第33話 ゴリラ対ドラゴン、ロビーでの激突!
十階ポータル石碑にタッチしてロビーへ戻ってきた。
「ヒデオさん、ありがとう、順調にムカデ部屋をクリアできたよ」
「いえいえ、上手く行って良かったですよ」
「ムカデ部屋でつまづいているアイドルは結構いるから、また頼むぜ、ヒデオ」
「わかりましたよ、ムラサキさん」
まだ何人もいるなら、また介助しても良いね。
ゴリ太郎もゴリ次郎も慣れてきたし。
皆がロビーに出て、明るい表情を浮かべていた。
「やっぱりムカデ部屋はプレッシャーだったの?」
「そりゃそうよ」
「最大の難所と言われているのよ」
「ゴリちゃんに運んで貰って安心だった~~、ありがとう、ヒデオ」
それは良かったなあ。
みんなの役にたてたら嬉しいね。
ザワッとロビーが震えた。
見れば、二メートルぐらいの真っ赤なドラゴンがロビーにいて、ミキちゃんを見つめていた。
「ゴリ太郎、ゴリ次郎」
俺は咄嗟にゴリラたちに命令を放って、赤いドラゴンに飛びかからせた。
「う、うおっ? なんだこれは霊獣か?」
「あ、レグルス陛下だ」
「え、喋るの?」
「安全なドラゴンさんだから、攻撃しちゃだめよ、ヒデオ」
「ゴリ太郎、ゴリ次郎止まれ」
俺はドラゴンに殴りかかろうとしていたゴリ太郎を止めた。
「ごあいさつだな」
「いえ、その、魔物と思いまして、ごめんなさい、魔物神父さんですか」
「違う、我は暴虐竜帝レグルス、竜の国を統べる帝王ぞ」
「はあ……」
良く見たらレグルス陛下はお菓子を一杯もって口に運んでいた。
悪魔神父さんでも無いのか。
「しかし、不思議な存在だな、見えない霊獣か、向こうの世界でもいないぞ、こんなものは」
レグルス陛下はゴリ太郎の肩をポンポンと叩いた。
異世界にも居ないのか。
なんなんだろうね、見えないゴリラって。
レグルス陛下はお菓子を置いて、なにかの段ボールを引っ張り出した。
「よし、ミキはすばらしい歌姫なので、このレグルスぬいぐるみをあげよう」
「あ、ありがとうございます」
ちょっと引きつりながらミキちゃんはレグルス陛下のぬいぐるみを受け取った。
一抱えぐらいある大きなぬいぐるみで、なかなか良い出来だなあ。
「陛下、私にも私にも」
「む、ヒカリもか、まあ良いだろう、ヤヤにもやろう」
「わあい、やったーっ!」
「ありがとうございます、陛下」
意外に気さくなドラゴンさんだったな。
ユカリちゃん、チョリさんにもぬいぐるみを配っていた。
「僕にもくださいよう、陛下」
「あ? 男に渡すぬいぐるみは無いわっ」
男性には塩対応だった。
だがムラサキさんには渡した。
「あ、ありがとうございますよ」
「立花のMVを見た、また歌えるといいな」
「陛下……、ありがとう……」
ムラサキさんはぬいぐるみを持ち上げ顔を埋めた。
うん、なかなか良いドラゴンさんだな。
ムラサキさんも復帰したいんだな。
レグルス陛下はそのままぬいぐるみを女性配信冒険者に配りあるいていた。
『なにやってんだ、あの赤ガチャピンは』
「急にあらわれたね」
『この前、ロシア人がミサイルぶっ放したので『軍隊殺し』として迷宮に現れたは良いんだけど、通路とサイズが合わなくて『Dリンクス』にまんまと退治されたんだよ』
「そんな事が!」
「ヒデオ、迷宮のニュース見ようよ」
「Dスマホで見れますよ」
というか迷宮でミサイルぶっ放すロシア人も怖いなあ。
何をしているのだろうか。
『その後スェーデンでこれ幸いと呼び出されたら、【サイズ変更】のスキルを覚えていてスェーデン軍を撃退。いまは赤ガチャピンモードでロビーをうろうろしてるんだぜ』
それはまた、やっかいな人だなあ。
ドラゴンだけど。
女性がみなレグルス陛下ぬいぐるみを貰って嬉しそうだな。
「ゴリラぬいぐるみとか作りましょうよ」
「いや、透明だからさ」
「そこは見える姿で」
地獄門を出ると、空は真っ赤だった。
もう夕方だね。
「次の狩りはあさってかな?」
「そうですね、十階からちょっと狩りでうろうろしますかケインさん」
「そうだね、うん、訓練は必要だ」
「私も狩りいきたーい」
ユカリちゃんもか。
「じゃ、私もつきあってやんよ、ヒデオ」
「助かります、ムラサキさん」
ムラサキさんは凄腕『
「なあに、狩りをして宝箱を開けまくればエクストラポーションとかエリクサーが出るかもだしな」
「あ、どこの宝箱からでも出るんですか」
「ああ、確率は低いけど、ゼロじゃないしさ」
「一般金箱に入っているよ」
ヒカリちゃんが教えてくれた。
それは、是非ともムラサキさんに当てて欲しいね。
「それじゃ、夕食を食べて解散といこうか」
山下さんが号令をかけた。
また高いお店につれていかれそうな予感がする。
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