第18話 Books Esoterica 妖怪の本 6/3
今回Books Esotericaのシリーズの24,『妖怪の本』。
学研プラスの978-4056020489。
NDC分類では社会科学>民間信仰. 迷信[俗信]に分類しています。
この本、学研から出てるだけにそれなりにライトで読みやすくて何冊かもってるんだけどさ、並べたてるとものすごい黒歴史感を醸し出すから買うの躊躇するんだよね。新紀元社のTruth In Fantasyのシリーズもそうなんだけど、本棚に一列とかあったら熟成された中二病感とか闇落ち感を醸造するシリーズ(偏見。
1.読前印象
中身、わかります。妖怪のことについて書いてあるんですね。表紙は北斎の化け提灯。
なんとなくざっくり妖怪の話と、ところどころキャッチーにコラム的に深いことが書いてある予感がする。
さぁ、張り切って開いてみよう~。
2.目次と前書きチェック
プロローグ『民妖怪の国に入る』、1章『妖怪と日本人』、2章『日本の四大妖怪(鬼・天狗・河童・妖狐)』、図説『妖怪百選』、4章『もののけ通人列伝』、5章『妖怪封じの秘宝』、6章『妖怪のミイラ』と続き資料がついている。妖怪封じの秘宝って打って要開封時の悲報って変換されると、なんか悪いことした気になるから止めてほしい。
だいたいの内容は把握してる気がするなあ。妖怪のミイラっていうのは人魚とかだろうし。僕はそれなりに妖怪については詳しいんだ。そうじゃなきゃ妖怪のコラムなんて書こうと思わないもの。
今書くのが止まっている2章の天狗と、3章の鳥山石燕は敢えて除いて平田篤胤と泉鏡花を読んでみようと思います。
3.中身
『天狗』について。
中国の流星説から始まって突然鎌倉時代あたりに飛ぶ。確かに日本での天狗の記述というのは日本書紀に出て以降、ざっくりと武士の時代に飛ぶんだけど、飛び方が激しすぎる。なおこの本では狐としているが、テンゴウ、つまり天の犬であるという伝承は中国には他にもあって近年まで続いていたはずだ。そういえばその本には今も中国では天狗とは犬のことだと認識されていると書いてあったけど、ポケモン好きな台湾人に聞くと天狗は日本から最近やってきた妖怪だというから、正直よくわからないし既に妖怪ウォッチに支配されたのかもしれない。
さて、僕が興味があるところは何故隕石が大陸からやって来る烏天狗になったのかだが、その辺りのことはスルーされている。っていうか天狗の正体は馬糞鳶であってそんな鳥はいないからおそらく鳶の蔑称だろうととか書いているけど、これはノスリの別称であるクソトビのことで和名類聚鈔にも見える由緒正しい糞の鳶な鷹科のノスリの名前である。この本に対する信頼性がどんどん低下していきます。
そして修験道の関わりをさらっとつなげて何故だか密教の真言の説明に入っていき、この辺がやっぱり中二病御用達感があるんだよなと思わせる。何かね、オンアビラウンケンとかページに一杯出てるの。鎌倉時代にさんざんっぱら僧侶にやられて恥ずかしい姿を見せていた天狗の姿はおおよそなかったものにされているように見えるが、僕としてはそのあたりの変遷こそが知りたいわけ。でもこの超能力マシマシな感じの部分を強調した学術論文ってあんまりみないから、その辺は貴重。
『平田篤胤』について。
平田篤胤に妖怪のイメージはあるが、妖怪の人というイメージは正直なかった。というか思ったよりガチに妖怪ムーブをしているように書かれているけど、僕のイメージはこの人は日本の胡乱なものを全部万世一系国の源につなげようとしたというイメージが強すぎて、なんとなく穿った目で見てしまう自分がいる。アカデミックでマニアックなのはむしろ不確かなものをオリジナルに定義づけようとしていたからじゃないかなっていう。そうするとむしろ、胡乱な妖怪は否定する立場の人ではなかろうか。でもある意味この人も夢の中で生きてる類の人だよな。
そういえば稲生物怪録まだ読んでないんだけど、読んでみたい。
『泉鏡花』について。
1ページしかないのは仕方がない。泉鏡花は逆に、幻想的というか人知の及ばぬものが大好きだったんじゃないかなと思う。今で言うところのファンタジー、しかも自分と同じ世界に存在する方向性の現代ファンタジーが好きな人。泉鏡花の文章はとても美しくて好きだ。小説しか読んでなかったけど他の論説的なものも読んでみたい気分になった。
全体的になんていうか帯に短し襷に長しな感じだけれど、中高生がにわかで天辺を取るにはちょうどいい本な気はします。でもこれ、専門家が校正してないと思う。ちょっとオオットと思う表現が多い。小説に使えるかといえば、帝都大戦とかぶっとんだ現代ファンタジーの基礎設定とするにはなかなか大上段だし受け入れられる公約数を少し深めたみたいなスタンスなので、悪くはないんじゃないかと思う。でも真面目に妖怪の本を書こうとするなら警察がやってくるかもしれないレベルじゃなかろうか。
4.結び
この本の一番いいところは挿絵が豊富なところだ! 各ページに絵が載っているものだから、めくっているだけでなんとなく楽しい気分になってきます。
次回は平尾信子著『黒船前夜の出会い 捕鯨船長クーパーの来航』です。。
ではまた明日! 多分!
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