第2-5話 仮面冒険者炎さん、現場にはいられましたー！
とある東京都内某所の撮影スタジオ。
本日ここで炎の仮面冒険者にとって初めてのCM撮影が行われる。
「仮面冒険者炎さん、現場にはいられましたー！」
若い撮影スタッフの声掛けとともに登場したのは透明な球体ケースの中に入った炎の猫だった。
今日は特別に付添いとして【黒猫ハーバリウム】マネージャー野河南月も同行している。
「撮影が開始されるまでこちらで御寛ぎください。テーブルのお菓子やお茶はご自由にどうぞ」
（その姿でお菓子食ったりお茶飲めんの？）と思いつつも若手スタッフは2人にそう伝え、一礼しその場を離れる。
次に仮面冒険者の前に現れたのは印象の良い恰幅の良さでもうすぐ還暦を迎えそうなスーツ姿の男性だった。
「初めまして。私、株式会社羽呂馬の代表取締役社長の秋永と申します。この度は我が社のCM出演依頼を快諾していただき誠にありがとうございます」
「初めまして。仮面冒険者――炎です」
「【研能】マネージャーの野河と申します。本日付き添いをしてます。」
挨拶を交わした後、炎は恐る恐る秋永に尋ねる。
「あの……本当に今日此処で撮影するだけで1億円なんて金額を頂いていいんですか？」
CM出演料としては最高評価額と言える金額に恐縮してしまう炎。
「ええ。勿論提示額に嘘はございません。なにせ我々の業界では普通にCMを作ってメディアに流してもうんともすんとも言わない状態が続いておりまして
日本初の100層踏破者である仮面冒険者殿に出演していただくくらいのインパクトが無いと勝負にならんのです」
「御社の事情はあの熱意あるDMを読ませていただいて勿論把握しているのですが」
「仮面冒険者殿はその報酬を冒険者にならざるを得ない少年少女の為の奨学金基金にプールするとお聞きしました」
「ええ。その言葉に嘘偽りはありません」
「でしたら社会貢献にも繋がり我が社のイメージアップにもなりますし1億円お支払いしても問題ないと取締役会でも満場一致の採決が取れておりますので御心配なく」
「報酬を頂く以上頑張らせていただきます」
「完成したCM楽しみにしています。では」
顔合わせを済ませた秋永はその場を後にする。
次にやってきたのは撮影監督の男性だった。
「本日のCM撮影を任されている撮影監督の山下です。演者の方々も揃いましたので10分後にカメラリハーサル、その後本撮影開始とさせていただきます」
「よ、よろしくお願いします」
「仮面冒険者さんはこのような現場は初めてでしょうから演技負担の少ない撮影プランを用意させてもらっています」
「ご配慮感謝します」
「では10分後にカメリハから開始しますので」
「よろしくお願いします」
こうして撮影が始まり、これといったアクシデントもなく無事撮影終了となった――。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『――この炎であなたたち家族の暮らしに寄り添い続けたい――。株式会社羽呂馬』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【炎の雪】仮面冒険者炎を語るpart88【CMデビュー】
：名無しの冒険者
おいおいどういうことだよ。日本初の100層踏破者のCMデビューが
ガスコンロのCMって。仕事選べる立場だろ
：名無しの冒険者
仕事選んだ結果がガスコンロだぞ
：名無しの冒険者
【仮面冒険者――炎の力が必要不可欠な依頼から優先して受けさせていただきます】という基準で選んだらガスコンロが最初のCMになったっていう
：名無しの冒険者
たしかにガスコンロのCMをバズらせるなんて日本初の100層踏破で話題の炎の仮面冒険者にしか出来ん
：名無しの冒険者
かつて毎日ニュースになってたっていうベーブ・ルース並みの記録を打ち立てた日本人メジャーリーガーでもガスコンロは無理だわ
：名無しの冒険者
ガスコンロなぁ。最近は魔石コンロに押されてるもんなぁ
：名無しの冒険者
冒険者なんて皆、魔石コンロでガス代払わないようにしてるだろ
：名無しの冒険者
炎の仮面冒険者、原宿の次はガスコンロを救う
：名無しの冒険者
あの冷蔵庫姿を見た家電メーカーからのオファーがたんまりきてそう
：名無しの冒険者
逆に冷蔵庫メーカーは絶対オファーしないっていう。燃えてる冷蔵庫なんてCMに出せん
：名無しの冒険者
【悲報】炎の仮面冒険者さん、冷蔵庫界隈から出禁
：名無しの冒険者
うん。ダメージゼロだな
：名無しの冒険者
CM出演っていっても家族役の演者さんたちが幸せそうにキッチンで料理して食卓でそれを食べてるシーンの背景に炎の猫がいるだけだぞ？
：名無しの冒険者
そもそも猫役ですらなくない？微動だにしてないんだけど
：名無しの冒険者
ハーバリウム役か。インテリア役で出演した人初めてじゃね？
：名無しの冒険者
あの仮面冒険者はとにかくバズらせなきゃ死んでしまう病気かなんかなの？
：名無しの冒険者
もしかしてあれか？『ハハハハハッ！わらわと契約したければ楽しませてみせよ。SNSをバズらせ続けるのじゃ！』
：名無しの冒険者
えらい現代的な精霊だな
：名無しの冒険者
100層踏破できるだけの力を得る為にはそんな代償がッ！？
：名無しの冒険者
とにかく次の配信ではまずガスコンロ姿で登場するの確定したな
：名無しの冒険者
あー次の配信いつだろな
：名無しの冒険者
ちょっとまって。俺とんでもない事に気づいたんだけど……
：名無しの冒険者
なんだよ？言ってみ？
：名無しの冒険者
あの人、自分からダンジョン配信した事なくない？
：名無しの冒険者
ΩΩΩ< な、なんだってー！！！
：名無しの冒険者
じゃあもう配信見れないの？
：名無しの冒険者
ダンジョン配信してください！！って【＠炎麗黒猫の代表の猫】に皆で凸るしかないんじゃね？
：名無しの冒険者
行くぞお前ら凸撃だあぁぁぁぁ！！！！
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます