(三)-2
そこの家には「藤阪」という表札が飾られていた。
車を停めて、降りるわけでもなく、実奈美はスマホでなにやら入力した。すると、その家の玄関が急に開き、一人の若い男子が出てきた。
「すみません、ここまで来て頂いて」
そう言いながら運転席を覗き込んできたのは、翔太だった。大きな鞄を抱えていた。
翔太はすぐにその鞄をハッチバックの車のトランクルームに入れると、運転席側から後部座席に乗り込んだ。
「では改めて、出発するわよ」
実奈美はそう言いながら車を発進させた。
(続く)
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