第20話 冷蔵庫だから○○様?
「はは……なんだよこれ」
95層のフロアボス部屋を前に東京最大クラン【東魔天譴】のマスター・嗚桜真月は呆然としていた。
:開いた口が塞がらなくなってるじゃん【天譴】
:うーん。踏破ガチ勢には刺激が強すぎたらしい
:S級魔物2000個体に対して食べ物当てクイズが始まるんだもんな
:うますぎる棒とか駄菓子まで登場したぞ
:わかりにくいのは正解の炎文字まで登場するっていう
:【悲報】S級魔物さん、ひらがなに屈する
「気をしっかり持て嗚桜。コイツは俺達とは桁が違う」
:防衛省大将が桁が違うと認めたよ
:実際大将はS300が限界で、アルパカが既にS3000討伐だからな。本当に桁が違う
:S300、S3000とか冒険者の戦闘能力を計る指標になりそうだな
:S530000とかホントにありそうなんよこの冷蔵庫
:
:……。
:……。
:……。
:フリー〇様ネタとか確実にSNSでネタ画像作られて拡散されるのきたじゃん
:そしてまたエゴサして凹む冷蔵庫
:正直茶化していじって機嫌損ねたら日本の損失になる存在にまでなってきてる
コメント欄とは対照的に3人は95層のフロアボス戦への臨戦態勢を整えようとしている。
「それで95層のボス部屋には何が出てくるんだ?」
「不規則氾濫の最中だから何が出てくるかわからないですけど通常時は――」
炎の仮面冒険者は何故か言葉を止める。
「――床が敵でした」
「床だと?」
:今なんで溜めたの?
:フロアボスの発表の瞬間に一拍おくの配信冒険者動画見すぎよね
:床が魔物って何?
「床が襲い掛かってくるというか足を踏み入れた瞬間、引き摺りこまれ喰われてしまう部屋ですね。床というか沼の魔物って言い方が正しいんですかね?」
:沼の魔物って足場ないって事?
:足場ないボス部屋て
:確実に初見殺しに来てるじゃん
「眼を奪い、足も奪う部屋って事か」
野心鬼が神妙な面持ちでそう呟く。
「その瘴気感知が出来るスコープを着けて部屋に入れば床が異常だって事にすぐ気づくかもしれないですけど、そう認識した
暗闇の中、瘴気の沼に引き摺り込まれる場面を想起したのか野心鬼の背筋に冷たい何かが走った。
「S級2000ヤッた後に待ってるのがそんな部屋なんて無理して95層攻略しなくて良かったよ」
嗚桜はスポンサーに急かされるままに苦楽を共にしたクランの仲間達を死なせていた未来を選ばなかった事を誇った。
もっとも東京最大クラン【東魔天譴】は資金出資を受け入れる必要のないくらい冒険者報酬を稼いでるのでスポンサーからの意向も大した強制力のない状態を維持している。
「その瘴気感知スコープ欲しいな。くれよ大将」
嗚桜は階層踏破に必要不可欠と判断したミアズマスコープを野心鬼にねだる。
「お前にやるなら……そうだな1個5億払え」
「5億かよ」
「取れるヤツから開発費ありったけ分捕ってこいってコレの開発者から言われてんだよ」
「5億か。さっき俺が討伐した黒竜素材でいいか?」
「商談成立だな」
互いに笑みを浮かべた野心鬼と嗚桜。
:5億即決かよ
:国内8大クランのマスターだからな
:アルパカの【炎麗黒猫】が本格始動したら国内8大クランって呼称、どうなんの?
:それはこの配信終わってから論争するべ
「話が脱線してすまない。ボス討伐に話を戻そう」
「はい」
「床が魔物って事なら壁にコイツを突き刺して高みの見物させてもらえばいいのか?」
嗚桜は雷槍を握る右手に力を込める。
「今は不規則氾濫の最中なので『床だけが敵』とは思わない方がいいかもしれません」
「左右の壁、天井も魔物かもしれないって事か?」
「先入観は冒険者を殺す――。わかった気を付けよう」
「俺はこのダンジョンスーツで浮遊行為も可能だが嗚桜はどうすればいい?」
野心鬼の問いに対し炎の仮面冒険者は逡巡したあと、言葉を発した。
「じゃあ俺がでっかくなるんで2人はこの冷蔵庫の中に入ってもらっていいですか?」
突然の提案に野心鬼と嗚桜は目を見開いた。
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