第7話 クズの旅
秩父から離れた。
うーん、今度はもっと北に行こうかな。
そうだ、佐渡島とか津島とかはどうなってんだろ?
離島だし、ゾンビのいない生存圏になってるんじゃないかな?
ちょっと気になるので、偵察に出ようか。
偵察に行こうか、などと軽い気持ちで行ったが、移動が死ぬほどめんどくせぇ……。
GPSだの地図アプリだのはとっくに繋がらんからな、地図と睨めっこしなきゃならない。
その上で、ゾンビが多い道は避けたいとか、トレーラーが通れるような広い道でとか、色々と条件をつけると、中々うまくいかん。
本来なら二、三時間で行ける場所にも、数日の時間がかかった。
今も、通れない道から障害物を退けている……。
「ぬあー……、どこのボケだ?電柱にストライクして、電柱倒したバカ運転手は!」
倒れた電柱を、掴んで持ち上げる。
ムキムキなので俺にはできるが、一般人なら複数人でやるとか、道具を駆使しなきゃならないだろう。
「ぬおおあ!」
電柱を除けて……、で、次は車だ。
パンチでガラスを粉砕し、中のサイドブレーキを解除する。
後部座席にゾンビがいたが、ごく普通にレイジングブルを車外からぶっ放して排除した。
やっぱ.50口径はスゲェわ。ゾンビの頭が抉れて吹っ飛んだもんな。
そして、車を外部から……、押す!
「おおりゃあ!」
押して、押して、近くのコンビニに突っ込ませる。
コンビニの中?略奪されてとっくに何もないよ。
「よしっ!こんなもんだな!」
俺が一仕事を終えて笑顔になり、車に乗り込むと……。
何かが軋むような音。
振り返る。
「うおおおおおあ?!!!」
コンビニが崩れてきた!!!
……何とか避けたが、車が瓦礫に巻き込まれてしまった。
「……ああああああ!!!!めんどくせーーー!!!!」
この後、瓦礫の撤去に二日かかった……。
そんな感じで、文明崩壊後の世界での移動は、中々難しいものだった……。
そんなこんなで、やっと群馬。
ぐるぐる回って、今は前橋の手前くらいにいる。
「んー……、困ったな」
どうする?
前橋か……。
都市部には近づきたくねーのよなあ。
やっぱり、一人なのもネックだ。
夜間警戒もできんし。
女はもちろんだが、そもそも仲間が欲しいな……。
……っと?
車だ。
こんなご時世だ、まともな奴じゃないだろうな。
だってほら、めちゃくちゃ幅寄せしてきてるもん。
しゃーない、停車してやるか。
俺は車から降りて、言った。
「何の用だ?」
と。
警戒心はあるが、表面に出さないようにしている。
俺は見た目がデカくてイカついからな。
あまり、威圧的にならないように気をつけているんだ。
さて、何の用事かね?
物資の取引なら、前向きに考えるんだが。
「へへへ……、良い車乗ってんじゃねえか。車を寄越」
俺は発砲した。
「奪うつもりなら、会話なんかしちゃダメだろ?」
そう呟きつつ、ホルスターにレイジングブルを仕舞う。
人を殺す葛藤?アホ言わんでくれ。
散々、元人間であるゾンビをやってきたんだ。
今更、人間を壊すくらい何とも思わん。
《……tips!体質:サイコパスにより、罪悪感を無効化》
《メンタル減少なし》
……いや?
何かこう……、やっぱりほら……、傷ついちゃったな?傷ついたわ、うん。
メンタルが痛いよやっぱり。人殺しは良くないことだ。
それはそれとして、道具を漁っていくか。
頭が吹っ飛んだ死骸を蹴り飛ばしてひっくり返し、車のキーを懐から奪う。
トランクを開けると……。
おっ、こいつ酒たくさん持ってんじゃん。
ついでに麻薬も。
まあアレだよな、俺みたいな見るからに強そうな奴に絡んでくるってことは、とっくの昔に頭がおかしくなってたんだろうな。殺してやったのは慈悲とも言えるわ。
酒のアイテムIDはまだあまり見つけてないし、ありがたくもらっていくぞ。麻薬はMDMAとかだが、クラフト的観点から見ると「化学物質」や「危険薬物」などの素材として使えるから貰っておく。
結局、銃も持ってないようなのは、こちらの脅威にはならねんだわな。
略奪者からは逆略奪できるので、非常にお得。
自走式宝箱たすかる。
そんなことを日記に書き留めてから、俺は日記帳を閉じた。今日の活動は終わりだからな。
もちろん、今日の分のアイテムIDを、エクセルの表に記載することも忘れない。
エクセルのシートが数十枚あってな。
これに、「試しに記入したアイテムID」と「そのアイテムIDで出てきたアイテム」を記載しているんだよ。
今までの人生で、どうにか十万項目程度は埋められたが、四十億項目は流石に埋められんだろうなあ……。
とは言え、法則性は徐々に掴めてきたぞ。
例えば……、先頭1000番代は食料であることが多い!
「1000C801……カニカマ。1000C802……ドッグフード?クソが。1000C803……謎の油?臭いなこれなんだ?1000C804……卵!やったあああ!!!卵だぁぁぁ!!!!」
そして今日は当たりが出たのでめちゃ喜んでいた。
「カニカマも出ちゃったし、明日は天津飯でも作るか!ひゃっほー!卵助かるーーー!!!」
こんな感じで俺は、毎晩アイテムIDを適当に入力してアイテムを出す無限ガチャ苦行を毎晩やっていた。
一日百個を最低でも出すように、と。
「よーし!今日は夜更かしして、もう百個アイテムを出してみるか!なんか今日は行けそうな気がするぞ!」
ちなみにこの後、名前を聞いたことがないような大量の南国フルーツが出て途方に暮れた。
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