第11話[詮索メンバーとアジトメンバー]

〜現在地:墨田区・スカイツリー前〜

〜秋月視点〜


虎狼組本部詮索作戦の会議から3日目

墨田区担当の俺、叶翔、白月で各所を回る

虎狼組の本部を見つける出張なのだが、殆ど観光みたいになってしまっているが、まぁいいかと思い、スカイツリー前で墨田区での情報を整理する


白月「ほへ〜高ーい……」

秋月「うへ〜すんげ〜たけ〜」


情報を整理するつもりだが、スカイツリーがとても立派で、気づけば窓から顔を覗かせスカイツリーを眺めていた


叶翔「景色を堪能するのも乙なものだが、今は整理するぞ」

秋月「わぁってるよ」


助手席で太ももに肘を置き、叶翔に目線を移す


白月「でも、色んな有名な場所の周辺探したけど、それらしい物は無かったねぇ」

秋月「そうなんだよな〜、まぁ、見逃してるって言う可能性も全然あるんだけど」


叶翔は黙々とスマホのメモアプリに情報を纏めているよう

数分経つと、叶翔は俺と白月が喋っている間を割って入り、スマホを車内の中央にある画面に接続し、口を開ける


叶翔「これが俺達が巡った場所だ」


画面には墨田区の地図が出され、俺達が巡った場所には黒点が塗り潰されている

黒点を見る限り、もう墨田区の有名所は巡り尽くしたらしく、黒点の上には赤で‪✕‬と記されていた


秋月「…ここまでやって、収穫無しってか」

白月「……キツイね」


俺と白月は落胆の声を唸らせ、頭を抱える

まぁ、そんな簡単に見つからないか、と思おうとするが、やはり見つけられなかったのが悔しい、時間もあまりかけたくない

全身の力を抜き、座席の背もたれに受け止めてもらう


叶翔「今日一日休憩したら、また別の区画で行動を開始しよう」


墨田区は諦め、別の区間を詮索する事を提案され、それを拒む理由もないので二つ返事で了承した


辺りは暗くなっていく、スマホの時間はもう6時半と示しており、俺達は人に見つからない駐車場に停める為、車のアクセルを思いっきり踏んだ


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〜現在地:新宿区・明治神宮前〜

〜天斗視点〜


明治神宮が見える場所で車を停め、車内で蒼羽と情報整理を行う

日が暗くなり、現在時刻は6時半頃

特に怪しい所もなく、収穫はなし

蒼羽は逐一メモしており、メモ帳にペンを走らせている


蒼羽「これが現在の状況だな」


するとメモが終わったのか、運転席に座っている俺にメモ帳を突き出す

俺はそれを受け取りメモに目を通す

そこには今まで回った箇所の詳細なメモが書かれていた、大量の字でメモ帳は埋め尽くされていたが、要約すれば、「収穫無し」という事だろう


天斗「……新宿区、特に怪しい所なし…か」


