第20話 アイドル(お仲間)に、興味はありませんか?

朝は、豚バラブロックをダンボールを使って燻製にしておいたベーコンと、目玉焼き。


残念ながらトーストは用意できなかったので、ご飯。


それと、プランターのプチトマト。


これが最近の朝飯だな。


「ふああ……!美味しい、美味しい……!」


目を輝かせて、山盛りご飯を朝からお代わりする冬芽を眺めつつ、俺は……。


「布とミシンも手に入れたことだし、今度は北に向かおうと思う」


と、冬芽に相談を持ちかけた。


「私は、お兄さんが許してくれるなら、死ぬまでご一緒するつもりですよ」


「そうかい。だが、リアルな話、そろそろセーフエリアを見つけたい」


「セーフエリア……安全地帯ということですか?」


「ああ、そうだ。どこか腰を落ち着ける場所が欲しくないか?」


「確かに、そうですね。車の中は快適ですけど、農地や家畜を育てる場所なんかも必要だと思います」


「おっ、良いな。流石に分かってるか。今の世の中、滅んだこの世界の保存食を漁ってるだけじゃ先細りする一方だからな。どこかに根を下ろして、食い物を生産しなきゃならない」


「はい、そうです。いくら、お兄さんの力があったとしても、食べ物を自弁できるに越したことはありませんからね」


そう言う訳だな。


「だから俺は、佐渡島辺りを目指そうかと思ってな。あそこは島だから、ワンチャン、ゾンビがまだ入り込んでないかもしれん」


「え……、あ、はい」


「言いたいことがあるなら言っても良いんだぞ?」


「い、いえっ!私が意見なんて……」


あらかわいい。


徹底的に下手に出るんだなあ。


慎ましい女の子は好きだぞ。


慎ましくない女の子も好きだが。


結論!顔が良ければなんでもヨシ!


「良い、言ってくれ」


「で、ではその……、みんな、同じようなことを考えているのでは……?」


うん……、まあ、そうなんだよね。


まともな頭をしていれば、「そうだ!ゾンビがいない離島とかに逃げよう!」と思いつくのは当たり前のことだ。


「だが他に思い当たるところもないしなあ」


「えっと、お兄さんのご実家とかは?確か北海道でしたよね?」


「ああ、そうだな。実家に帰ると言う手もある。あそこは僻地だからゾンビも来なさそうだしな」


「そもそも、船は?」


「適当にクルーザーでも拾えば良いんじゃないか?」


「車はどうするんですか?」


「置いてくかなあ」


「も、もったいないですよ?!!」


んー……。


「じゃあ、この車を乗せられるレベルの大きな船を探す、と?けど、そんなレベルとなると客船だぞ。横浜みたいな人口密集地の港にしかないんじゃねーの?」


「それなんですが……」


おっと?


冬芽は、コンビニから拾ってきたらしい雑誌を取り出してきた。


ええと何々……?


豪華客船日本一周ツアー、神戸からスタート!か。


ふむ、神戸。


「兵庫県、か」


「はい。寄ってみる価値はあるかと」


なるほどなあ……。


「それに、道中で自給自足をしているコミュニティなどもあるのではないでしょうか?そこと物資を交換したり、物資の代わりにしばらく間借りすることができれば、事実上の安全地帯になるのでは?」


「確かにそうだが、騙されて闇討ちなんてこともあるぞ?」


「それは……、そうですけど、私もお兄さんにお借りした古の魔導書でかなり強化されましたし、ただの人間が相手ならそうそう負けませんよ。そしてもう一つ、重要な点がありまして……」


「ふむ?」


「仲間を、増やしませんか?」


まあ、やっぱりそこに行き着くよなあ……。


二人じゃやっぱりきつい。


「良いのか?二人きりの旅を終わらせてしまって」


俺は少し茶化してみるが……。


「ふふふ、少し惜しい気がしますけれど、やっぱり安全には代えられませんから」


と、冬芽は微笑む。


正妻の余裕だな。正妻にした覚えはないが。


「それで実は、使い魔を各地に派遣して、良さそうな仲間候補を探しておいたんですよ。良ければ、こちらの資料をご覧ください」


「ほう、仕事できるムーブ」


頭を撫でてやる。


「えへへ……。で、では、まずこちらから。灘透(なだとおる)という、私と同い年の子なのですが……」


魔法で転写したらしい、顔写真を渡される。


茶髪の癖毛をポニーテールにした、活発な印象の女の子だな。青い作業服を着て、スクーターに乗って移動しているようだ。


だが……、顔つきというか何というか、雰囲気が冬芽と似ている?


「……あ、その、お気付きですか?」


「うん。ちょっぴりお前に似てねーか?」


「じ、実はこの子……、私の妹なんです」


「妹?」


苗字が違うのに?しかも、同い年なんだろ?


「はい、腹違いの妹でして……。私と違って、魔法の存在は知っているけれど、魔法は使えない、表社会で研究資金を稼ぐための家系の子なんです」


「分家の分家、みたいな?」


「そんな感じですね。……ですからこの子は、私と違って機械弄りができるみたいです」


うむ……、採用だな。


「採用!」


「はい!では、使い魔を通して、ここに呼び寄せますね!恐らく、西へ向かう道中で会えるはずです!」


「道中だな。OK、じゃあ早速移動しようか」

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