愛のトライアングル

@2ki4mu

第1話 幸せな日常

「雄一さん...拓真君は今日は居ないの?」


2月10日 時刻は夜の20時を少し過ぎた頃、先に風呂から上がり雄一の部屋のベットに横になりながら話しかける。


雄一はバスタオルで頭を拭きながら部屋に入る。


雫玖は雄一に少しそわそわしながら雄一を見る。


「拓真は今日はバイトだとかで22時までは帰らないだとよ」

「ホント、拓真は俺が居ないと心配だから、バイト始めるって聞いた時は驚いたもんだよ」


雄一はベットに入り、雫玖の頭を優しく撫でる。


「拓真くん、小さい頃から可愛い弟だと思ってたから私も安心したよ」

雫玖は兄の雄一とは幼馴染で、俺もよく遊んで貰っていた。


雄一は雫玖を抱きしめ、額から頬、口へとキスを進め次第に両手で包み込むように触れ、愛し合う。


2人とも幼い頃から一途で傍から見ると微笑ましい限りであった。


そんな幸せな時間が、閉ざされる事になろうとは誰も想像する事は出来なかった。


俺はあの悲惨な悲劇を忘れはしない。そしていつか見つけだして復讐してやる。


幼いころから兄のことが好きで尊敬していた俺は友達より兄さんと過ごす時間のほうが有意義でかつ幸せだった。


高校生になった俺は携帯を持つようになり、兄さんはいつも仕事帰りに一報連絡をくれる。2月17日夜19時頃だった。家の最寄り駅に着くなり帰りの合図として今日も帰宅の電話を掛けてくれた。俺はその電話が来るのを毎日楽しみになっていた。

 「もしもし、お兄ちゃんもうすぐ帰るの?もうすぐご飯ができるみたいだから早く帰ってきてね。」俺は料理の皿などを準備するなり、もうすぐ着くころだと思い待ち遠しかった俺は玄関を飛び出し奥から兄さんが手を振るのが見え俺は飛び出していった。

周りを見ていなかった俺は横から車のロービームが眩しく、クラクションが近づき正面から兄さんの叫び声と兄さんの足が俺の体を後ろに飛ばされ、その瞬間前を向いた俺はさっきまで正面にいた兄さんが視界から消え俺は体が凍り付いた。


「兄さん、兄さん・・・返事してよ兄さん!!」大雨の中家の前で車に跳ねられ兄は目の前で頭から血を流し倒れていた。車から出てきた男はボソボソつぶやきながら兄の死体を見るなり「なんでこんな時に、事故なんて・・・生きていてくれ・・・」四十代くらいの男の運転手は俺を見るなり「急に飛び出すお前が悪いんだからな」そう俺に罵声を挙げるなり、その場を立ち去った。雨の勢いは増し、俺はショックのあまり声が出なく喉の奥で詰まるような、そんな感覚が俺を襲った。


 父は俺が幼いころに母と離婚し、それから母は一年も経たないうちに癌で亡くなり俺と兄さんが唯一の家族だった。両親を亡くしてからというもの兄さんは学校に行きながら俺の面倒を見てくれ本当にやさしい最高の兄さんだった。そしてその場で立ちすくんでいると、先の急ブレーキやクラクションに引き寄せらるるように近所の住民が出てくるなり「キャー!!」と叫び声が俺の意識を戻した。そしてかすかに聞こえる近所の住民が救急車と警察に連絡している様子が聞こえた。


月日は流れ1人となった俺は3年が経過し、逃げた男を探し復讐の計画を練っていた。

社会人として働き始め、人と深く関わる事もなく、淡々と過ごす毎日。

そして今日は2月17日...兄さんの命日。俺は墓参りに来ていた。


「兄さん...俺これからどうしたらいいかな?兄さんなしで生きてても何も楽しくないし、辛いだけだよ...」


線香に火をつけ泣きながら墓に声を掛け、ふと顔を上げ立ち上がる。

「拓真、お前の優しくて家族思いだし、俺の分も幸せになってくれよ。いつでも俺は拓真を見守ってるからな。それと、彼女の雫玖によろしく頼む。最後に何も伝えられず居なくなってしまったからな。後は頼んだ。」

太陽の光に照らされ墓石から微かに聞こえた兄さんの声。

幻聴なのかとも一瞬思ったが、俺は兄さんの言葉を真剣に受け止め涙を拭いゆっくりとその場を離れる。


「俺、兄さんの居ない世界は嫌だけど、いつか俺なんかが"幸せ"になっていいなら、その時はまた報告に来るよ。」

そう言って俺は家に着き、玄関を開ける。

ガチャ

「ん?えっ?」

俺は靴を脱ぎ部屋に入ろうとした瞬間、目の前の視界がボヤけ膝から崩れ落ちるようにしてその場で倒れた。

しばらく玄関で倒れており、ふと目が覚める。

「アレ?俺なんで此処に居るんだ?」

視界に広がるのは見覚えのある玄関に、靴箱の上の芳香剤の香り、そして手で触れる事の出来る自身の体...俺は何が起こっているのか分からず洗面所へ駆け込んだ。


「俺、拓真になってる!!いや、拓真の体に俺が入っているという事が正しいのか?拓真は、拓真は何処にいるんだ!」


自分の身に起こっている事を理解しようとするも、考えれば考える程頭がこんがらがりパニックになった。


拓真の体に入ってから数日が経ち、俺は状況整理とやれる事を考えた。

「拓真は確か去年就職が決まったとかで報告してくれた気がする。となると、明日は仕事がある筈だ!どうにかして戻らなければならん!」

俺は弟である拓真の為ネットや霊能力者なりと片っ端から探し人格の引っ込め方を見つけなんとか一日で切り替えが出来るようになった。

方法てしては静かな場所で精神を落ち着かせ、深呼吸をしもう1人の人格、拓真の人格が底で眠っているのを引っ張り出すイメージで入れ替わるという事である。


......。


翌朝。

「ふはぁ〜、良く寝た〜。今日も仕事か〜...ん?」

昨日の朝、墓参りの帰り玄関で倒れてからの記憶が無く、目が覚めたらベットに居た事実が不思議に思い違和感を感じた。


「とりあえず、今日も早く帰って早く寝よう...」



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