ため息混じりの声を出し、メモ帳を蒼羽に突き返す、蒼羽はそれを受け取り胸ポケットにしまうと、俺に向かい言葉を放つ


蒼羽「特にめぼしいモノは無かった、周辺住民に聞いてみたりもしたが、そんな事は聞いたことも無いと」

天斗「新宿区の住民が気付いてないだけか、それとも虎狼組に脅されているか」

蒼羽「後者は無いだろうな、大量の住民を支配できるほど暇では無いだろう」

天斗「じゃあ、前者の可能性が濃厚って訳か」


蒼羽と俺は互いの考察を話す

だが、それも不毛な考察

結論は実らず、俺達は次第に無言になっていく、萃のハッキングでも、やはり情報が少なすぎるようで、萃からの連絡は音沙汰無し

ホントに特定に至るのか?と言う半ば諦めのような思考も出てくる、そんな自分に俺は苦笑いをし、(見つけなきゃ行けないんだ)と鼓舞をする


蒼羽「もう日が落ちる、今日は休もう」

天斗「……だな」


車の天井を見上げる体勢を止め

深呼吸をした後、しっかりとハンドルを握り締める


と、その時だ

蒼羽に肩に手を置かれる

俺は数秒固まったが、ゆっくりと蒼羽の方を見る


蒼羽は俺を見つめ、いつもの声より1トーン下がった声色で、俺を諭すように


蒼羽「根を詰めすぎんなよ」


と一言

数秒硬直したが、直ぐに笑顔を作り、俺も


天斗「分かってるわ」


と一言告げる


蒼羽「早く人が居ない所の駐車場に車停めようぜ」

天斗「リョーカイ」


俺はエンジンをかけると、アクセルペダルを踏みつけ黒塗りの車を動かした


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〜現在地:千代田区〜

〜凛音視点〜


凛音「はぁ……」


聖音さんが運転する車の助手席でため息をつきながらレイテルを見る

他のメンバーも収穫無し、こっちもめぼしい情報を無かった

スマホを顔に当て足をバタバタとさせ、何ともモヤモヤが晴れない状態になってしまう


凛音(………)


なんだろう、この何とも言えない気持ち

平和ボケしてたのかな、零夜組が危険に晒されて、焦ってるのかな


マフィアにらしくない、"情"なんてものを、持っちゃったから、今こんなモヤモヤしてるのかな


折角、欠けてたピースが埋まりそうなのに


こんな事で、欠けてるパズルの内側から


"どす黒い何か"が、零れ落ちそうになってる


唇を噛み締め、スマホの握る手が強くなる




聖音「……凛ちゃん?」


その時、運転席から聖音さんの声が聞こえ

肩を揺らされる衝撃にハッとなり、スマホを顔から離し聖音さんの方を見る


凛音「う、うん!?どうしたの!?」

聖音「いや……なんか大丈夫かなって思って、大丈夫?」

凛音「あ、あぁはい、大丈夫です!」


凛音(……あ、れ、今何考えて……)


