(一)-5
「よう」
拓弥はそう挨拶した。自分でもいつも以上に気分が高揚しているのがわかるほど、うわずった声だった。
しかし翔太の返事は、「よう」と小さくオウム返しにしてくるだけだった。
「ごめん。会えなくて。いろいろと忙しくってさ。バイトにも行けなかったし」
彼は小声でそう言った。
拓弥は翔太が何かを言おうとしているのに気づいた。しかしそれがどのような内容のことなのかは、このときさっぱりわからなかった。
「メシでも行こうぜ」
拓弥はそう言って翔太にほほえみかけた。言い寄ってくる女性にも見せたことはない笑顔で、だ。翔太に会えたことで、気持ちがはしゃぐのを拓弥は抑えきれなかった。
(続く)
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