第38話 頼れる仲間はみんな目が死んでる

四人の仲間が揃って良い感じ。


「んへへへ……、お兄さん♡」


頭の中どピンクの女魔術師。


「旦那ー!京都行くんなら写真撮ろ!学校がなくなって修学旅行行けなくなったから、思い出作り!」


アホな技術者女。


『ねーねー、ご主人様ー?おやつちょーだい!』


腹ペコ超能力者女。


「おおーっ!殿からたくさん刀を頂いたでござる!これで物の怪をばっさばっさと薙ぎ倒すでござるよぉー!」


イカれ侍女。


ちょうど良い感じのメンバーだ。


全員が全員、「強い男に守られる幸せ」を自覚しており、俺に深く感謝して、喜んでその美しい身体を開いてくれる。


そして真面目に働いて、行動を共にしてくれる……。


信頼できる仲間だな。


これだけの仲間がいれば、安心して他所のコミュニティにも突貫できるってもんよ。


そう、京都のコミュニティにな……。




京都。


伏見稲荷神社を中心に、様々な神社が居住地となっており、そこに集まって人々が暮らしている。


殆どの進化していないゾンビには、階段を登るような知能も身体能力もないため、高い位置にある神社などは、避難の際に有利だったんだろうな。


それに神社には大抵、庭園などの自然がある。そこで例の作物を育てているようだ。


進路的に避けて通ることはできないっぽいし、ちょっと接触しようと思う。


なあに、俺もずいぶん強くなった。


ライフル弾も二、三発までなら耐えられるようになったし、大丈夫大丈夫!


「止まれ!」


お、早速来たな。


ってか、移動は車かよ。


大型のバンで移動して、その辺から資材を集めている調達部隊って感じか?


真夏なのにブーツと長いジーンズ、長袖の冷感ウェアに作業用ヘルメットを被った男達に囲まれた。


警備員の制服や、ツナギの奴もいる。


手に持つ獲物は、廃材から作ったであろう槍。警官から奪ったのかなんなのか、拳銃を持っている奴も。


他にも、アーチェリー用の弓を構える奴もいる。


俺は車を降りて、対応することにした。


「デカい……?!」


「な、なんだこいつ!」


「凄い筋肉だ……!」


恐れ慄くこいつらに、俺は。


「伏見稲荷神社のコミュニティの連中だな?武器を下げろ」


と、威圧しながら登場。


だって、舐められる方が困るんだモン♡


今や、力こそ全ての世紀末なんだモン。力を持っていることを誇示しておかないと、舐められて余計なちょっかいを出されるんだモン♡


身長230cmを超える化け物を超えた化け物に凄まれて、神社コミュニティの調達部隊達はビビり散らした。


「ひっ、ひいっ!」


「神社まで案内しろ。コミュニティと取引をしたい」


そう……、俺には今、計画があるのだ。


その計画の為に、大量の人材と車が必要で、それらを揃える為にも他のコミュニティから引き抜きをしなくてはならない……!


「と、取引、ですか?」


「ああ、物資を渡す代わりに、人と車が欲しい」


「……それは、どういう?」


「そのままの意味だ。共に、俺の故郷に移住する人員を募集している。人員を運ぶための車もだ」


「……人員は個人の意思によるが、車に余裕なんてないぞ!」


「神社の車は?観光バスとかあるんじゃないのか?」


「もう全部、バッテリーが上がっている!」


「なら、自分で直すからくれよ。その辺にある車は、大抵はゾンビ共に破壊されているからな」


「……あの、自分ではちょっと判断できませんので、上の方に会っていただけますか?」


「上?」


「はい、神社のリーダーの、『永見悠河(ながみゆうが)』さんです」




神社に案内された。


駐車場の門は、廃材で強化され、城壁のようになっていた。


とても神社とは思えない物々しさだ。


その門に車をくぐらせて降りると、一人の若い男がこちらへ向かってきているのを目にした。


短くまとめられた金髪の、ハーフらしき男だ。


目尻が少し垂れた、柔らかな顔つきにも関わらず、強い表情をした男だった。


「よお、アンタかい?ウチと取引がしてえってのは」


「お前がリーダーの永見だな?俺は鬼堂だ。取引がしたい」


「取引、ねえ……?」


俺のガレージカーをチラ見し、俺本体もチラ見。


「……取引ってのは、持ってない奴と持ってない奴がするもんだろ?アンタみたいに満ち足りている奴が、ウチみたいな貧乏世帯と何するって?」


と、鼻で笑う永見。


まあ、気持ちは分かる。


毎日風呂に入ってる俺は、このコミュニティの奴らより清潔だもんな。


贅沢してそうな俺が何を欲しがるんだ?と言ってる訳だ。


「人と車、あと銃が欲しい」


「人買いか?」


ジロリと睨まれる。


リーダーとして、その辺の警戒はしている、か。


「売ってくれるんなら買うが?」


「……無理矢理誘拐するつもりはないのか?そもそもお前、どこの誰だ?」


「出身は北海道、医者と自衛官の職歴がある無職だ。これから船を探して、北海道に戻り、山奥にある地元の村で生活する」


「なるほどな。北海道なら人口も多くないし、本州から離れているから、ゾンビ共も少ないってことか。その為の民を集めているってところか?」


「そうだ」


すると永見は、少し考え込んでから。


「勧誘なら好きにすりゃあ良い。だが、ここにある車と銃が欲しいなら、出すもんを出してもらうぜ」


と、宣言してきた。


さあ、シコシコ作り溜めしておいた缶詰の使い所だ……。

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