老夫婦のお昼

「お昼はどうしましょうね」

「久しぶりに大将の顔が見たいな」


 玉暖簾をかき分けながら格子戸を引く夫。

 カラカラカラ。チリンチリン。

 年季の入った戸車の音と来客を知らせる鈴の音が混ざる。


「いらっしゃい」


 店内からかけられる声に、よっ。と左手を上げる夫は、少し背筋を伸ばしていた。

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