第44話 きょうのわんこ ⑨

神戸に着いた。


早速、先輩に会いに行ったのだが……。


「オラオラオラオラ!!!!」


うわあ……、確実にパワーアップしてるぅ……。


先輩は、上半身全裸になり、両手に3mほどの長さの鉄骨を束ねた棍棒(?)を持ち、それを無茶苦茶に振り回して、数百体はいるゾンビの群れを蹴散らしていた……。


「な、あ、あ……?!お、おい、イタカ?!アレが大リーダーか?!いや、そもそも人間なのか?!」


「んん、まあ、先輩っすね。でもあの人、昔からイカれてたんで……」


「何だあれは?!あの、一本で数百キロくらいありそうな棍棒を二刀流で……?!!」


「あの人、500kgくらいのウェイトリフティングできるんで」


「世界記録超えてるだろ?!!」


「そっすよ」


ミラは、ドン引きどころか恐怖しているようだ。


まあ無理もない、私も大分驚いている。


何だあれは?強いとかそう言うレベルの話じゃないだろう?!


ま、まあ、うん。


良いとしよう。


先輩が、リーダーが強いと皆が助かるからな。




「おー、来たか、威貴。久しぶりだなあ」


「うっす!お久しぶりっす!」


ああ、でも……。


会えて嬉しい。


愛しい人よ。


「何だ?俺に会いたくて会いたくて震えてたのか?」


「先輩、茶化さないで聞いて欲しいんすけど、マジで愛してます。先輩と結婚してセックスして子供産みたいんで、追ってきました」


「あっそう」


「先輩って、自分のこと抱けます?」


「ヨユーっすわぁ……」


「じゃ、抱いてくださいっす」


「良いぞ、後でな。まず風呂入れ風呂」


よし。


一世一代の告白をサラッと流されたが、まあよし!


受け入れてもらえたので問題はないな!!!


「だっ、大リーダー!」


お、ミラが行ったぞ……?


「お前は?」


「ミラ・グラークだ!このコミュニティのリーダーの!」


「へえ、お前が……。ああ、Если вам неудобно говорить, вы можете говорить по-русски, хорошо?」


「ロ、ロシア語……?!す、すまない。ロシア系だがアメリカ人なんだ」


「So this way then? Japanese is a difficult language, so I'll adapt to what you're comfortable speaking.」


「……凄いな、お前は。あ、いや、日本語で良い。私も、もう英語を使う機会はないだろうから、慣れるためにもな」


「ほーん。で?どうしたんだ、要件は?」


「私は、お前の愛人になりたい」


「良いよ」


「えっ……、え?良い、のか?」


「そりゃ、そっちのリーダーがこっちの傘下になるんだから、リーダー同士が仲良くしないと話もまとまらねーだろ」


「それはまあ、そうだが……」


「お前がそれなりに使える人材だってことは、威貴からの定時報告で分かっているからな。受け入れることに問題はねえよ」


「そうか……」


「話は終わりか?それなら、仮設シャワールームでシャワーを浴びてこい」


「わ、分かった。助かる」


んー……。


あの人、女の子の告白を何だと思ってるんだろうか……。


割とマジで酷い男だな?




「はい、じゃあみんな集まってね。……俺が大リーダーの鬼堂龍弥だ。文句がある人はいつでも下剋上していいよ。あ、その前に一つパフォーマンスな」


うわあ、さっきの束ねた鉄骨の棍棒をパンチでへし折った……。


「あー、ありゃ無理だな。ゲザるべ」


「そっすねえ、バケモンだわ」


「マジで媚びた方がいいなこりゃ。性奴隷の件、謝った方がいいか……?」


ミラのコミュニティに属する男達は、青い顔をしながらそんな話をしていた。


一方で女達は……。


「あの人の子供産んだら、優遇間違いなしだよね!」


「使用人で良いからそばに置いてもらえないかな?」


「あんだけ強いリーダーなら、ミラさんに代わって任せても良いかな。守ってくれそうだし、死ななそうだし」


こちらも冷静。


むしろ、強い味方ができたことに対する喜びがあった。


「うちのコミュニティに入るんなら、掟を守れよー!一つ、許可ない殺しはダメ!二つ、盗みや故意の物損はダメ!三つ、コミュニティ内でのレイプはダメ!この三つな。後、非常時はサイレン鳴らしてメガホンで呼び出しするから、それは最優先で応じろ」


「えっと、あのー……」


「ん?どうした?」


「性奴隷とかってOKっすかね?」


ミラのコミュニティの男達だな。


「別に構わねえけど、産んだ子供はコミュニティ全体でちゃんと育てること。それと、性奴隷でもなんでも、コミュニティ内で廃人化!とかなるとめんどくせーから、ちゃんとメンタル面も気ぃ遣えな?食い物も服も、休みもちゃんとやれ」


「う、うっす!じゃあ、もうセックスすんな!とかは……?」


「そうは言ってねえよ。ただ、今後は同意がない性奴隷化とかはダメだから。ちゃんとこっちに同意とれや」


「はい!」


へえ、良いのか。


……まあそうだな。


性奴隷というか、「娼婦」として扱えってことだろうな。


奴隷と言うからイメージが悪いのであって、娼婦と思えばまあ……。


「よし!じゃあ今日は、仮設風呂と豪華な飯、酒と甘味も出すぞ!これから、二つのコミュニティが一つになる訳だし、ちゃんとお互いコミュニケーションを取っとけよ!喧嘩したら死なない程度に殴るからなー!」


「「「「はい!」」」」

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