第62話 リハーサルを見ながら警備計画を確認する
「ヒデオ~~!」
ヒカリちゃんがステージの上から手を振ってくれた。
ステージの大きさが解ると、警備の計画が解りやすいね。
ゴリ太郎とゴリ次郎をステージに上がらせてみる。
やっぱり、邪魔にならない端っこに立たせておこうかな。
リハーサルだと結構人が通るのでぶつかったりしてるね。
「俺はどこにいましょうかね」
「そうだね、ヒデオさんも舞台袖かな、見えない場所で警戒してほしい」
「わかりました」
俺も台を踏んでステージに上がった。
わあ、ライトが当たって眩しいね。
今は観客席に誰も居ないのだけれども、当日はお客さんで一杯なんだろうなあ。
バックバンドの人が楽器のチューニングをしている。
俺は邪魔にならないように緞帳の裏に隠れた。
うん、ここが良いかな。
スタッフの人が山下さんに俺の事を問い合わせていた。
まあ、何やってる人か解らないからね。
一応、舞台袖に居るのでOKとなった。
ヒカリちゃんとミキちゃんがこっちの方をチラチラ見るね。
ヤヤちゃんの真後ろだから彼女は振り返らないとこちらが見れない。
「それではリハーサルを始めます」
『サザンフルーツ』がポーズを取って、前奏に合わせて体を揺らしはじめた。
やあ、ここで聞いていると楽器がズンズンいって迫力があるね。
『サザンフルーツ』が『南国フルーツパラダイス』を歌い始めた。
やっぱりポップで良い曲だね。
ミキちゃんの声も今日は延びているね。
ぷっ、ゴリ太郎とゴリ次郎が曲にのせて踊り始めた。
なんだか意外に上手いので面白いな。
見えるのが俺だけなのがもったいないね。
結構、リーディングプロモーションの警備部も、マリアさんの事務所も、日本政府も厳重に警備をしているなあ。
この警備を抜けて乱入してはこれないと思うけど、まあ、良いのだ、事件が起こらなければ起こらないで、その方がいい。
警備とはそういう目的でやる仕事よね。
とりあえず、人が乱入してきたら、左右のゴリラで制圧排除だね。
「問題は飽和攻撃をされた時だよな」
ムラサキさんが来ていて、俺の後ろでそうつぶやいた。
「飽和攻撃?」
「沢山の敵兵で警備の手を塞いで、一杯一杯にしてから本命の攻撃をするやつ」
「あ、そんなに沢山で来ますか」
「日本政府の組織が居るから、そこまでの人数は乱入してこないだろうけど、用心しておくに越したことはねえよ」
「それはそうですね」
相手はロシア人の組織だからね。
中国の黒組織よりもプロかもしれないな。
ステージと客席の間には柵があって、簡単には突破できないようになっている。
けど、Dチューバーだと身体能力が一般人じゃないからね。
飛び越してくるかもしれないなあ。
色々心配だなあ。
「ヒデオさんはずっとステージ脇に居てくれるかな」
「『サザンフルーツ』のステージだけでは無くてですか?」
「チョリさんと、『マリア&みのり』のメインステージまでだね」
「わかりました、そうしましょうか」
ゴリラたちを巡回させてもあまり意味がなさそうだしね。
スタッフさんがゴリ次郎とぶつかった。
「うわ、なんだ、これ?」
「あ、俺の透明ゴリラですよ」
「透明ゴリラ? ああ、丸出英雄さんかあ」
「本番までどかしておきますか?」
「そうだなあ、準備の時にスタッフが結構行き来するから、配置は本番の時だけにしたほうが良いかもね」
それはそうよね。
だいたい、ゴリラたちの立ち位置も解ったから、どっかに置いておこう。
「通路のちょっと出っぱった所あるじゃん、あそこに置いて置いてくれるかな、あそこなら邪魔になりにくいし」
「わかりました」
俺はゴリ太郎とゴリ次郎を移動させた。
通路の出っ張りの所だから、ゴリラたちも収まりがいいな。
あまり邪魔にならないし。
『南国フルーツパラダイス』が終わった。
「どうだった、ヒデオ?」
「うん、良い感じだね」
「ありがとうございます、ヒデオさん」
「チョリさんとか、みのりんさんとかは今日は来ないの?」
「今日は私たちだけよ、明日は通しでやるけど」
そうなんだ、のんびりしている感じだね。
また『サザンフルーツ』が『南国フルーツパラダイス』を歌いはじめた。
何回か練習するみたいね。
俺はステージを下りて会場を巡回する。
観客席を一周する。
ミカリさんと三郎太くんがいるね。
「お二人の担当は?」
「私は会場周回、三郎太は外周警備だよ」
「おー、大変ですね」
「まあ、配置状況は色々ですからね」
「あ、あと、支社に戻ったら警備の制服を支給してもらえよ」
「みんな、制服で警備ですか」
「そうそう、一応施設とかイベント警備だと制服が無いとね」
そうかそうか、制服が無いと警備員って解らないからだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます