第23話 オラオラ系男子(スタープラチナ)

「うおー、すげー……」


おっと、どうやら、例の仲間候補が来たようだ。


灘透、だったか。


冬芽の異母姉妹だそうだな。


外面は、冬芽とは異なり明るく能天気なように振る舞っているが、内面は計算高いような強かさを見せる子らしい。


バカっぽく見せかけているのも、本家の魔導師達のゴタゴタに巻き込まれないようにする為、あえて無能を装っているのだとか?


俺を見て透は……。


「えあっ……えええ……?」


……流石に、バカっぽく振る舞うことはできなかったようだな。


まあ俺、身長230cmに体重180kgで体脂肪率10%くらいの化け物だからな。


ゾンビ世界で出会うと「おっ、タイラントかな?」と言われても仕方ないレベルのゴリラ体格だ。


それに対して舐めた態度は取れないだろう。


余程とち狂ってなければ、な。


「あ、えと……、冬芽姉様に言われて来ました。灘透です……」


普通にガチビビリだな、なんか申し訳ない。


「楽にしな、お嬢ちゃん」


「は、はい」


「まずは面接だ、話を聞こう」




「……という訳で、今まではそんな感じで生きてきました」


なるほど。


要約すると、こうだ。


まず、透には機械工学の技術があった。


重いものを運ぶことも多いから、体格も冬芽より一回り大きく、筋力も強い。


それを利用して、パンデミック時はまず、自身の愛車であるスクーターに可能な限りの物資を詰め込んで逃走。


DIYの能力で鉄パイプにナイフを取り付けた槍を作りゾンビを始末しつつ、神社などの手水舎の水などを使って生き残って来たらしい。


そのバイタリティは、世界崩壊からたった一ヶ月程度で死ぬ寸前まで追い詰められていた冬芽とは大違いだな。


だがしかし、世界の崩壊からもう二ヶ月。


コンビニなどのめぼしいところにはもう殆ど何も残っていないし、周りの人々もある程度徒党を組み始めたらしく、そろそろ限界だったとのこと。


「ふむ、大体分かった。それで……、お前は俺に従うつもりがあるのか?」


直球質問をぶん投げる。


何かこう……、ごちゃごちゃ聞いても無駄だしな。


残念ながら俺には交渉系の技能はないのだ。


いつだって交渉(物理)や交渉(筋肉)なんだよなあ。


「え?いや……、あの、従わない理由がないんですが?」


ふむ?


「魔導師の中でも人格者で、アタシと仲も良かった冬芽姉様が、『どんなものを差し出してでも従え』って言うんですよ?そりゃ、従いますよ」


「そんなに冬芽のことを慕ってるのか?」


「や、まあ……、そっち(魔導師)側の人だと一番信頼できるかなーって」


うーん?


「んにゃ、別に本家の熱心な信奉者です!とかじゃないですよ?けど、世界がこんなになって、親とか友達とかも死んで……、唯一の知り合いが『絶対おすすめ』ってんですから。自分にももう余裕ないですし、一か八か行ってみよう!ってはなりませんかね?」


「うーん、正論!」


そりゃそうか。


普通ならそこまで信用しないけど、まともな感性を持つであろうと分かっている知り合いが「聞こえるか?こちらへ逃げ込め!」とか言って来たら、飛びついちゃうよね?だってピンチなんだもん!って話だろ?


そりゃそう、そうなるわな。


「後はその……、これ、言って良いんすかね?」


「何でも言え」


「冬芽姉様の話からの推測と、今見た感じの話なんですけど……、旦那って、何かしらの能力者ですよね?サイキッカーなのか、魔導師なのか、変異体なのか、サイボーグなのか……、それは分かんないですけど」


「何でそう思う?」


「いや……、こんな世界で、水も電力も燃料も食料も無限湧きって、どう考えてもおかしくないすか?」


お気づきになりましたか。


「ブローニング機関銃なんて民間人じゃ手に入らないし、そもそも使い方も分かんねーですよ。レイジングブルなんて、弾薬手に入んないでしょ?日本の銃じゃないし。そもそもこんなでかい車、燃費悪いしパワー欲しいから軽油っすよね?軽油なんて手に入りますか今?毎日温水シャワーもあり得ねっす、何リッター持ち歩いてんですか貴重な水を!」


うーん、正論!


機械工学齧ってりゃ流石に分かるよなあ!


「能力の詮索はしないですけどね、絶対これ従うべきでしょ?!アタシ、そんなに計算高いとかじゃないけど、流石にそれくらいは分かりますよ?!そら、冬芽姉様も身体捧げるわ!アタシだって、旦那になら抱かれても良いもん!!!」


ふむ、ふむ……。


うん、良いな。


頭もいい、覚悟もある。


裏切る心配もないだろう。


「んじゃ、採用。まずはシャワー浴びて来な」




「っはぁ〜〜〜!!!最っ高!!!」


シャワーを浴び、浴槽で風呂にも入った透は、髪をバスタオルでガシガシ拭きながら出て来た。


無論、全裸である。


……ふむ、それなりに飲食はしていたらしく、出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいるな。


腹筋も軽く割れて腕も太めだ。


そう言えば自衛官時代には、クソデカマッチョ犬系(物理)後輩がいたが、あいつ今どうしてんだろうな?


ゾンビ騒ぎが起きると、携帯回線なんて速攻で駄目になり、どことも連絡が取れなくなっちまったから知り合いの動向が分からねえ。


……まあ、あいつは変異もしてるし、そう簡単には死なねえだろ。


出会ったら拾ってやりゃ良いな。


それはさておき透ちゃんよ。


健康的でフレッシュなデカパイ!うーん、良いねえ……。


冬芽みたいな不健康陰キャ引きこもりポッチャリもエロいが、こちらも中々唆るもんだわ。


「……ってか、この匂い!もしかして!」


「飯だぞー、今日はカレーだ」


「いぃっやっっったあああっ!!!!マジでありがとうございます!!!!」


そして餌やり。


透はヤバいくらい喜んでいる。


……どうやら、まともな食事は久々らしい。


普段はどこぞの企業の非常用保存食とか、その辺の店から掻っ払って来た缶詰などで食い繋いでいたんだとか。


虫食ってたどこぞの陰キャとは違って、まともに飯食ってたんだな。


「いや、アタシはドブネズミとか食ってましたよ。死ぬほど不味かったんすけどね」


……捕まえたネズミを焼いて食ったらしい。


そりゃ可哀想に。


「だが、これからはまともな飯を食わせてやるぞ」


「はぁ〜……!最高ですよ!愛してます!マジな話、抱かれても全然オッケーっすわ!」


「えー?マジ?じゃあ今晩どう?」


「あ、はい!えっと、その、あんま経験ないんですけど大丈夫です?」


「良いよ良いよ、前に男が居ようとも何でも。俺の方が男として上だから、前の記憶とかすぐなくなるもんよ」


「うわっ!結構グイグイ来る系なんすね旦那って!まーでも、そのガタイと顔だと、グイグイ来る系の方がカッケーっすわ」


へー、それなりに遊んでる感じなんだ。


まあ、高校生にもなって処女の顔がいい女とか、そっちの方が怖えもんな。なんか地雷とかありそうで。


「グイグイ来る系の男、まあ好きなんすけど、シャバいチビとかがオラついてるとクソムカつくんすよねえ。その点、旦那は割とガチめにイカついんで良い感じですよ!」


まあそれには同意するよ。

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