割り、8と32をつくりだす。
8分32秒、俺が水に潜っていた時間
昨日の時間を超えることができなかったことを、水のせいに勝手に解釈して、のぼせた頭を必死に持ち上げながら場に合わない、ひんやりとしたドアノブを回す。
let's go~という頭の中の号令が一気に全身に渡る。気づけば自分のデスクに向かってご対面。
誰かに褒めて欲しい欲求を心の棚に閉め込み、充電ケーブルか刺さったままのパソコンを立ち上げる。そこに新たに愛用のヘッドフォンのケーブルをさらにぶっ刺す。
うん、これは拷問のうちに入るのかもしれない
薄いボタンを指先が触れた。すぐにスクリーンに出た「二ノ宮 章」のログイン画面を突破し、何ヶ月か前からずっとあるタブへとカーソルを合わせる。
次の瞬間、一つの大きな文字が視界に入ってきた。
「The story of life 命を大切に」それがこのサイトにつけられた名前。元々は人の大切な命について熱烈な会議が行われていたのだが、今はもう、1日一回。ニュースで報道された「命に関わる問題」を動画として上げるだけになっていた。
今日の日付の横に書かれたプロファイルを立ち上げながら冷蔵庫に行く。
冷蔵庫を開けると、まだ気持ちいいというには早い冷気を感じることができた。
その真っ白い空間を、肌色の自分の腕が突き抜けて、一番上を陣取っている缶コーヒーを掴む。手前に一気に腕を引いた瞬間、その缶コーヒーに積んでいた他の缶コーヒーが一気に倒れてきた。
それを反射的に5本全部受け止めた俺は、とりあえず安堵のため息をつく。
綺麗に受け止めた缶コーヒーたちを冷蔵庫にしまい、さっきのデスクに戻る。もうダウンロードは終わったらしく、画面には、今日の日付のみが書かれているという殺風景なサムネが陣取っていた。
地味なのに偉そうだなぁ、という感想を組み立てながら、マウスの右ボタンをクリックする。
次の瞬間、ケーブルを通じて平坦なアナウンサーの声が耳に響き渡った。
「今日のニュースをお伝えします。今日、X県Y市では学校の幼児向けに命の授業を行い…」
一つ一つのニュースごとに、聞こえてくる声は低くなったり、速くなったりする。
でも、このアナウンサーたちの声はいつも平坦。感情はあえて込められてないという。でも、自分にはわかる。
さっきのK国の戦争について話していたアナウンサーの声には、わずか、ほんの僅かだが、怒りが込められていた。
憎しみとはまた違う形の怒り。年齢と見た目からして、育児がうまく行ってないのだろうか?少しだけ、心配しているような感じがする。
そんなくだらない特技を自分の中で披露している間に、いつもの「あれ」が出てきた、いや、正確には「あれ」に関するニュースなだけなのだが、
「速報です。ただいま例の連続殺人犯のものだと思われるタヒ体がT県M区でみつかりました。警察によりますと、すでに遺体は原型をとどめておらず。犯人の手ががりも通行人の目撃情報もえー、現状では一切ないとのことです。警察は、犯人逮捕に全力を尽くすと同時に、被害者を減らそうと試みています。」
そう、そうなのだ。この連続殺人犯、いつもこう。
画面右上の時計をみると、今からちょうど一時間くらい前。本当に速報だったのだろう。
じっと時計を見つめて細かい時間を計算していると、時計が急に黒くなった、いや、画面が切れた。
これが最後のニュースか、そう思うと、このサイト限定のコメント欄にブックマークから移動。
これまた画面の移動に時間がかかり、今度は缶を握りつぶす遊びをしていた。これ、意外と気持ちいい。
暗い画面から、一気に白の面積が増える。画面はすべてダークに設定してるのに、こういうところで編集ミスが余計目立ってしまう。
今度は「コメントを入力してください」の文字にカーソルを合わせ、右クリックをすると、今日の挨拶が数秒でならびかえられた。
Chinozouki)Good morning
はじめの一歩)馬鹿か今は夜だろ
いつも道理の軽快な口調が帰ってきたことにまずは安心する。
そうすると、また数秒後にはいつものあれが帰ってくる
この世の人)あの連続殺人事件、見た?
この文字に、思わず興奮してしまう。マウスを持つ手が少しだけ、揺れた。
Chinozouki)うん、マジでおもろいよね
はじめの一歩)今度は溺タヒだってよwいつ聞いてても飽きないわ
この世の人)まあ、タヒんだ人が可愛そうではあるがな
Chinozouki)欲求を満たすためにこのサイトに来ている俺等どうかしてるよな
この世の人)お前は違うだろ、ほら、あれ、志望校に入るために人体の研究をしているだけだろ?
はじめの一歩)いや、欲求はChinozoukiにもあるはずですよ?
Chinozouki )よびと、大当たり
この世の人)いえーい
はじめの一歩)…
こんななにもない会話を、毎日繰り返している。
パソコンの扱いにも、もう慣れた。人体についての研究が認められ、推薦入学のみのこの学校にも入ることができた。
黒く染まったこの世界で、みんないつも表に裏を作っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます