第3話 サディストの本性

 仁科と海乱鬼はサディストだった。もちろん、本気で痛めつけるのはNG。仁科の方は専用の絹のロープや手錠を用意していて、肌に跡が残らないよう気を使っているのだが、海乱鬼は違った。リビングで私に襲い掛かり、激しく腰を振っていた。


「オラオラ! リリィちゃん感じてる? 俺の大砲の威力、半端ないでしょ? 美味しい? 味わってる?」


 んな訳ない。

 アレがデカけりゃいいってもんじゃないんだよ。痛いだけだ。


 こいつはデカすぎて女を満足させた経験に乏しいようだ。熟女なら大喜びするかもしれないが、小柄なロリ系は無理。しかも痛がって泣いてる姿に欲情するのだから始末が悪い。


 コイツは自分の欲情を満たすために大枚を払う。年に数回、海外へと飛んでいるのは正真正銘の未成年者を抱く為だ。国内でもレイプまがいの乱交パーティを開催していたりもする。問題だらけの男だが、その資金源の方が大問題だろう。


 ホスト狂いの女を風俗で働かせるのはまだましな方で、パパ活女子に疑似恋愛関係を構築したうえで詐欺を働き、数百万から数千万をだまし取る手口を常用している。恋愛経験の乏しい男を手玉に取るためのマニュアルを作成し、支配下のパパ活女子に詐欺をやらせる。そうやって得た資金を自分に上納させているのだ。


「リリィちゃん。凄く良かったよ。もう一回、いい?」


 あれだけ乱暴なセックスを強要し更にヤルのか。あきれてものが言えない。


 もういいだろう。このクソ男の悪行三昧は把握した。


「貴様は自由に私を貪った。今度は私が美味しく頂く」

「え?」


 海乱鬼は私の態度が一変した事に驚いている。ただし、股間の一物は隆々と猛ったままだ。


 私は大きく息を吸い込んでからニヤリと笑う。赤い唇の隙間からにょきっと犬歯が顔を出した。


「リリィちゃん……何の趣向かな? 僕はM役が苦手なんだけど」

「別に演じなくてもいい。私が一方的にヤルから」

「え? 何を言ってるの?」

「生きたまま喰うんだよ」


 悲鳴をあげそうになっている海乱鬼の鼻を踵で蹴り飛ばした。奴は両手で鼻を抑えて床に転がった。私は奴の両手を掴み、鼻血が噴き出している顔をべろべろと舐めた。先が二つに割れている舌は20センチほどの長さだ。


 私は海乱鬼を突き飛ばして仰向けに寝かせ、まだ猛り狂っている奴の一物を咥え思い切り噛んだ。自慢の犬歯を三度突き立てた。


「止めてくれ。痛い。痛い……」


 自慢のアレが激しくい痛むのだろう。目に涙をためた海乱鬼は呻きながら呟いたのだが知った事か。こいつはか弱い未成年者を何度も犯して泣かせてきたのだ。


 私は真の姿を見せることにした。体中から銀色の剛毛が生え始める。筋肉は膨れ上がり骨格もまた拡大する。140センチほどの身長は50センチは延びた。額から一本の角が血と肉を絡めながらグリグリと伸びる。


「化け物……だ……」


 海乱鬼は力なく呟きながら這って逃げようとする。しかし、私は逃がしてやる気はない。海乱鬼の脚を掴んで引き寄せ、奴の頭髪を掴んで立たせてやる。それでも頭一つ私の方が高い。


「あ……悪魔なのか?」

「ああ、私は悪魔だ」

「僕を……食べるのか?」

「そう。食べるんだよ。私はお前のような、神に背く人間の真っ黒な心が大好物なのだ」

「止めて……食べないで……」


 涙を流して嘆願してくる。もちろん無視だ。

 私は口を大きく開き、奴の頭を丸ごと飲み込んだ。そして、奴の真っ黒な心、神に背く背徳の精神をじゅるじゅると啜る。


 ああ、おいしい。

 この甘美で濃厚な味わいは他の何物にも勝るだろう。


 私は奴の頭をぷいっと吐き出した。

 海乱鬼は泡を吹きながら床に倒れた。痙攣している奴の顔は赤ん坊のような無垢な笑みを浮かべていた。


「済んだの?」

「ええ。たっぷり頂きました。これで一ヶ月は何も食べなくても大丈夫です。そっちは?」

「たっぷりと頂きましたわ。これ、若返るわね」


 マダムは既に人の姿へと戻っていたのだが、特に若くなったようには見えない。40代熟女のままだ。奥の寝室には仁科が泡を吹きながら転がっていた。

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