第16話 イチモツ

「どうして、お前がココにいるんだ?」

 隣の席にはダイヤがいた。

 ダイヤ、というのは登校の時に決闘した建築の魔女である。

 彼女の髪は緑色で、少しウェーブがかかっていた。タヌキ顔の可愛い系の女の子である。

 


「どうしてって、それは……」

 と絶望するような目で彼女が俺を見る。

「決闘の際に、誰かさんが建物を消して卑猥な物を露出した事で、あらぬ噂が私のクラスで持ちきりで……それに学生書を持っている人間に許可を貰わないと魔法も出せなくなったせいで、授業もまともにできなくなったからよ。だからAクラスからFクラスに降格して来たのよ」

 ドン、とダイヤは机に頭を打ち付けた。


「でも……天才魔女姉妹の姉だよな? 学年が違うんじゃねぇ?」


「双子なのよ」


「顔、そんなに似てないじゃん」


「二卵性」と彼女は呟いた。


 そして彼女は「はぁ」と大きな溜息も漏らした。

「……死にたい」


「ドンマイ」

 とアブーが建築の魔女の肩を叩く。


「うっせー」

 とダイヤが言う。


「でもヘンゼルの秘密がわかってよかったよ」とアブーが言い出す。


「秘密?」

 と俺は首を傾げた。


「いつもズボンの下に棒を持ち歩いていると思っていたら、アレは体にくっ付いているモノだったんだね」

 とアブーが言い出す。


「うわぁーーー」

 と俺は叫んだ。


「変な形状だったね」

 とアブーが、スノーホワイトに言う。

 彼女には悪気が感じられない。

 コイツ等にも、俺のロケットが見られていたんだ。


 スノーホワイトは顔を真っ赤にして、手をモジモジしていた。

 スノーホワイトちゃんにも見られていたのか。

 俺こそ死にたい。


「やめてくれ。アブー」

 と俺が言う。


「えっ、なんで? いいじゃん」

 とアブーが言う。


「よくねぇーよ」


「アナタ、アレが何をするモノか知ってるの?」

 と建築の魔女が尋ねた。


「えっ、何をするモノなの?」

 とアブーが首を傾げた。


「あれ? 獣人の女の子と69してるんじゃないの?」

 と建築の魔女が、机に額をつけたまま俺に尋ねた。


「69ってなんだよ?」

 と俺が尋ねる。


「アナタ、そんな卑猥な事しか考えていなくて、69も知らないの?」

 と建築の魔女が尋ねた。


 前世では中学までしか生きていなかった。知識も浅い。今世も、まだ16歳である。知らない事も多い。


「そんなの知るわけねぇーだろう」

 と俺が言う。


 はぁ、とダイヤはため息をついて、顔を上げて俺の耳元に内緒話をするように口を近づけた。彼女の甘い匂いがした。


「アソコの舐め合い」

 と建築の魔女が言った。


 ア、ア、ア、ソコの、舐め合い?

 

 顔が熱くなり、体が火照った。

 アソコを見られて恥ずかしいという感情と、あのまま試練が進んでいれば69をやっていたかもしれないという妄想と、アブーが無知でバカなせいで俺のイチモツを変な形状とイジっていることへの羞恥心で、感情がグチャグチャである。

 これが穴があったら入りたい、という気持ちなんだろう。

 その気持ちすらも、ちょっとエッチである。


 なぜか建築の魔女も、顔を真っ赤にしていた。

 コイツ、俺のイチモツを見ただけで気絶していたのだ。

 本当は純粋な子なんだろう。

 

「ねぇ、ねぇ、あの変な形状の棒は、何をするためのモノなの?」

 とアブーが尋ねている。


「私、貝になりたいです」

 と俺は呟いて、机に顔を伏せた。


「ヘンゼル大先生に聞いてください」とダイヤが言う。


「ヘンゼル、あの棒は何をする棒なの?」

 とアブーが言って俺の肩を揺すった。


 俺はアブーを睨む。

 無知は罪である、と俺は思った。

 

 俺は恥ずかしさを飲み込むように息を吸い込み、イチモツについて説明した。


「あれはイチモツと言われる魔法のステッキである。世界イチモツ協会の会員はおそよ人間族の半分と言われている。イチモツは1人で楽しむのも良し、2人で楽しむのも良し。3人でも4人でも楽しむのも可能である。家の中でも楽しめて、時には外で楽しむ事も出来る。カタチを変えてどこへでも持ち運べて、いつでもどこでも楽しむ事ができる。そんな優れたモノである」

 イチモツの説明をしていると前世で楽しんだゲーム機を思い出す。


「私もイチモツほしい」

 とアブーが言い出す。

 まるで子どもがオモチャを欲しがるような言い方だった。

「世界イチモツ協会の会員にならないとイチモツって買えないの?」


「アブーさんは、もう世界イチモツ協会の会員にもなれないし、イチモツを買う事もできねぇーんだ」

 と俺が言う。


 楳図かずおみたいな絵のタッチでアブーが絶望する。


「もう売り切れちゃってるのか?」

 とアブーが尋ねた。


「そうだ」と俺が言う。「次の新作が出るまで待ってろ」


「いつ発売するの?」

 とアブーが尋ねた。


「現在、開発中だ」と俺が言う。


「楽しみだね」とアブーが言った。



 休み時間が終わって、ミスター立会人の担任の先生が教室に入って来た。

「次の授業は性に関しての授業である。女生徒は別の教室に行くように。女性の先生が性について教えてくれる」










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