第29話 ビリビリ高校生

昼、食事中。


俺は冬芽に、今後集めるべき仲間候補がどこにいるかを聞いていた。


すると、冬芽は、窓の方を指差す……。


そこに。


よだれをダラダラ垂らしながら、トレーラーハウスの窓にひっついているのは、金髪の美女。


年齢は十代半ばほど、サラサラで癖のないストレートなロングヘアが、陽光を受けて輝いている。


瞳は、くりくりと大きめの碧眼。顔の作りも北欧風。


こんな崩壊した世界でもある程度体型を維持できてるんなら、まあ、なんかしているんだろうな。


だが、元から痩せ型なのであろう身体は更に細くなっているし、肌の荒れ具合などから、栄養バランスが崩れていることは分かった。


ぐぅ〜、とデカい腹の音が、車内にいる俺にまで聞こえる……。


「あ……、あの子です。三重の……」


どうやらこの子が、冬芽が言っていた「仲間候補」の一人らしい。




「もっぐ、もぐ、もぐ……んんん〜っ!Lecker(美味しい)!」


作り置きのベーコンやピクルス、ざっと適当に作ったピラフ、そしてインスタントのスープを飲みながら、ドイツ語を喋るこの子。


「彼女の名前は、『エレクトラ・ヘイスター』……。北欧系のドイツ人で、日本旅行中にパンデミックに巻き込まれた……『超能力者』です」


へえ、超能力者。


つまりは、サイキッカーか。


なんかこの世界には稀によくいるらしいな。後輩から昔聞いた気がするわ。


どれ、ドイツ語で話しかけてみるか。


『もしもし、お嬢さん?』


『アンタ、中々使えるわね!特別に、私の下僕にしてあげるわ!ありがたく思いなさい!』


あっ、なるほどねえ。


ちょっと分からせるか。




『アンタ何を……、ちょっ、やめっ、んんっ!ホぎょっ?!お"お"おっ♡お"んお"んお"んん、いっッ……ぐぎゅ!おへあ〜……?お"お"んっ♡♡♡』


『もうダメ!んお"お"お"お"♡♡♡おほおおおおっ♡♡♡』


『ご主人しゃまあ♡♡♡イグイグイグうっ♡♡♡あああ〜〜〜っ♡♡♡アクメくる♡♡♡でっかいのくる♡♡♡んほおおおおっ♡♡♡♡♡』




分からせた。


『ご、ご主人様……じゃなくてアンタねえ!こんなことして、どうなるか分かってんの?!』


『どうなるんだ?』


『わ、私はサイキッカーなのよ?!ご主っ……アンタなんて一瞬で』


『この距離なら、俺のパンチがお前の頭蓋を砕く方が早いと思うが……、試してみるか?』


『う、そ、それは……』


『まあ安心しろよ、裏切らないで従うなら、今日みたいに飯は食わせるし、シャワーも浴びられるぜ?』


『え、それ、ホント?!』


『本当だ。俺の部下になれ、お前にはその価値がある』


『……ふふーん!分かってるじゃない、ご主人いやアンタ!そうよ、私には価値があるの!私は凄い子なの!』


『ああ、凄い子だ。だから、俺のモノにしたいと思っている』


『んにゃ?!……うう、あんな、無理矢理……!』


『舐めた口を利くようだからな、教え込んでやったんだよ。お前は凄いが、俺の方がもっと凄い。それを忘れるな』


『むっ……!た、確かにそれは認めるけど……、無理矢理女の子に、あ、あんなことをする人は許せないわ!』


『殴るよりは良いだろう?』


『レイプは魂の殺人よ!』


『……本当にそうか?』


『はあ?』


『今まで、パンデミックで滅んだこの国で、二月程度は生き延びてきたお前なら、分かるだろ?レイプ程度で済むのが、どれほど幸せかとな』


『それは……、そう、だけど』


『俺はどの道お前を抱くつもりだったしな。それに、本当に嫌なら超能力で攻撃すりゃ良かったろ?』


『だ、だって、ちゃんとした食べ物をくれて、シャワーも浴びさせてもらって、女二人を囲えるくらいの財産がある男だもん。私だって、その……』


『はっ、お前も最初から愛人になるつもりだった訳だ』


『うっ、そ、そうよ!だって仕方ないじゃない!もうこんな暮らし嫌なんだもん!美味しいもの食べたい!シャワーも三日に一度は浴びたい!まともなベッドで寝たいし、強くて優しい男の人に守ってもらいたい!何かおかしい?!』


『おかしくねーよ、人間として当然の欲求だ。だがその欲求は俺にもある。女を侍らせて、夜の見張り役がもう何人かいると助かるなーって、俺だって思ってる。何かおかしいか?』


『……おかしくないわ。じゃあ、仲間?』


『愛人を兼ねるがな』


『それで良いわ。その代わり!ちゃんと守ってよね!私も、みんなを守るから!』


『契約成立だな』




契約すれば、あとは簡単な話だ。


「エレクトラ、デす。ヨロシク」


冬芽と透、二人に挨拶させて、意思疎通させる。


冬芽はドイツ語の読み書きはできるが発音があまりにもクソ過ぎて話が通じない。


透はもちろん、ドイツ語なんて全く分からない。


なので、エレクトラには日本語を少しずつ教えることとする。郷に入っては、ってなもんだ。


「トーガ、トール」


「よろしくお願いします……」「よろしくー!」


エレクトラの服は、フリーサイズのものをその辺のドラッグストアから拾ってくるから良いとして、役割を決めねばなるまい。


『エレクトラ、お前は戦えるか?』


『少しはね。でも、ゾンビには私の超能力が効きにくいのよ』


『そういや、どんな力が?』


パリッと、指先に雷光。


『名前の通り、エレクトラ(電気)よ』

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