「ヴォルクス」古代の呪い魔法 主人公が凡人なので、この世界は壊滅しました

御稀幻妖(ゴキゲンヨウ)

シド・オーカーは凡人である

僕の名前はシド・オーカー。


突然だけど、君はこれまでの人生で、後悔した出来事はあるだろうか?


僕はある。

後悔という2文字では、とても足りない。


およそ10年程前。

僕は僕のせいで、大切な幼馴染を亡くしてしまった。

それは、隠れ遊びをしていた時だった。


誘ったのは僕だ。


何処を探しても、隠れたあの子を見つける事が出来なかった。

困った僕は泣きながら両親に助けを求めた。

両親は村中の人達に声をかけ、皆で一斉にあの子を探した。

何時間も…何日も…。

それでも、彼女は見つからなかった。


やがて、彼女はモンスターに遭遇したか、或いは事故に巻き込まれたとして、死んだ事になった。

細やかな葬儀が行われ、僕はずっと泣いていた。


もし、時が戻せる魔法が存在するなら。

僕は間違いなく、あの日のあの時に戻り。

絶対に、別の遊びをあの子に提案する。

それが出来るなら、僕は僕の全てを差し出すだろう。

だけど、実際にそんな魔法は存在しない。


罪悪感に心が押し潰されて、死にたくなった日は何度もあった。

家に閉じ籠り、塞ぎ込み、命で償おうとした事も。

だけど、僕の両親や幼馴染の両親が必ず現れて、僕を叱り、諭して、慰めてくれた。


当時は不思議に思ってたけれど、幼馴染を亡くした僕の事を、ずっと陰から見守っていてくれたんだろう。

何より、僕の心に一番効いたのは…「そんな事をしても、あの子は喜ばない」という幼馴染の両親の言葉だった。

「あの子の為に死ぬ覚悟があるのなら、あの子の為に生き続けて、立派になって欲しい」と言われた時は、また大泣きしたっけか。


まぁそれでも、未だに僕は心の奥底では、僕自身の行いを許してはいない。

とはいえ、両親達にも亡くなった幼馴染にも、生き続けると僕は誓いを立てた。

なので僕なりに、どうすれば良いか考えた結果。

アーテルシア王国の直属にある、アーテルシア魔術学院へと入学する事に決めた。

その理由は幾つかある。


一つ目は、魔法だ。


魔法を学べるという事は、いつか時を戻す魔法を僕自身が開発出来る可能性があるという事だ。

今のところ、そんな魔法を研究してる人はいないし、誰も使える人はいないけど。

諦める訳にはいかない、だろ?


二つ目は、お金が稼げること。


魔法使いは、この世界において貴重な戦力だ。

冒険者になってダンジョンに潜り、モンスターを倒し、貴重な素材やアイテムを入手できる。

危険もあるけど、やりがいもある。

魔法使いはどんなパーティーでも、絶え間なく募集している。

それに、もしかすると、ダンジョンの奥深くには、お宝が眠っていて、時間を戻せるアイテムだってあるかもしれないよね。


三つ目、一つ目と二つ目の良いとこ取り。


この国は他の国に比べて、かなり魔法に力を入れている。

貴族主義な国家が多い中、実力主義を謳っているのがアーテルシア王国。

直属にアーテルシア王国の名前を付けた魔術学院があるのはその為だ。

この学院で優秀な成績を収めた者には、王国直属の魔導軍の幹部クラスになれる。

王国の技術発展の為、魔法を研究し、自分のやりたい事が国の予算で自由にできるらしい。


僕にとって、このアーテルシア魔法学院の入学は、正に、夢を現実にする為の大いなる一歩となる訳さ。


「…あー。君、魔法の適正ゼロみたい。残念だったね」

…え?…ウソだろ?

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