11頁 呪術の猶予
「わぁ! 二人のなれ初めってそんな形だったんですねっ」
「ええ……まぁ」
一花さんは嬉々として私の話を聞いていた。
彼女の事件から数日後、一花さんがアルバイトで来ていた。
「というか、5月の頃に出会ったんですね、じゃあ今6月だから一か月経った、と」
「はい、そうなります」
「胸元の呪術って……」
「ええ、まだありますよ。私は彼の情報を探っているんですが……中々難しいですね」
「猶予は?」
「……残り一年、来年の6月まで、ですね」
「え!? 期限、短いじゃないですか!!」
一花は声を荒げる。
彼女の反応は自然だ、出会ったばかりの相手が、残り一年の寿命というのは驚きは隠せないだろう。
「絶対に呪術師は見つける……我が番は死なせない」
「珀……」
真剣な面持ちでソファに手を置く珀。
綺夜子は少し、喜色が滲みそうになる頬を無理やり唇を噛むことで誤魔化した。
「……わぁ」
一花は口に手を当て、二人のやり取りに頬を赤らめる。綺夜子は素直じゃないが、珀も綺夜子が心から好いているのが目に見えて感じられた一花だった。
「では、呪術師を探すのはまた今度にしましょう。今日は、お互いの思い出話に花を咲かしませんか?」
「あ、いいですね!」
綺夜子の救助を要求している視線を感じた一花はあえて返答する。
にやにやと口角が自然と上がりそうになる一花に綺夜子は不思議そうに見つめた。
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