第38話 救国の女神はアイとアーテルを喚ぶ。

メーライトは、本を読む前に「アルティ、視覚を繋いで、私の声を聞いて」と声をかけると、強制的にアルティに繋がる。


アルティはアルデバイトの城に居て、これまでのメーライトにはできなかった事に驚きながら、「メーライト!?大丈夫!?アルが助けに行くよ!」と言うと、老騎士やクサンゴーダが反応をする。


「ううん。平気だよ。とりあえずこっちは平気、戦争の目的も聞けたし、アーセワさんとアノーレさん、アーシルさんをひとまず呼んだけど、すぐに帰るよ。バナンカデスさんはどう?」

「あの子は起きられないけど、命は助かったよ。アノーレの魔法のおかげ、普通なら死んでたよ」


「良かった。とりあえず戦争の目的は魔界の扉を開く為に、人々をとにかく殺す事にあるから、それを止める為に、私達はこれからは戦うから、王子殿下達にそれを伝えて、戦闘になっても殺し合わないでって伝えてね」

「えええぇぇぇ!?殺さないのって面倒なんだよ!?」

「アルティは私が喚んだ強い友達だからやれるよね?お願いね」


アルティは「うぇぇ…。やるよぉ」と返すと、「ダンジョンコアをとっとと壊しておけば、そっちに行けたのに」と呟いていて、「アルティがアルデバイトにいてくれて私はホッとしてるよ。皆を守ってね」と言って、繋がりを切ると本に向かう。




【五色の神子】と書かれた本を開いた時、最初にシムホノンの言葉があった。


女神様へ

人々を救いたいと想う事は間違いではありません。

優れた力、強い力を得たいと願う事も間違いではありません。

ですが、そのどちらも必要なのです。


読んだ時…アルーナ達とアルティがメーライトの中にいた。


人々を救いたいとアルーナ達を求め、アルデバイト奪還の為にアルティを求めた。


アルーナ達だけでは、追いやられた土地のダンジョンコアを攻略できず。力のみを求めたアルティは、ワルコレステ達を殺した。


そうならないための使徒を求める。


メーライトは真剣に本に向かう。

内容は魔界の入口がある世界の物語だった。

魔物を倒すだけでは、いずれ魔界の扉は開かれてしまい。人々は滅亡してしまう。


魔法技術の豊かな国で、人と魔法の融合を目指していたが、とても魔物や魔界の扉に太刀打ちできるような力ではなかった。


そのうち…1人の研究者がとんでもない方法を思いつく。


人体に魔法を込めた宝具を埋め込み、人造人間に変えてしまう方法。


その方法を、「いつ開くかわからない扉に怯えながら、いつ現れるのかわからない神子を待つのか!?」と言いながら実践し、屈強な兵士を3人殺した所で計画を変更する事になる。


研究者は、身体に命を宿せる土壌がある分だけ、女性の方がうまく行く事に気付き、再度女性を用いて人造人間を生み出していく。


最初の女性は身体は死ななかったが、心が死んでしまい何もできなくなる。

2人目の女性は、最初の女性の姉で、心は辛うじて残ったが、妹から離すと廃人同然で何もできなくなっていた。


ここで失敗の理由に気付いた研究者は、体内に埋め込む宝具を一定方向に限定する事で、3人目から5人目までの神子を完成させた。


方向性を決めた宝具により、少女達の髪と目の色は、宝具にちなんだ色に変わっていて、赤と青と黄色がとても綺麗だった。


神子達は空を駆け、人の手には負えない魔法すら放ち、魔物の群れを消し去ると、魔界の扉を魔法の力で封印してしまった。


勿論物語はそれだけではない。

神子候補に選ばれてしまった日の、苦悩と葛藤、家族との別れなんかに泣き、友達や初恋の相手を救う為に、犠牲になる姿まで書かれていた。


メーライトは本を閉じると、「司書様、素晴らしく素敵な本をありがとうございます。想いも力も、私はそこに私の気持ち、覚悟と責任を添えさせてもらいます」と言うと、ブンコーから紙を分けて貰い「書きます」と言った。


メーライトは、姉と妹の神子に焦点を当てる。


姉の名前はアーテルにする。

姉の立場を聞いて、メーライトの姉の名前を貰った。

妹の名前はアイ。


メーライトは人々の為に、人を救おうという気持ちを愛だとして、アイの名前を付けた。


心を失ったアイの為に、アーテルは日々アイに食事を摂らせて世話をする。

心の戻らないアイだったが、ある日、神の奇跡が宿り、神が降り立った時だけアイに心が宿る。

それは別人だったが、偶然、アイとその心はよく似ていて、アーテルは泣いて喜ぶ。


アーテルがアイから離すと前後不覚になるのは、アイの心を探して、自身も心がどこかへ行ってしまっていたからだった。


魔界の扉は確かに閉まったが…、嫌な予感を覚えたアーテルとアイが魔界の扉を見に行くと、扉からは恐ろしい魔王と魔物の群れが現れていた。


アイとアーテルは初期の改造コンセプトのお陰で、残りの3人の神子が束になっても敵わない実力で、魔物と魔王を蹴散らして真の平和を手に入れていた。



書き終えて、「ふふ。ありがとうございます司書様」と言ったメーライトが「アイ、アーテル、来て」と喚ぶ。


「2体同時召喚?ルールはひと作品から1人なのに…」と驚くアノーレに、メーライトは「この子達は2人で1人…ううん。3人で1人なの」と答えると、「黒い髪と黒と紫の鎧を着ているのがアーテル。私のお姉ちゃん。そして白と紫の鎧を着た白い髪の子がアイ。まだ目覚めてないからご飯にしよう」と言った。

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