片手を頭の額に押し付ける

先程の這い出る"邪悪"が、一体なんだったか


その答えを導き出そうにも、そのピースが見つからない


パズル完成まで、今は未だ、届きそうにない




胸に残る焦燥感だけが、私の思考回路を動かしていた





この邪悪の正体を、見つけなければ





───抜け落ちたピースを探さなくては





変な思考に苛まれている事に気づき、車内は

シーンと静かだった、その静寂が私の耳を刺激し、思考は平常へと戻る


凛音「あっ……すいません」

聖音「あいや、大丈夫だよ?」

翠郎「どうした凛音、体調悪いのか」


2人から心配するような声で問いかけられ

私は笑顔を作り取り繕う


凛音「大丈夫!すいません……」


微妙な空気が続き、妙に息苦しく感じる


翠郎「まぁ、凛音の体調は様子見だ、今は千代田区の現状について話そう」


と、私の状態を汲み取ったのか、翠郎が話題を千代田区の詮索に移す


聖音「あぁ、そうね」


聖音さんも話を合わせ、話題は虎狼組本部についてに変わっていく


聖音「まず、結論から言うと、今回千代田区での本部詮索は、特に収集を得られなかったってことね」


聖音さんは、車を動かしながら淡々と話す

千代田区では、虎狼組本部は見つけられなく

有名スポット周辺は全て周り尽くした

ただでさえ建物が多い東京全土を調べ尽くすなど無理に近く、最早頼れるものは、萃さんが得る情報のみ


翠郎「あと頼れるのは他のメンバーと萃だけかぁ?」

聖音「そうだね……だけどその萃さんも情報を得るのに悪戦苦闘しているから、今はまだ闇雲にそれらしい建物を見つけるしか無いわね……」

翠郎「……だよなぁー」


翠郎はフゥ、とため息を吐き、座席の背もたれに身を任せる


聖音「……もう7時、外も暗いし、少し休もっか」


聖音さんは休むことを提案し、私と翠郎はそれを承諾した


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〜現在地:???〜

〜???視点〜


俺の机の前に、3人の構成員が正座をし、醜い顔を向けながら俺に向かい叫び半分で話す


チンピラA「ッフグッハァ……首領ボス……」


???「ボスに向かい汚らしい声を発するな」


横の幹部が1人の構成員の髪の毛を掴み怒気の孕んだ声で言う、俺はそれをなだめ、構成員に話を続けろとジェスチャーする


チンピラA「あノッ……オレ……俺達が接触した奴……や……ャばいヤツです……」

チンピラB「ッそうなんです………!あの戦闘技術、並の奴じゃ無いんです!!!」


???「……ほう?それは興味深い話だ」


チンピラC「あッ……あのッ……アイツ……普通のボディーガードじゃない……そんな殺気をかもし出していました……」

チンピラA「ッ絶対!のヤツです!!間違いありません!!」


???「……それはそれは」


俺は腕を組みながら彼らに向かい発し、留まらず彼らは言葉を紡いでいく


チンピラB「あ、あんな奴ら!ボスの手にかかれば1発です!」

チンピラA「そ、そうです!!!早くあんな奴らとっちめましょうよ!!!薬と恐喝で金はたんまりだし、零夜組についても沢山話しは聞けたでしょう!?」


???「……ふむ、そうだな」


俺は席から立ち上がり、彼らの目の前に立つ

彼らは俺を見るなり、恐怖の目で見つめる

俺は屈み、正座している彼らと同じ目線に立つ


???「確かに、そろそろいい頃合いだろう」


チンピラA「ッなら俺達も協力しm……」

???「ただ」


???「組織の金を盗み、私利私欲を満たす為に使うとは、見逃す事は出来ないなぁ?」

チンピラA「ッヒ!!!」


ニコヤカな表情を崩さず、立ち上がり


周りの構成員に向かい、冷酷に吐き捨てる


???「""連れてけ""」


チンピラB「ッヒァ……やめ、やめて……」


???「地獄へ出張だ」


チンピラA「アグッ……!アェ……!やめッ…やめでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


周りに居た構成員に捕らえられる、そのまま部屋の扉が開かれ








そして閉じられる








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〜現在地:スーパー〜

〜零夜視点〜


現在時刻午後8時、あの会議から3日経った

今の俺は紲の助力もあり、書類作業も終わり自由な時間が増え、とてもいい気分になっている


そんな俺は今、スーパーでおつまみのお菓子を買う為、アジトの近場にあるスーパーに寄っている

菓子類が豊富にあり、雀の涙ほどしかないお小遣いを削りお菓子をカゴに詰め込む


零夜「全部うまそうだな〜」


片っ端から美味しそうな物を詰め込んで行くので、直ぐにカゴの中はパンパンになってしまう、流石に買いすぎると財布も心配なので、今日はもうこれで良いかと思い、レジへの方へと向かう


