おいしい神様は食べられたい
風音
カニバリズムとアイソレーション
ワンナイト・イーチアザー
「ねぇ、本当に大丈夫なの?
ここ、鬼が出るって噂だよ」
草木を掻き分ける音
「大丈夫大丈夫!ちょっとだけだし!」
虫の鳴く声
「それに、あんな所にいてもつまんないじゃん!」
風で揺れる木々の音
「ほ、ほんとに大丈夫なの……?」
それと、2人の少女が話す声。
それしか聞こえない、静かな夜。
そろそろ寝ようと布団に入ったところで、人間の声が聞こえて目が冴えたのだ。
ここは人間が滅多に立ち入らない、森の奥。
人間の声を聞いたのなんて何年ぶりだろうか。
それはさておき、どうにかしてアイツらを帰らせなければいけない。
あたしみたいな優しい鬼ばかりではないのだから。
まぁ、人間の小娘などちょいと驚かせればすぐに立ち去るだろう。
そう、思っていた。
「おい」
「そこの小娘たちよ」
いつもより低い声で、ゆっくりと近寄る。
不敵な笑みを浮かべて、闇から姿を現す鬼。
それだけで、普通の少女なら一生のトラウマ確定だろう。
「ひっ……」
先程まで、もう1人の手を引いて大丈夫だと豪語していた少女が、息を殺すように声を上げた。
「ここがどこだかわかっているのかい?」
追い詰めるように、わざとらしく、迷子の子に優しく声をかけるように
「あぁ、そうか。
食べてもらいに来たんだね?
それなら大歓迎さ」
ニィ、と口角を上げ目を細めて、少し首を傾げる。
「や……いや、ぁ……」
もう、片方は涙目である。
これはあと一歩ってとこかな
「ふふ、ふふふふふ
キミ、かわいいねぇ……とっても美味しそうだ……」
「い、いや、いやあぁぁぁぁぁぁあ」
森中に響くほどの悲鳴をあげながら、1人は走って逃げて行った。
「……おや、キミは逃げないのかい?」
さっきから、微動だにしない少女。
綺麗に整った顔で、あたしを上目遣いで見つめている。
もしかしたら気を失っている可能性もある。
が、そんな心配は杞憂だった。
「……あの」
むしろ、別の心配をすべきだったんだ。
「私を、食べてくれませんか」
「……………………は?」
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