第3-24話 剣聖動画プレミアム公開
兎耳族の門番を怖がらせてしまった謎の【バニーガール剣聖】――月野餅不和吐露師匠の名誉挽回の動画を撮影する事になった炎の仮面冒険者。
「まずは師匠の動きをどう映像に捉えるか?」
剣士に必要な要素として動体視力――『目』を鍛えなければいけない。
ビジョントレーニングに関する情報も調べてみたがあれで師匠の動きに対応できるのかは微妙だ。
「【海咲ちゃん】は師匠の動き、ついていけてる?」
クランマスター秘書の戦闘用3D-AI【海咲ちゃん】に聞いてみる。
『――眼部を100fpsの
「100分の1秒のフレームレート解析で人影が見えるレベル……」
『――なので防衛省ダンジョン対策支部より100万fps解析が可能なカメラを拝借してきました』
「おお」
撮影機材はなんとか調達できたようだ。
「兎耳族の皆が師匠の剣術を真似をしたくなるような動画を作る必要があるんだし、やっぱり撮影の舞台は彼らにとって身近な原宿113層かな?113層に出てくる魔物を師匠の剣術で倒す映像を見せれば、現状を打開できるかもしれない」
そういう訳で原宿ダンジョン113層にて動画撮影を開始された。
「ふむ。木刀でこの階層を魔物を倒せと」
全身兎姿の剣聖は木刀をまじまじと見つめる。
「いきなり【無刀流】を披露されても皆、???になっちゃうんで」
「まあ剣の材質差で勝負が決まってしまうようでは剣士失格だしな」
この人、木刀でオリハルコンの剣、ぶった切るかもしれないと思った炎の仮面冒険者。
「あっ。あそこにグリフォンが」
Bランク相当の魔物である
「アレを倒せばいいんだな?行ってくる」
その瞬間、炎の仮面冒険者と【海咲ちゃん】も同時にグリフォンへ迫る。
【剣聖】と同時に動く事で速度差を少しでも減らせれば姿を捉えられるかもしれないと思っての行動だ。
(うわ。これでもぼんやりとした影しか見えん)
「倒したぞ」
見ればグリフォンの翼の部分を綺麗に斬り落としている師匠がいた。
両翼を奪われたグリフォンは【斬られた】感覚により恐慌状態に陥り、ただその場で震えていた。
「獅子が震えてる……」
真似したくなる剣術動画を撮るはずが魔物虐待みたいになっていた。
「グリフォンの翼は『手羽先』として美味と聞く。持って帰ろうか」
「討伐対象チェンジ!!」
そんなこんなで色んな魔物と対決する師匠の動画を撮り続けた。
「どうすれば師匠の動きを目で追えるようになるのか?」という問いを直接師匠に尋ねてみると
「――自身の身体を素早く動かしながら『目を慣らす』しかないのでは?」というふわっとした解答が帰ってきた。
焔霊剣皇イルフェノに相談してみると
『――あの速さを実現すればいいのね?』と言われた。
『――【炎爆瞬移】』
「うわあああぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!」
炎の爆圧で仮面冒険者の身体を瞬間移動させる精霊技が誕生した。(※尚、止まれない)
「おお。貴君なら精霊の力による疑似【縮地】は可能だと思っていたが、既に体現するとは」
「どうして剣聖と呼ばれる人物が目を閉じている事が多いのかわかった気がします。【目を開けていられない】」
「その解釈は多分違うと思う」
剣聖から否定された。
――数日後、炎の仮面冒険者によるダンジョン配信チャンネル【炎麗黒猫のマスターですがこれを攻略法にされても困りますチャンネル】にて。
【炎の仮面冒険者、剣聖に弟子入りしてみた】動画がプレミア公開される事が発表された。
動画公開中、コメント欄も解放されていた。
:なんだなんだ剣聖弟子入り動画って?
:配信じゃなくて動画なのか?
:わざわざプレミア公開するんだから多分凄いのきそう
:カウントダウン始まった。あと56秒
:さあ何が来るやら
画面に映ったのは兎耳族姿の炎の仮面冒険者と全身兎ちゃん部屋着な謎の女性だった。
:いきなり不審者が映りこんでるぞ
:え?この女の人が【剣聖】?
:完全に撮れ高狙いで師匠選んでて草
「皆さん、おひさしぶりです。最近は配信出来なくてごめんなさい。今回は動画投稿という形にさせていただきました」
最近は【魔族】対策で配信出来ていなかったことを詫びる仮面冒険者。
:まあ気にせんでええよ
:せやせや
:日本の為に頑張ってくれてるのは知ってるから
「今回訳あってある剣聖の方に剣術を習う事にしました。それが隣にいるこの方――月野餅不和吐露師匠です」
:つきのもちふわとろwwwwww
:このキャラの濃さなんなん!?w
:こういう人材、どこから連れてくるの?
:向こうからやってくるんだろ
:どう見ても兎好きケモナー冒険者
「初めまして。月野餅不和吐露という者だ。正体不明の剣聖っていう事で詮索は御勘弁願いたい」
「今回、師匠の凄さ、そして【月弦兎飛無刀流】の素晴らしさを兎耳族の皆、知ってもらいたい動画を作る事にしました」
:【月弦兎飛無刀流】とか初めて聞いたんだが
:我流剣術っぽいな
:兎耳族の皆向け動画をプレミア公開するの?
:俺達に見せてなんかアドバイスをもらいたいのか?
画面の上部に注意書きのテロップが表示される。
(※これから見ていただく動画は基本【100倍以上遅くしたスローモーション映像】です)――と。
こうして謎の剣聖によるパフォーマンス動画が始まった。
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