第22話 ヒデオは支社に出社する

 ビンバッチョロピピロン!!

 ビンバッチョロピピロン!!


 うーむ、今日もまた、この変なDスマホの呼び出し音で目を覚ました。

 ミキちゃんからのモーニングコールである。


『おはようございます、ヒデオさん』

「おはようミキちゃん」

『今日も一日頑張りましょう』

「そうだね、がんばろう」

『ちなみに今日の『サザンフルーツ』は登校日なので、夕方から合流となりますね』

「がんばって勉強してくださいよ。ヒカリちゃんとヤヤちゃんにもよろしく」

『はい、ありがとうございます、ヒデオさん、では行ってきます』


 ミキちゃんはしっかりしていて良いね。

 毎朝モーニングコールしてくれるのは助かるよなあ。


 さて、今日の俺は、リーディングプロモーションの川崎支社に行って山下さんと打ち合わせであるな。

 まだ業務が解らない事だらけなので、色々教えてもらおう。


 色々と用足しをして、菓子パンと牛乳の朝ご飯を食べる。

 俺が靴を履くと、ゴリラたちものっそりと立ち上がった。


「いこうか、ゴリ太郎、ゴリ二郎」

『ウホウホ』

『ウホウホ』


 ゴリラ達は今日も調子が良いみたいだな。

 まあ、不調なゴリラ達は見た事無いけどね。


 アパートの階段をカンカンと下りて駅の方へ歩き出す。

 今日は良く晴れて良い天気だね。

 国道を渡って駅前ゾーンに入る。

 市役所の裏の方に入り、リーディングプロモーションの支社が入っているビルに入る。

 エレベーターで上がると、リーディングプロモーションの事務所だね。


「ヒデオさん、おはよう」

「おはようございます、山下さん」


 うちのボスである護衛部の山下さんが机に付いていた。

 パソコンとか在って出来る人みたいだね、山下さん。


「ヒデオさんは基本的に外回りだから支社に机は無いんだ、ごめんね」

「いえ、使い道無いですからね」


 基本的にアイドルの護衛というのは迷宮がメインの仕事場だからね。

 事務所に机は無いらしい。


「あ、ヒデオさん、一昨日と昨日の日当です」

「あ、これはありがとうございます」


 メガネの事務のお義姉さんが封筒に入った俺の日当を手渡してくれた。

 おお、結構入っているなあ。

 ありがたい。


「ヒデオさんのD口座に振り込む事もできますが、どうしますか?」

「毎日日当を用意してもらうのは大変かもですね、振り込みでもかまいませんよ」


 D口座は使った事が無いけど、銀行と変わらない感じで使えるらしい。

 あとDスマホからなら直接通販も買えるね。


「それではDスマホを貸してください」


 お姉さんにスマホを渡すと、ピッポッパと手続きをしてくれた。


「これで、日当は次の日の朝九時に振り込まれますよ」

「ありがとうございます」


 Dスマホとは便利な物だなあ。

 迷宮に縁が無かったから使ってなかったけど、スマホで何でもできるね。

 D口座を確かめて見ると……。


「え、なんでこんなに入ってるんだろう?」

「……、あ、うちじゃありませんよ、迷宮からの配信料ですよ」

「一日で二百万近くって、そんな……」

「ヒデオさん、人気あるからね、サザンよりも配信料稼いでるんじゃないですか?」

「この前、ヒデオさんのまとめ動画出てましたよ」

「な、なんですかそれ?」

「ヒデオさんのファンが、ゴリちゃん達の活躍とか抜粋して動画にした物です。これをリスナーが視聴すると、動画制作者と被写体のヒデオさんに配信料が入ってくるんですよ」

「あわわわ」


 一日で二百万って、えー、どうしよう。

 去年の年収じゃんか。

 あわわわわ。


「人気のある配信冒険者は稼げるからね、できればリーディングプロモーションの護衛は続けて欲しい所だね」

「そ、それは当然、やりますけど、こ、こんなに貰えるんですか」

「悪魔の人達は気前が良いんですよ」

「悪魔は人じゃないですけどね」


 これは、稼げるなあ。

 まあ、昨日、一昨日が異常だったんで、たぶん今日なんかは配信料下がるだろうけどね。

 俺みたいなしょぼくれたおっちゃんの動画とか見たくないだろうし。

 見えないゴリラの動画が不思議だから物珍しさでみんな見てるんだろうね。


 はあ、しかし、今年はもう働かないで、毎日パチスロをやって、飲み屋で一杯やって帰って寝る生活も出来るんだなあ。

 いや、まあ、しないですけどね。

 選択肢としてですね。


 まあ、『サザン』の子達とか、ケインさんとかの護衛をがんばろう。

 彼女たちや彼らが怪我したり死んだりしたら目覚めが悪いだろうし。

 迷宮の護衛としてももうちょっと実力を上げてがんばろうか。

 なんか、儲かると知るとやる気がモリモリ出てくるね。


「がんばってくださいね、ヒデオさん」

「ありがとうございます、ええと」

「佐々木のぞみといいます、よろしくおねがいします」

「丸出英雄です、よろしくおねがいしますね、のぞみさん」

「はい」


 そう言うとのぞみさんはにっこり笑った。

 なかなか良い感じの人だなあ。


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