三題噺 【ホームパイ】【裏切り】【おたまじゃくし】

@kain_aberu

第1話

ホームパイを食べながら、僕はおたまじゃくしを見ていた。

 なぜ、そんな事をしたくなったのか?

 自分でも、それは解らない。

 ただ、家の近くの公園に来たら、いつの間に産んでいたのか、おたまじゃくしが池の中にいた。

 僕は無言で、そいつらを見ていた、そうしている間は、毎日のイヤな事を忘れられる。

 僕は、今の生活がキライだ。

 つまらない学校、バイト、腹の立つ日々、このおたまじゃくし達みたいに、ただ池を泳いでいられればいいのに。

 そんな事を考えていると、ふと、たくさんのおたまじゃくし達の中に、離れて泳いでいる二匹がいる事に気づいた。

 仲間達は遠い場所を、ふらふら泳ぐ二匹、その二匹は、随分ふらついてはいたが、ぴったり身体を寄せ合い、お互いを支え合っているみたいだった。

 僕は、なんとなくその二匹を見ていた、良いな、と思いながら。

 あんな風に、たった一人でいい、側で支えてくれる相手がいてくれれば、僕の毎日も、それなりに楽しくなったのに。

 そんな風に思っていたと来だった。

 寄り添っていた二匹のうちの一匹が、突然相手から離れ、多数が集まる方に行ってしまった。

 残された一匹は、それでもさっきまでの相手を追いかけたが、仲間達は見向きもしない。

 急に腹が立った、僕は手に持っていたホームパイを、多数の群れに投げつけた。

 仲間を、裏切るな。

 怒鳴り付けながら、僕は池を離れた。

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