君の推理は的外れで何もかもが間違いだという一点を除けば非常に興味深い
居石入魚
第1話 犯人はボク
犯人はボクだ。
今しがた。
学校の体育館裏で。
同級生を刺した。
包丁で。
胸と喉を。
自首しようかと思う。
動機はなんだったか。
思い出せそうにない。
しかし。
しかし、だ。
動機があったとして。
正当な理由があったとして。
人を刺した事は無くならない。
やった事が消えたりしない。
だから普通に110番して。
普通に捕まろうと考えていた。
「ん。其処征く少年。君はまるで自分が殺人事件の犯人であり、これから自首をしようかとしているかのような表情をしているが。止めておきなさい。若さ故の過ちという事もあろうさ。此処は名探偵である私に任せてみないかい?」
等と言いながら。
両手を広げて彼は近付いてきた。
確かに。
まるで名探偵のようだった。
落ち着いた立ち振る舞いも。
知的な口調も。
突如として現れたヒーローのようだった。
けど違う。
彼はただの用務員さんだった。
彼はただの一般人で。
彼はただの高砂さんだ。
彼はただの中年男性だ。
用務員の高砂さんだった。
「ん。其処征く少年。この私、名探偵の高砂に任せてみないかと言ったのだがね。聞こえなかったかね。ん?ん?」
中肉中背。
メガネ。
てっぺんハゲ。
何故か彼はボクに近付いてきた。
強引にストーリーへ参加する如く。
「ん。其処征く少年。反抗期かい?感心しないな。大人が挨拶してるのだから敬意と礼儀はあって良いのではないかね?ん?ん?」
次はコイツを刺してやろうかな?と。
なんだか不思議な殺意が産まれる男性だった。
ボクは逃げ出した。
兇器の包丁を手にしたまま。
人を刺した事も怖かったけど。
何より。
用務員の高砂さんが気持ち悪かったからだ。
「ん。其処征く少年。待っておくれ。私と共に罪を揉み消そう!友人関係を超越した共犯関係になろう!少年!待っておくれよ少年!ん?ん?」
恐怖しかなかった。
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