第66話 一流レストランでマナー研修だよ②
ちまちました前菜が運ばれて来た。
「フォアグラのタルトでございます」
おお、なんかオードブルから凄そうな物が来た。
ナイフとフォークは一番外側を使うのだね。
パクリ。
あ、これは美味しい。
なんだか不思議な味わいのパテがタルト生地の上に乗っていて良い味だね。
シャンパンが進んでしまうよ。
でも、飲み屋さんじゃないからシャンパンをグビグビ飲むのは違うんだろうね。
「おいしいっすねえ」
「不思議なバランスだなあ。向日葵の種が入ってるかな」
ムラサキさんは舌が繊細だなあ。
確かにこのナッツみたいのはヒマワリの種か。
「ミスター丸出は洋食にお慣れでないですが、食べ方に品がありますね。ミスター三州はシルバーとお皿を接触させた音を立てないようにおねがいしますね」
「す、すんません」
三郎太くんが頭をかいた。
「意外にヒデオの食べ方が綺麗だな、良い所の子なのか?」
「いや、そんな事ありませんて」
やっぱりお爺ちゃんの躾かなあ。
厳しかったからねえ、お爺ちゃん。
でもそのお陰でマナーの先生に褒められたよ。
ありがとうお爺ちゃん。
オードブルが終わり、ワゴンでスープが運ばれてきて、配膳された。
「なすとセロリのスープでございます」
おお、その場その場でスープ皿に注いでくれるのね。
良い匂いだなあ。
ええと、スープ匙は、これか。
音を立てないように、お上品に口に運ぼう。
ふわあ、これはなんだか凄いね。
セロリと茄子って庶民的な食材なんだけど、すごい良い味わいだなあ。
美味しいね。
あまり匙でスープを食べないので難しいね。
匙は基本カレーぐらいにしか使わないんだよね。
「スープが少なくなってきましたら、スープ皿を奧側に傾けて、手前から奧に向けて掬うようにしましょう」
ゴルチェ先生が実際にやってくれるので解りやすいね。
三郎太くんと一緒になれない手つきで匙を使った。
ムラサキさんは慣れているのか堂にいってるね。
さすがは一流レストランっぽくて、お皿にのった食材がちょんもりだね。
でも異常に美味しいなあ。
ボーイさんが新しく白ワインのボトルを持って来て、グラスに注いでくれた。
メルシーメルシー。
白ワインは爽やかで良いね。
「アナゴのグリルでございます」
おお、アナゴ。
お魚だから白ワインになったのかな。
ぱくりぱくり。
んー、これは美味しいね。
さすが一流レストラン、何を食べても美味しいね。
付け合わせの温野菜からして美味しい。
「フォアグラと生ハムのクレープ仕立てでございます」
肉料理? というわけでもないのか。
なんだか、不思議なお料理がはさまったかんじ。
これも白ワインでいただくのかな。
パクリパクリ。
わあ、これは好きな味かもしれない。
美味しいねえ。
「イサキのポワレです」
おお、これがお魚のお皿だね。
立派なお魚がのっている。
切り口が虹色で綺麗だねえ。
パクリ。
ああ、ああ、焼き具合が凄いなあ。
身が半生なのに皮がぱりぱりですごく美味しい。
いやあ、芸術的なお料理だねえ。
主食はパンだね。
籠に入れたパンを持ってきてくれたので、二三個頂く。
三郎太くんは沢山取っていたね。
銀食器にバターが入っていてそこからとって付ける。
パンも美味しいし、お魚のソースを拭って食べても美味しい。
ムラサキさんがやってたのでマナー違反ではないのだろう。
ああ、幸せ。
でも、そろそろお腹がパンパン。
「花蜜柑のソルベでございます」
あら、デザートかなと思ったけど、あまり甘く無くてさっぱりしたシャーベットだな。
「魚料理とお肉料理の間に口直しをするソルベですわ」
「ま、まだ出ますか」
「ヒデオはあんまり喰わねえんだな」
「俺はまだまだ入りますよ」
おじさんはだんだん喰う量が減っていくんだよなあ。
昔はドカ食いしてたものだけどさ。
ボーイさんが赤ワインを持って来てくれて、それぞれの新しいグラスに注いでくれる。
「海道豚のローストとなります」
おお、大きいお肉と胡桃にブロッコリーだね。
なんだか、すごく複雑な感じに火が入ってる。
胡桃ソースの香ばしい匂いがするね。
パクリ。
ああ、これは美味しい。
なんだかすごい焼き加減だなあ。
美味しい美味しい。
うーんワインにも合うね。
しかし、フルコースというのは時間を掛けて、贅沢にお料理を楽しむものなのだなあ。
ふうふう言いながらメインの肉料理を食べた。
美味しいから何とか入るね。
サラダが出て来た。
メインを食べた後にでるのね。
まあ、もしゃもしゃたべるね。
そしてチーズが出て来た。
いや、食事が終わったのにチーズ?
「これは食後にワインを楽しみながら談笑するためのつまみみたいなものですわね」
「なるほど」
だけどあまり入らないのでちょっと口をつけるぐらいだね。
三郎太くんはバリバリ食べて、ワインを飲んでるね。
「悪酔いすんなよ」
「大丈夫っすよ、ムラサキさん」
頬が赤いね。
「メレンゲのアイスクリームでございます」
おお、なんかふわふわな感じのアイスと、コーヒーが饗せられた。
コーヒーも濃くて美味しいね。
「ココナッツのムースでございます」
おお、デザートが二品か。
甘い物は別腹だけど、わりと一杯一杯だね。
「はい、これでコース料理は終わりました。みなさま、なかなかすばらしかったですわね」
「ありがとうございます、ゴルチェ先生」
「お食事は楽しむ物です、あまり堅苦しく考えずに、それでも品位を忘れないように行いましょうね」
マナー教師というので、もっとガミガミ言われるかと思ったけど、わりとソフトな感じで良かったな。
「さて、帰るか」
「そうですね」
お店の人がタクシーを呼んでくれたので、店の前でゴルチェ先生と別れて、俺達は車に乗り込んだ。
「いやあ、美味かったなあ」
「美味しかったですね、高そうなレストランですね」
「三つ星ですからね、一人前三万とか掛かりますよ」
「酒も入るからなあ、もっとするよ」
それは凄い値段の夕食だったんだなあ。
なかなか得がたい経験をしたなあ。
さて、タクシーに乗るとゴリラたちはどうしてるかというと……。
後ろを走っているのだなあ。
車ぐらいだとわりと平気で追走できるね。
高速道路だと大変だけどね。
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