第26話[これからのこと]

〜現在地:アジト・屋上〜

〜魁視点〜


深夜2時

さっきドンパチしたせいで、そこら中から警察の音がしたり、消防車の音が聞こえる

多分テレビでも、流星街の事は語られるだろう、まぁ、もし映像として残ってても、虎狼と俺たちの違いなんて分かるなんてことは無いだろう、あんな多い数の中から、たった30人しか居ない零夜組俺たちを撮るなんて、無理に近い

そんなことを考えながら、俺はポケットにしまったタバコケースを掴み、その中から1本のタバコを取り出す


だが、


魁「……チッ、ライター……」


どうやらライターを置いていってしまったらしい、何処を探してもライターが見つからない


魁「……しゃあねぇ、取りに行くか」


俺はベンチから立ち上がり、ライターを取りに自室へと向かう事にする


秋月「おーよっす、お前も吸いか?」


すると、屋上玄関口から秋月がひょこっと現れる、この言い方、どうやら秋月もタバコを吸いに来たようだ


魁「そうだ、だけどライター忘れた」

秋月「ぷっw何やってんだw」

魁「うっせぇ」


小馬鹿にしてくる秋月を無視し、ライターを取りに屋上玄関口へと向かう


秋月「ほらよ」


すると、秋月が俺に向かい差し出す

「?」と一瞬思うが、コイツの手の中にある物を見て直ぐにわかった、自分のライターを、俺に差し出しているらしい


魁「……さんきゅ」

秋月「はいはい、ほら、吸うぞ」


秋月に促され、俺はさっき座っていたベンチにまた座る


秋月「何吸ってるん?」

魁「ハイライト、お前は?」

秋月「俺セブンスター」

魁「変わんねぇな、たまには冒険してみろよ」

秋月「これが良いんだよ」


他愛もない話をし、ライターを着火させ、タバコに火をつける


秋月「あ、俺のも火付けて」

魁「はいよ」


差し出されたセブンスターにライターを近付け、タバコから煙がもくもくと上がる

俺たちはタバコを咥え、ギラギラと輝く月をボーッと眺める


魁「いてっ」


すると、俺のこめかみに何か衝撃が加わる

こめかみを抑え、俺は辺りを見渡すと、秋月がぷっと笑いを抑えるかのような音を出す


秋月「俺のデコピン痛かった?w」


どうやらコイツが俺のこめかみにデコピンをやりやがったらしい、少し不服に感じたが、ライターを貸してくれたんだ、ここは多めに見てやろうと思い、「……ちょっとな」とだけ返しまた席に座る


そして、また静かな時が流れる

風とサイレン音が街中に響き、それが心地いいBGMのようにも思えた


秋月「なぁ〜魁」


ボーッとしながら月を眺めていると、突然秋月から呼ばれる


魁「なんだ?」


秋月はタバコをふかし、一呼吸すると、俺の方を見ず、口を開ける


秋月「これからどうなると思う?」


それは、虎狼と俺達が、これからどうなって行くかという問いだった


魁「さぁな」

秋月「……まっ、分かる訳ねぇか」


俺の返答に対し、この回答が来ることを知っていた、という口ぶりで言う


魁「………」

秋月「ん?どうしたそんな顔して」

魁「……いや、なんでもない」

秋月「そうか?」


俺は再度タバコを咥える

それにつられたのか、秋月もぽかんとしながらも、俺に続いてタバコを咥え、また静かな時間が始まった


──月明かりは光を増していく


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

〜現在地:アジト・自室〜

〜玲亜視点〜


あー疲れた

先程の戦闘で出血してる箇所はあるが、どれもかすり傷、絆創膏貼ればすぐ治るような物ばかりなので、私は傷を放置し、自室の椅子に座り、机に顔を伏せる






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


──お母さん……?お父さん……?


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


……またか……また、無意識に、両親のことを考えてしまった

もう会えない、会えないことは分かる

情報屋に言っても、手がかりはない

と言うか、家に帰ってきたら、忽然と姿を消した、神隠しという言葉が似合っている


なんでいなくなっちゃったのかな

もっと喋りたかったのになぁ

私もお母さん達と一緒に居たら、一緒に消えてたのかな、なんであの時……

そんな事を思って、後悔しても、両親は帰ってこないし、声なんかかけてくれない


心の穴が埋まらないような感覚だ


怜亜「………寂しい」


"寂しい"

私の人生は、この言葉で言い表せる

家族に会いたい、"花鳥風月"の皆に会いたい



あと



あと



あと









あと?







……あと…







あれ?









誰 ︎︎か ︎︎居 ︎︎た ︎︎っ ︎︎け ︎︎?

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