第2話 北山茂夫 日本古代内乱史論 4/29

記念すべき第1回は北山茂夫著『日本古代内乱史論』です。

岩波現代文庫 ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4006000264。

NDC分類では歴史>日本史に分類しています。

まあ日本史の本多いし。


1.読前印象

 日本古代で内乱で僕が一番思い浮かぶのは中大兄皇子と大海人皇子、それから蘇我氏あたりといわゆる大化の改新あたりのイメージ、ついで大和時代の豪族の争いですが、そもそも内乱とつくのであれば統一王朝ができてからでその勢力の内部の騒乱という気がするので、飛鳥時代の印象です。

 さぁ、張り切って開いてみよう~。


2.目次と前書きチェック

 目次をみると、壬申の乱、藤原広嗣から藤原恵美押勝、種継暗殺まで。

 藤原恵美押勝が一発変換ででなくて絶望。

 想像より少し遅い時期だったけれど、思い出した。藤原薬子の話を描くのに種継について調べるために買ったんだ。丁度書いてる範囲が広嗣から平城天皇の乱までなのでその資料です。

 この時代は藤原家と新興王族(天皇)のせめぎあいとその祟りなんかの関係性がとてもおもしろい。なお藤原広嗣は僕の認識では多分うまく嵌められて太宰府に追いやられて騙し討ちされて人を祟った人だ。その前に広嗣が何故大宰府にいったのかというと藤原四家の頭領がみんな長屋王の祟りといわれる天然痘でみんなそろって死んだから。長屋王を嵌め殺したのはもちろん藤原四家なんだけど。そういえば丁度羅生門が荒れ果てていたころの話だ。荒れ果てた理由は寺社仏閣との金の綱引きも大きいので祟りだけとはいえないが、確か当時平城京に住んでた人の半分くらい死んじゃったんじゃないかな(うろ覚え。

 このころの日本は祟りというものがその価値観の大きな要素になっていて、それを防ぐため仏教勢(なお、当時の仏教は宗教というより渡来の先端技術扱いと思う)が護国鎮守のために大仏を建てたりしていたけれど、そのかわり琵琶湖にいたる道に徴用のために男手を欠いて死人がごろごろ転がっていたという話を大友家持の章で書いてSTOPしてることを思い出した。

 続きを書くぞ! 書きたいんだけど! ……今手一杯なのが終わったら。


3.中身

 ざっと眺めると、統治のシステム発展とそれを齎す人的関係を中心に書かれている。

 確かに当時の豪族の集合体から一つの王家が確立するという過程のなかで、様々な勢力者(外交関係の変化を含む)との力関係というのは絶妙なバランス感覚が必要とされたのだろう。そしてその当時の状況を前提に描く当事者がどのように動いたかという視点で説明がなされている本。誰が上に立った時にどのような改革がなされたのかという話に広がる。

 それぞれの立場を前提にした動きで論が展開されていてわかりやすいけれど、なんとなく現代的な視点から語っているふしがある。だからきっと小説の資料にするにはちょっと補助が必要かもしれん。

 まあこれは学術論文の類なので当然そんなことは前提にしていないのだけど。

 これ、あたかも人の行動が本当にあったように具体的に書かれているのだけど(国史でも結構具体的に書かれてはいるんだけどね)、国史というものは勝者が紡いでいることを忘れてはいけないと思うわけ。特に広嗣の乱のあたりは演劇かと思うくらい他の部分と不似合いに具体的な記載が続日本紀になされている。種継のあたりも結構な部分を意図的に削除し、多くが散逸している。そこを妄想で埋めるのが物書きと思う。

 でもこのあたりの時代を描くには背景がわかりやすく描かれていてとてもよき資料。ああ。押勝の中華かぶれのイケイケなあたりとか道鏡の託宣のあたりとかスポット的に書こうかな。書きたいな。余裕がないな。


 さて、壬申の乱の周辺はとても興味があるものの、全部読んでると夜が明けるので、一足とびに種継のページに飛びます。種継と桓武天皇はもともと近しい中だったんだけど、両者がその場に建てたのはやっぱり(主に百川の)権謀術数によるところなのだ。この時代、邪魔なやつは皆殺しにされ、殺されたやつは祟った。好き。

 この聖武天皇から嵯峨天皇あたりまでの呪いの連鎖というか都を遷すほどの恐怖(勢力刷新とか目的は他にもあるけれど)とおどろおどろしさはとてもたまらない。続き書きたい。

 なおこの時代の僕のイチオシは百川と押勝こと藤原仲麻呂。なお藤原恵美までが姓。自分で改名してこの名前つけるとかイケイケ。そういえばこの時代の祟りはなすすべもなく非業で死んだ時に発動するから、熾烈な権謀術数の果てに死んだこの人たちは本人的には本位ではないだろうけれどやりきってスッキリ爽やかなはずなので祟ったりしない。

 あとは橘諸兄とか多分イケオジ。全体的にこの時代の人間は邪魔ならぶっ殺すという底の浅いムーブをする人間が多いのも混迷を深めてて好き。


4.結び

 この時代を書く難しさって、歴史という以前に文化差異が大きいところだと思う。この本はその文化差異はあまり埋めてくれないけれど、当時の主人公たちの行動原理(感情ではなく)を読み解くのにはとてもわかりやすい本だと思いました。

 メモ:薬子の続き描く時に読むこと。ああ続き書きたくなってきたぞ。


 このように雑な感じで進行します。

 次回は吉川弘文館の古代を考えるシリーズ、白井太一郎編『古墳』です。

 今日は初日だから2つ更新してみよう。でもスタートダッシュで飛ばしたらすぐ潰れるから、ほどほどにする。

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