推しのダンジョン配信者を死なせたくないので炎の仮面冒険者始めました~日本初の100層踏破者は毎回コメント欄がツッコミの嵐
煌國粋陽
第1話 女性配信冒険者パーティー・黒猫ハーバリウム
日本、いや世界中にダンジョンが誕生するという驚天動地の天変地異があったのは既に33年前。
魔物との闘いを余儀なくされた人類は即座に対応し、冒険者という職業を確立させた。
ダンジョン内の情報を共有するための撮影ドローンも進化を繰り返し、低価格化にも成功した今では一冒険者につき一台支給される時代だ。
そしていつしか支給された撮影ドローンで動画配信を始める冒険者も現れるようになる。
原宿ダンジョン47階層――。
「じゃあ今回は47階層からの攻略配信を始めたいと思います」
配信ドローンに向かって溌剌とした挨拶をしたのは20歳くらいで長い黒髪を後ろで束ねた女冒険者。
:綾覇ちゃん来たー!
:待ってました!!
:黒猫ちゃん達は今日も可愛さ限界突破
黒猫のような切れ長の瞳に整った顔貌の彼女の名は
女性配信冒険者パーティー【黒猫ハーバリウム】の中心メンバーだ。
彼女の後ろに控える薄桃色の髪の淑やかな女性・
更にオレンジに近い栗毛色の髪をお団子にしている女の子・
彼女達はダンジョン内での戦闘中の咄嗟の誤認識を防ぐために、自らの髪色を最新染料で派手にしていた。
4人とも周囲を惹きつけるルックスで彼女らの美貌目当てに集まった視聴者も多い。
:やっぱ碧偉ちゃんのほんわかした聖女然とした雰囲気たまらん。浄化される。
:いやいや龍美ちゃんのSっ気美女っぷりの方が俺にはたまらん
:いやいやいや清楓の天真爛漫さこそ日本が誇る世界遺産よ
配信コメント欄見れば彼女達それぞれに既に固定ファンがついているのがわかる。
世の男どもの好みをリサーチして組み合わせたかのような女冒険者パーティー【黒猫ハーバリウム】は配信活動を開始して3か月足らずで数十万のチャンネル登録者を獲得した。
冒険者パーティーとしての実力も悪くなく新進気鋭の存在と言える。
:前方に見えるの
:だな。遠目に見てもデカい。その場にいたら俺ちびる
:大の大人がオムツ必要になるのがダンジョン配信
「GURUUUUUUUU……」
砂色の巨岩を全身に纏った巨大な魔物が彼女達の前に現れた。
3つの犬頭は獲物を前に紅い目をぎらつかせ、早く喰い千切りたいとばかりに涎を垂らす。
:普通のケルベロスは30層のフロアボスだからな。上位種
:だがしかぁし!!黒猫ちゃん達の敵ではないわ!!
ロックケルベロスはその巨体の重量を感じさせない突進で彼女達に迫る。
「イムイム!!!ブロックお願い!!」
清楓がそう懇願すると一匹のスライムがむくむくと瞬く間に巨大化し、ロックケルベロスの突進に対し真正面からぶつかった。
彼女からイムイムと呼ばれるスライムはロックケルベロスの突進による衝撃を見事に受け切っている。
:出たー!清楓ちゃんのスライムタンク!!
:女冒険者パーティーの場合、一番困る盾役をテイムしたスライムに頑張ってもらうという画期的なパーティースタイルが黒猫ハーバリウムの魅力ですね
:解説班乙
:イムイムが魔物を受け止め切ったらもう勝ち確なのよね。このパーティー。
『勇敢なる彼女に力を――聖力付与』
『魔を切り裂く風よ我に力を――風衝斬』
『我が魔力よ敵を穿ち破壊せよ――闇槍弾』
光り輝く魔力を纏い、自身の愛剣に風魔力を付与した綾覇は巨大な岩肌などものともせずロックケルベロスの頭一つと前脚2本を斬り落とす。
「GUGYAAAAAA!!!!」
悲鳴に近い咆哮を遮るかのように漆黒の槍が真ん中の犬頭を突き破った瞬間爆ぜた。
そうしてロックケルベロスはただの岩の塊と化した。
:碧偉ちゃんの聖魔法バフに綾覇ちゃんの魔法剣で魔物の四肢を一刀両断、動けなくなった所で龍美ちゃんの魔法でトドメ
:トドメというかもはやオーバーキル
:自分がトドメ刺せないと『私だけ仕事してない』って拗ねるんだよな龍美ちゃん
:可愛いすぎんよこのドSビューティー
「47層ロックケルベロス初討伐出来ました。これに慢心する事無く攻略を続けたいと思います」
撮影ドローン越しの視聴者に軽く一礼した綾覇は向き直り、先に進む。
:礼儀正しいし【研能】は流石大手配信冒険者事務所って感じするわ
:【研能】じゃなきゃこんな色々レベル高い女冒険者パーティー組めんわな
:こんなパーティー出てきたらそりゃバズるよ
大手配信冒険者事務所――研能。
黒猫ハーバリウムの生みの親であり、他にも著名な配信冒険者を多く抱えているプロダクションだ。
綾覇、碧偉、龍美、清楓は厳正なオーディションを突破してみせた才媛と言える。
些か凛々しすぎる彼女らの名前は配信冒険者用の名ではないか噂される。
:今は4人全員CランクだけどBラン確実でAランクまで行くかな?
:とりあえず50層のフロアボスを苦戦せず討伐出来たら冒険者協会でもBランクに昇格させて貰えるらしいし
:この配信が実質昇格試験っていう
撮影ドローンが普及した現代日本では冒険者ランクの昇級試験もダンジョン内での映像提出のみでも昇級が認められるようになっている。
:50層ってどんなフロアボスだっけ?
:マンティコアだろ?
:人面でライオンの胴体で蝙蝠の翼に蠍の尾の合成魔獣だっけ?
:ほぼキメラだな
:毒尾にさえ気をつければ黒猫ちゃん達なら踏破出来るだろ
:物理攻撃はほぼイムイムが受け止めてくれるしな
綾覇たちは48,49層も難なく踏破してみせ、いよいよ50層のフロアボスとの対峙を迎えた。
「いよいよ50層のボス戦です。フロアボス・マンティコアの対策は十分してきたので視聴者の皆さんの期待に応える戦闘を見せれるよう頑張ります」
:対策って解毒ポーションとか?
:俺黒猫ちゃん達が50層クリアした瞬間スパチャ投げる
:抜け駆け禁止
:イレギュラーさえなきゃ大丈夫っしょ
:フラグ建てんなよなにかあったらお前のせいだかんな?
「では黒猫ハーバリウム、フロアボス戦行きます」
綾覇たちはそれぞれの戦闘体勢に入る。
荘厳な大扉は彼女達の戦意を確認したかのように地響きとともに開いていった。
彼女達は歩を進め、一般的な体育館ほどの広さの空間に完全に入った瞬間、大扉は再び動き始め閉まり始める。
:退路を塞がれるボス部屋やっぱ怖いわ
:マンティコアさんどこー?薄暗くて見えん。
:扉が完全に閉まると何故か部屋が明るくなるボス部屋の不思議
:あっ明るくなり始めた
:ちょっと待て?
:なんだよあれ……
「嘘でしょ?……」
「なんで?……」
「そんな……」
綾覇たちは
:まだ50層だぞ?なんでアイツがいるんだよ!?
漆黒の鱗を全身に纏った災厄級の魔物がそこにいた。
「ブラックドラゴン……」
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