第81話 【対決】ヒデオ対『Dリンクス』

『ぎゃー、ヒデオ!! 『Dリンクス』さんがゴリちゃんたちと戦ってるう!!』


 ヒカリちゃんが悲鳴を上げて、通路の方を指さしたので見ると、フル装備の配信冒険者が武器を持ってゴリラ達に対峙していた。


「うわ、なんてこったあ」


 俺は慌ててステージから飛び降りた。


 ダーン!!


 ぐわっ、足が痛いっ!


 一昨日会った、鏡子さんが目を光らせて拳法の構えを取っていた。

 取っていたが、ゴリラたちが、オーノーというジェスチャーをして戦わないので訝しんでいるようだ。


「きゃりありあ?」


 他の片手剣のイケメン君と銃を持った足軽風の和風イケメン、シュッとした黒スーツの美人さん、あと大きな白い犬にのったカウボーイハットの幼女がいた。

 幼女はチアキちゃんだね、俺の鞭の心の師匠だ。


『すいませーん、うちのボディガードのヒデオの超能力でーす』

「すいませんすいません、ステージ近くだとこいつら邪魔なので、ここに置いていたんですよ、魔物じゃないです」


 『Dリンクス』さんたちは顔を見あわせた。


「超能力でできた、ゴリラ?」

「おお、さすが『Dリンクス』のタカシさん、存在を感知して、ゴリラと解るなんて、いつも配信みてますよ」


 すいません、嘘です。

 スマホが苦手なのであまり見てませんよ。

 と、正直には言えないなあ。

 チアキちゃんの動画は何本か見たけど。


「『そは人間なりき、迷いを忘れ元の姿へ戻れ、【解呪ディスペル】』」


 黒スーツの美人さんが聖句を唱えた。

 ああ、『僧侶プリースト』の人なのか。


 鏡子さんが赤い目から普通の目に戻った。

 剣呑な雰囲気が切れたね。

 なんのスキルなんだろうか。

 変身しているみたいだね。


『サザンフルーツ』の三人も舞台袖の階段からおりてきて、デデデと走ってきた。


「ぎゃあ、鏡子さんにタカシ君だあ、初めまして、『サザンフルーツ』のミキって言います、よろしく~~」

「あ、はい」

「ひゃあ、チアキちゃん、くつしたくんっ、あたしはヒカリだよ、よろしくねっ」

「ここ、こんにちは、ヒカリさん、いつも配信みてます、噂の透明ゴリラはこんな感じだったんですね」

「わ、ありがとう、あたしも『Dリンクス』の配信は欠かさず見ているよ、ゴリちゃんたちを察知できるなんて、【気配察知】スキルってすごいねっ」

「こんにちは、私はヤヤです。はあ、生泥舟さん、そして朱雀さん、こんにちはこんにちは」


 自己紹介モードだね。

 次は俺か。


「こここ、こんにちは、丸出英雄まるでひでおともうします、『サザンフルーツ』のボディガードみたいな事をやってますよ」

「よろしくおねがいします、『Dリンクス』の新宮タカシです」


 片手剣とバックラーの影がある感じの彼が噂のタカシくんかあ。

 【オカン召喚】というネタスキルを手に入れたら、異世界に転生していた高レベル『僧兵』のかーちゃんさんが呼べるようになって、いま急速に売り出し中のDチューバーさんだ。


「丸出家……、ヒデオさん、滋賀の出身じゃないですか?」


 シュッとした黒服お姉さんが話しかけてきた。


「え、はあ、なんかヒイヒイ爺さんの時に関東に来たみたいですが、滋賀だったのかなあ」


「これ、陰陽の護法童子ですよ」


 黒服さんはゴリラ達を見上げてそう言った。

 といか、見えて無いからちょっと角度間違えているね。

 おっと、そこじゃないか。

 護法童子って、なんぞ?


「「「「えっ!」」」」

「このゴリラ、陰陽系のもんなのか」


 超能力じゃなかったのか?


「あ、毛がわしゃわしゃだ」


 鏡子さんがマイペースにゴリ太郎のお尻を揉んだ。

 チアキちゃんも足に取り付いてさすっている。

 ウホっという顔はやめなさい、ゴリ太郎。


「なんと、俺は超能力だと思っていたんですが、陰陽系の物だったんですか」

「もう、本流では失伝した技術ですよ、丸出さん。これは本家に報告しなくては」

「そうなんですかあ、うちが陰陽の家系とは、農家の家系だとばっかり思ってましたよ」

「ヒデオのルーツが解って良かったね」

「ゴリちゃんたち、術の存在なんだねえ」

「パワーアップ方法とか伝わってるかもよ」


 ああ、それは良いなあ、ちょっと黒スーツお姉さんに詳しい話を後で聞こうかな。


「ヒデオ、ロシア人が来たらゴリラを動かして制圧してくれ」

「あ、はい、やりますよ、鏡子さん」


「護法童子といのは、安倍晴明とかの流れですか、朱雀さん」


 鉄砲足軽イケメン君が黒スーツさんに聞いた。

 そうか、彼女は朱雀さんというらしいね。


「そうね、五条戻り橋の下に住まわせていたらしいわね。前鬼、後鬼のセットで運用していたみたい」

「ひい爺ちゃんが未来に持って行け、かならず二体が役に立つ時がくると言ってたけど、この事だったのだねえ」


 ミキちゃんの【直感】が当たっているのかなあ。

 でもあとでヒカリちゃんに聞いたら、たまに間違うらしいからなあ。

 ミキちゃんは【直感】で運命の男と思って付き合いはじめたらとんだクソ野郎で最終的にグーで殴って関係が終わった事もあったらしい。


「『サザンフルーツ』さんは今何階ですか」

「いま、十六階です。ゴリちゃんが居たおかげでなんとか十階を抜けられましたよ」

「そうですか、下の方に来たら、一緒にレイドしましょう」


 タカシ君の提案で、ミキちゃんの顔がぱあっと明るくなった。

 今売り出し中の花形パーティーとのレイドは同接数取れそうだねえ。

 こっちも勉強になりそうだし。



「ヒデオのおっちゃんはパーティーで何やってんの?」

「え、無職だよ、チアキちゃん。なかなか何をするっていっても困ってねえ」

「ゴリ頼りなのかあ、何かやった方が良いよ」

「そう思ってるんだけど、なかなか合う職業が無くてね。『盗賊』シーフをやろうとしたら毎回敏捷度でひっかかるんだよ」


職業ジョブチェンジは特にペナルティ無いから、仮に戦士ウォリアーとか入れといた方が良いですよ」

「そうしようかねえ」

「そうだよ、ヒデオは鈍いから『盗賊』シーフとかじゃなくて戦士ウォリアーかやれば良いんだよ」

「いやあ、ゴリ太郎とゴリ次郎に命令出さなきゃならないしねえ、むずかしいよ」


 『魔獣使いモンスターテイマー』の事はまだ未確定だから黙っていた。

 というか、くつした君を従魔としているから、『Dリンクス』さんの全員が転職出来るんじゃ無いかなあ?


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