第8話 仮面冒険者再び

綾覇らの前に現れたのは『アルパカ男』ではなくアルパカそのものだった。


炎のアルパカを前に綾覇らは戸惑う。


:またも想像の斜め上どころか大気圏にロケット発射する展開来たんだけど

:仮面冒険者アルパカ、期待を裏切らない

:またも綾覇ちゃん達困惑してるやん



「久しぶり。清楓ちゃんの要望に甘えて来てしまった」


:炎のアルパカ、普通にしゃべる

:やばいわこの配信カオス



「仮面冒険者アルパカさんですよね?」

「ああ」

「ど、どうしてアルパカの姿に?」


綾覇の問いに対し、一拍置いてアルパカはこう答えた。


「オトコが配信に映るのは君達のファンの人達もやっぱり嫌だろうなと思って」


:視聴者への気配りが出来るアルパカ

:だからって普通の人はアルパカに変身できたりしないんよ



「俺も女の子達が仲良く配信してるところに男が混じってくるの嫌な方だから」


:視点が完全に男視聴者で草

:この人もガチ恋リスナーかもしれん

:アルパカ、ユニコーンだった

:字面だけだと意味不明



「それに頭だけアルパカはキモいってコメント多かったし……」


:メンタル弱そうだぞ。このドラゴンスレイヤー

:エゴサして凹んでるの草

:この一ヵ月どんな気分で過ごしてたんだろうな?

:布団にくるまって叫んでそう。もしくはダンジョン潜って魔物に八つ当たりしてそう

:DV(ダンジョン・バイオレンス)か。魔物も災難だな



「この姿なら【黒猫ハーバリウム】の配信の世界観も崩さずに済むと思う」


:黒竜をアルパカ頭で瞬殺した人間が配信の世界観語り出して草

:急にプロデューサー目線になるのがヘビーリスナー感出てる



「俺の事は彼女……龍美ちゃんの使い魔くらいに考えてくれればいいから。基本何もしない。後方警戒くらいはするが」

「私の使い魔?そ、そんな恐れ多いです」


龍美は突然の指名に慌てふためく。


:Sっ気クールビューティーりゅみちゃんもアルパカの前だと翻弄されっぱなし

:そんな可愛い一面も見れるのは配信の醍醐味



「元々私も龍美ちゃんもさやちゃんも後衛職なのでアルパカさんが最後列に控えて下さるのはとても心強いです」


治癒や支援能力に長けている聖女職クラスの碧偉はアルパカ加入による戦力的補強を純粋に喜んでいた。


「私達は別にアルパカさんが人間のままでも全然構いませんよ?アルパカの姿のままじゃ不便じゃないですか?」


:碧偉ちゃんアルパカ男モードがいいのか?

:そりゃ黒竜瞬殺した真紅剣士モードの印象が強烈だったんじゃね?


「まあ。この姿の方がいいかな。アルパカのままの方が深刻な頼まれ事とかされないだろうし」

「そ、そうですか」


:この人やっぱ本当は表舞台に出て来たくはなかったんだろうな

:そりゃ竜種でも脅威度高いブラックドラゴン瞬殺出来るなんて知れたら指名依頼の嵐だもん。しかも国レベルから

:あの50層イレギュラーがなかったら女冒険者パーティーの配信見ながら宅飲みし続けてたっぽいな

:言葉通り『人間やめた』人初めて見たわ



「分かりました。では今日から一緒に配信活動させていただきます。本日残りの探索予定は池袋36層-40層の踏破です。アルパカさんはパーティー最後列での後方警戒お願いします」

「了解した」



綾覇らは休憩時間を終わらせ、36層へと進む。



:いよいよ始まるぞ。【黒猫ハーバリウム第2章withアルパカ】が

:後方彼氏面ならぬ後方アルパカ面な冒険が今始まるッ!!

:絶対前から考えてただろその言い回し


:何層まで潜れるかな?

:まあアルパカ次第だよな。

:後見冒険者からどこかのタイミングで本格参戦するんだろうけどそれでも黒猫ちゃん達を危険に晒すところまでは潜らないだろうな


:36層の探索始まったけどアルパカ映ってなくね?

:撮影ドローンは事前登録した冒険者データを元に動いてるからな

:あれ炎のアルパカって登録できるん?

:無理じゃね?

:たしか人間の体内温度に反応する仕組みじゃなかったか?

:【悲報】アルパカ、ドローンに映らない

:普段の黒猫配信と何も変わらなくて草


:でも前の配信はしっちょう碧偉ちゃん龍美ちゃんが振り向いて後方警戒してたけど今日は全然こっち向いてくれないな

:たしかに……なんか寂しいな

:どんどん前に進んでいくな。35層までの進行と比べても全然違う

:仮に魔物に挟まれてもどうにかしてくれる人間……いやアルパカがいるからな


:あっ清楓ちゃん振り向いてくれた

:なんか驚いてるぞ?

:碧偉ちゃんも何かに気付いたぞ

:龍美ちゃんもあんぐりしてる


綾覇たちは異変に気付き、進行をやめ後方へ向き直る。



:おいおい映ってないところで何が起きてる!!


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