第7話 図書室の聖女様Ⅱ
あれから数日の時が経ったものの。
どうしたものか。
ヒカリはいつものように忙しいので、放課後がだいぶ暇である。
うん暇。
「まあ、行くところもないしな。」
ということで、僕はまた図書室に行くことになった。
あそこには紗奈がいることだし、話し相手にはなってくれることだと思う。
…………。
まああのときのことは片隅に置いておこう。
多分魔が差しただけだと思うから。
そんなこんなで僕は無事、図書室に到着した。
相変わらず図書館のような本棚の数。
ジャンルも古典文学から最新のライトノベル、各種雑誌や新聞、その他多数。
本を調べられるパソコンや、一人で静かに読みたい人向けの個室まで完備されてる。
金のあるところは違いますな……。
「雫。」
僕の近くに紗奈がやってきた。
この前のことは片隅に置いてきたような綺麗な笑顔。
ただただ眩しい。
「やあ、紗奈は今日も図書委員の仕事?。」
「そうなの。」
ちょっと口ごもった返答。
彼女の周りには行き場を失った本たちが鎮座している。
まあ、なんとなく察しはつくが……。
「あの……その……。雫、本を片付けるのを手伝って欲しいのです。」
「うん、わかった。」
まあ、そんなことだろうと思ってた。
それにしてもこの量。
普段ならこまめにやっているであろう紗奈からは考えられない量で心配になる。
一部はカートに乗ってるし……。
(☆)
そんなこんなで僕達は図書室の倉庫に来ている。
貴重な資料からそうでも無いもの。
埃かぶったものから新品同然のものまで様々。
平積みされた本のビル群が状況をよく表している。
「で、どうしろと……。」
「ごめんなさい。少し整理しますね。」
紗奈はパズルゲームのごとく平積みされた本を整理している。
程々に高く積み上がった本は正しく摩天楼。
よう崩れないよなこれ。
「雫はここに座っててください。」
「あ、うん。それより片付けの手伝い……。」
「いいから。」
「あっはい。」
僕は大人しく事前に用意されていたであろう席に座る。
ここまで来てなんだが、紗奈よ。
僕は必要なのか……。
一人で黙々と本を整理している彼女を僕はただ眺めているだけ。
天井に近い小窓があるこの部屋は比較的重要ではない本がいっぱいある。
生きていくには必要だが、歴史的に重要ではないものがここには集まっている。
紗奈にとって僕はどういう立ち位置なのかと、並ばれてる本を見ながら思う。
ヒカリにとっては僕は厳重に管理されたい原本そのもの。
それじゃあ、彼女にとっては?。
「おまたせ、雫。」
「うん、私必要だった?。」
「必要。」
間髪入れずに返答が帰ってきた。
紗奈にとっては僕がこの空間にいることそのものが重要なのだろう……。
「雫……。」
「紗奈?。」
「しばらくこのままでいさせて……。」
「っ……。」
紗奈が静かに僕を抱きしめる。
ヒカリとは違って、優しく包み込んでいる。
「ごめん、雫。我慢出来ないかも。」
「えっ、さn……。」
優しい抱擁はそのままに、紗奈は僕に口付けをする。
ヒカリと違って優しい口付け。
「ん……。」
至近距離で紗奈と目が合う。
寂しいような、後悔したような目。
「ふぅ……。」
僕は優しく抱き返した。
やってしまった子どもをなだめるように。
泣いてる子どもをあやすように。
頭を、背中を、僕は優しくさすった。
「雫……。」
「大丈夫だよ。紗奈。」
今度は僕から紗奈に口付けをした。
最初は少し同様していた彼女も徐々に状況に慣れてしまって、片手は胸に、もう片方は脚に、魔の手を伸ばした。
「いいよね。」
そんな目で見ないで欲しい。
僕は肯定もせず、否定もせず、ただただ紗奈のやりたいようにやらせた。
彼女が僕の身体を優しく乱す。
学校の、図書室の倉庫という閉鎖された空間で僕は……。
(☆)
あんなことがあった後というのは大概、しでかした事に対しての後悔が来るもので。
紗奈はだいぶ落ち込んでしまっている。
「紗奈。私は大丈夫だからね。」
紗奈の落ち込み方はなんというか……。
聖域を犯してしてまった類の後悔に見える。
僕ってそんな重要なポジションか?。
「紗奈!。」
強い呼びかけでなんとか元に戻った紗奈。
先程のを知ってる僕からすればだいぶ引いてしまうが……。
「ごめんなさい。もうこんなことしませんから。」
深々と頭を下げる紗奈。
まあ、僕は彼女の意外性を知れたから良かったのだが。
「大丈夫だよ。私はどんな紗奈でも好きだから。」
僕は紗奈の頭を撫でる。
嬉しそうに、泣きそうになってる彼女はとりあえずこれで閉幕になった。
そういえば、紗奈が僕をどういう立ち位置にしているか気になったが。
多分、聖書かなんかだろうか……。
ないよな……。
ないよね。
聖なる星空のディペンデレ・ハイロゥ アイズカノン @iscanon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。聖なる星空のディペンデレ・ハイロゥの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます