1 ヘッセ「メルヒェン」

 一冊目は、最近読んだヘルマン・ヘッセの短編集「メルヒェン」です。


 この短編集、自分がこれまで読んだ小説の中でもトップレベルに好みの作品でした。いわゆるオールタイムベストってやつですね。

 これまでヘッセの小説は「車輪の下」と「デミアン」だけ読んでいて、どちらも好きなんですが、これらはどちらも私小説的であり、陰気でジメジメとした印象がありました。

 デミアンはまだ主人公が成長する過程が描かれるため救いはあるのですが、車輪の下に関してはヘッセが考えた最強(最悪)のバッドエンド人生、みたいなものがお出しされていて、主人公と全然境遇の違う自分ですら「苦しいからもうやめてくれ……」となる程でした。まあ、それが良さでもあるのですが。

 

 ところがこの短編集はそれらとは打って変わり、美しさや、愛や、平和など、ヘッセの理想とするものが多く描かれているといった印象でした。

 この短編集は題名の通りメルヘンであり、それ故にファンタジー要素は多分に含まれているのですが、だからこそヘッセは自身の理想を空想の世界に落とし込んだのかもしれません。

 特に印象的だったお話は、一番最初に乗っていた「アウグストゥス」というお話です。あらすじ紹介などはしませんが、この小説はとにかく雰囲気が抜群で、自分がこれを読んでいたのは街中のマックという、メルヘンからはかけ離れた場所だったのですが、そんな中ですら(或いは、そんな中だからこそ?)、その文章にうっとりとさせられ、心地の良い感傷的な気分に浸らずにはいられませんでした。

 暖かで安らかで美しいものに包まれながら、幸福に満ち満ちた気持ちで命を終えられることが出来るのなら、それまでがどんな人生であったとしても、それは良い人生であったと言えると、僕は思っています(終わりよければすべて良し)。この小説ではそんな甘美な理想が(道中は色々ありましたが)叶えられ、主人公は母こそ失いましたが、神的な存在である名付け親の膝の上で、眠るようにして安らかに死んでいきました。  

 はい、羨ましすぎます。僕も終わりを迎えるときは、安らかに、美しい音楽を聴きながら、死んでいきたいですね。今の気分だと曲は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が良いです。

 他にも、戦争と平和をテーマにした「別の星の奇妙なたより」も良かったです。世界大戦中に平和主義を貫いたヘッセらしい、絶望と悲しみと呆れの入り混じったようなお話で、わかる~と思いながら読んでいました。取るに足らないことのように思えることで、人はよく争っているものです。最近だと自分は、性差別に関する話題なんかに、同じ気持ちを抱いています。まあ、これについてはあまり語らないこととしますが……。


 とりあえず今回は以上です。また気が向いたらやります。インプットは頑張ります。本を読まなさすぎなのでやばいです(映画の方が楽しいかもしれない…)。


 

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