第17話

気が付くとベットの上で目が覚めた。あれから一晩中あいつの顔が頭から離れなくて、風呂に入った所までは覚えている。でも歯磨きしたっけなぁ?してなかったらまずいな。甘いもの食べちゃったし。


「してないね」


 珍しく朝からの登場か。


「朝からだっていいじゃないか。友達の件はどうなった?てか、超能力の方の調子はどうだ?」


 こいつ、うちの母親みたいだな。


「心配してんだよ」


 そいつがにこやかな顔をこちらに向ける。自分でいうのはなんだが俺ぐらいの年代は皆お節介を煩わしいと思ってしまう。


「ったく。素直じゃないねー」


 俺はその台詞に一切触れず、学校へ行く準備を進める。お節介か。俺はまた彼のことを考えてしまう。


「だから、そんなに考えすぎないでいいんだってば」

(お前はもう口をはさむな)

「嫌だね。とにかく彼のことは考えすぎない。超能力の方は、頑張って練習しとけ」


 そういわれて、少しだけ心が軽くなった気がする。振り向くとアイツの影は無くなっていた。

 とりあえず、超能力を使ってみるか。この間のような思いはもうしたくないからな。とりあえず、駅へと向かおう。駅のそうだな。ロータリーとかにしてみよう。距離が近いから成功する確率も高そうだ。

 俺は玄関を出て、目をつぶる。深く息を吸い、


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 大きな汽笛に驚き、前をみると電車がこちらに向かってくる。


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 今度は電車の上だ。またトンネルと衝突はごめんだ。


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 やっと、車内に入れたと思ったら、目の前に制服姿の男性が見える。運転席だったらしい。


「すみません。すみません」


 平謝りをしながら、後ろずさりをして外へ出る。そこで改札を通っていない事に気がつく。まずい。


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 最寄り駅のロータリーに到着した。だめだ。やっぱり上手く使いこなせない。どうしたものか。

こんな時、いつも自然と足が本屋に向かう。駅に併設されたそこで、それとなく新刊の並ぶ台へ目を流しているとそのまま目が吸い寄せられた。彼女だ。どうしてここにいるんだろうか?

 店員の着ているエプロン、名札。なんと、ここでアルバイトをしている様だ。なんだか急に落ち着きが無くなった俺をよそにそのまま店の奥へと消えていった。

 俺はなんだか恥ずかしくなってきた。この場からいなくなってしまいたい。


「カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」


 最後に彼女がこちらを振り向いた気がするが、それを確かめることもできず、俺は、再びロータリーに移動していた。

 まさかこんな近くに彼女がいるとは。良く行く本屋なのに今まで気が付かなかった。たまに親と行くこともあるのだけど。そこを見られたことを考えると俺はまた恥ずかしくなってきた。もう行けなくなってしまった。

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