鮮血は街灯と共に~the other side of this country~
モリイ
第1話
「敵国にて遺伝子研究組織壊滅成功」
「OK」
俺は自宅でのんびりとホラー映画を鑑賞しながら応答する。
「早く逃げろ、主人公!!後ろに心霊現象が…後ろを振り返れ!!」
思わず、心霊現象が起こるシーンで騒いでしまった。
「どうしました?大丈夫ですか?」
戦時中に映画など見るなと言われそうだが、これは俺が生きる為に必須な条件だ。
「これで我々エラス王国の国民が刃物で刺される事件は解決ですかね……!?」
その瞬間、電話越しに悲鳴が鳴り響いた。
「刃物を持った犯人が『殺し屋司令部』で暴れています、早く逃げてくださ……」
「だまれ!!早くお前らの遺伝子のデータを差し出せ」
犯人と思われる人物の怒鳴り声。
俺達、エラス国民は、特殊な遺伝子を所有しているらしい。
その、特殊な遺伝子の研究のために、敵国は我々に『戦争』を仕掛けるのだ。
殺し屋は、国の為に戦う存在となっていた。
_______
それから一年、今は敵国との戦争は1ヶ月の停戦期間である。
ポケットの中にある電話の着信音が鳴った。
「あ、もしもし…今から任務を伝えるね」
どうやらこっち側の人間のようだ。
「あ、すみません。殺し屋番号『十五』の市一です」
そう、先程言った“こっち側の人間”とは殺し屋のことを指している
「今から私が言う事しっかりと覚えていてね」
彼女の微笑みが電話越しに伝わる。
「えー、停戦中も仕事ですか」
彼女は俺が今からこなす任務について話し終わった。
簡単にまとめると、どうやら社交パーティーに向かっている途中の漆黒のドレスを纏った令嬢を暗殺すればいいらしい。
今までにこなしてきた任務を考えるとこのような単純な暗殺は朝飯前である。
少しすると、再び携帯電話から声がした。
「それと、隠密行動は当たり前。絶対に正面玄関からは入らないでよ…ね」
こっちの人間のほとんどが誰にも見つからないように正面玄関などからは侵入しないが、正面玄関でなくてもまず、ドアから建物に侵入することを避けなければいけない。
俺はすぐに社交パーティー会場へと足を運んだ。
_____
会場は世界最上級と称される此処、『白夜邸グランドホテル』である。
庭園にはバラが爛漫と咲き乱れていた。
客室に、書院造りという室町時代の建築様式を活用したことが世界に認められたのだと、どこかの新聞の記事で読んだことがある。
今、俺はホテルの頂上の縁に立ち、ターゲット攻撃の準備をしている。
俺の専門分野はスナイパーによる遠距離攻撃。
ホテルの頂上から地上の敵を暗殺するのにはうってつけである。
あと数分もすれば、俺の視線の先『回廊』にターゲットが現れるだろう。
上体を起こし、両肘を支え、銃を身体に引きつけるようにして構える。
射撃する準備は整った。
その時、辺りに爆音の銃声が鳴り響いた。
「ははは、任務完了ですね。余裕でした」
誰だ?
今の声からして、女性だということしか想像がつかない。
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