ゴツン

零夜「あっすいません」


と、向かっていると前からスマホを弄っていたので前から来ている人に気付かず肩がぶつかってしまい、ぶつかってしまった人に謝る


???「いや、こちらこそすまない…って、零夜?」

零夜「あ、朧月ろうげつじゃん、よっす」

朧月「あぁ、奇遇だな」


沢山のスイーツ類を入れたカゴをぶら下げている朧月とスーパーでバッタリ出会った

朧月のカゴを見ると、沢山のスイーツが入っており、これ全部1人で食うのか……?と言う疑問が湧き上がる、だが、目の前に居るのは1人の女性、そんな事は聞けなかった


朧月「おぉ、沢山のお菓子があるな」


朧月が俺のカゴを凝視しながら目を輝かせ言う、多分、カゴの中のお菓子が食べたいのだろう、ヨダレが少し出ている


零夜「朧月……ヨダレ出てんぞ……」

朧月「あ、すまない、美味しそうでつい…」


そんな申し訳なさそうに言う朧月を見て、俺は笑いながら「帰ったら2人で菓子パでも開くか」と言うと、再度目を輝かせ「萃の手伝いを終わらせたら直ぐに行く」と言う


俺と朧月はそう駄べりながらレジに向かい、商品の精算をし、精算を終えた後はスーパーを退店する


暗い夜道、辺りは街灯に照らされていた

街灯に照らされている道の地面を踏んづけながら、朧月と軽く雑談をする

最近の趣味、楽しかったこと、嬉しかったこと、色々な事を話し、会話は俺と朧月の最初の出会いの時の話になった


零夜「いや〜まさかあん時のお前がこんなに俺と仲良くしてくれて、しかも一緒に帰路に着いてくれてるなんて、考え深いなぁ」

朧月「そうだな、あの時は……」

零夜「……朧月?」


朧月の動きが止まり、俺は朧月の顔を覗き込むように見る


零夜「ッ!?」


俺は直ぐに顔を除くのをやめ、朧月の背中をさする


零夜「……朧月、大丈夫だからな」


朧月の肩を持ち支えながら背中をさすり、大丈夫だよと耳の近くで優しく言う


朧月「ッ、すまん、少し昔を思い出してた」

零夜「大丈夫か」

朧月「すまない、もう平気だ」

零夜「歩けるか?」

朧月「あぁ、歩ける」


朧月はヨボヨボとはしているが、ゆっくりと歩き出す、俺も支えながら朧月の歩きを補助し、ゆっくりとアジトへと向かう


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アジトへ着き、朧月よ部屋へ向かう

朧月は先程よりか足取りも回復し、俺の支えなしでも歩けるようになった


朧月「すまないな、零夜」

零夜「良いんだ、今から萃の部屋に行くのか?」

朧月「あぁ、その予定だ」


これから萃の手伝いをする為また部屋を出ると言うが、やはり体調が心配だ


零夜「もうちょいそこで休め、俺から萃には言っておく」

朧月「いや、大丈夫だ」


食い下がる朧月に俺は「いいから少し休んどけ」とベッドに座らせる


零夜「10分程経ったら、萃の部屋に来な」

朧月「……分かった」


渋々だが、朧月は頷く

そんな俺は朧月に「またな」と告げ、朧月の事を伝えるため萃の元へ向かう


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コンコンコン


萃の部屋に着き、ドアを3回ノックする

中からは「いいよ、入ってきて」と声が聞こえ、お言葉に甘えてドアを開ける

部屋にはガチガチに機械チックに装飾された部屋とキーボードをタイピングしながらモニター前に座る萃が居た

萃は俺が入ってきた事を認識するとタイピングを止め、俺を見つめる


萃「あれ、朧月は?」

零夜「あぁ、朧月は少し休んでから来るって事を伝えたかった」

萃「ふぅん、わざわざご苦労さま」


キーボード横にあるエナジードリンクを飲み、俺に労いの言葉をかける


萃「あと、聞きたいことがある」


すると萃が俺の目を見て問いかける


萃「朧月の過去に、何があったの?」


それは、朧月の過去に関する事だった


零夜「……なんでそんなこと聞く?」


モニターに目を移し俺の問いの返答を答える


萃「前々から聞こうと思ってたのよ、ここの人達の過去のプロフィールをたまに確認するけど、大半がその過去、及び経歴が不透明なの、朧月もその例に漏れずね」

萃「朧月には、まぁ色々と手伝ってもらってるし、色々過去を把握してた方がいいじゃん?」


朧月の過去について、前々から聞きたかったらしい

だが、それは俺自身よく把握していない事

「分からない」とだけ言うと、萃は「ふぅん……」と声を上げる

俺は萃の邪魔をしちゃいけないと思い、「じゃあ、俺は帰るわ」と一声かけると、萃は「リョーカイ」とだけ言い、モニターにまた目線を移し、タイピングを再開する


俺はそんな萃を見ながら、ドアを開け部屋から退出し、ドアを閉める


すると、廊下からスイーツのような甘ったるい匂いがし、それに釣られその匂いの元を探るため歩き出す


歩き続けると、スイーツの匂いの元となっているであろう部屋を特定する

そして、誰がスイーツの匂いを発してるかも特定する

ドア前の看板には、"朧月"と書かれており、多分、スーパーで買ったであろうスイーツを食べているのだろうと勝手に考察する


俺はそれ以上深入りせず、

自室の部屋へと歩みを始めた

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