空はどこだ!

松井みのり

第1話

 むかしむかし、ある村にお侍さまがおりました。その侍の名前は宗彦むねひこと言いました。宗彦は心優しい侍でしたが、彼には一つだけ悩みがありました。

 いつの日にか、出会った『くうりの少年』がこの村の不運をすっかり治めてしまったことです。もし、また不運が連続したら『くうりの少年』を探さなければいけない。そう思うと、宗彦の悩みは広がり続けるのでした。


 悩み続けた末、宗彦は自分自身が空を狩れるようにすればいいと考えました。

 宗彦自身、くうが何かも知りません。また、空を知る方法もわからず、もちろんくうを狩る方法なんて、一つも想像がつかないのでした。唯一わかっていることは、少年の胸にはポッカリと穴が空いていたらしいということでした。


 とにかく、この村には空を知る方法もありませんでした。

 そこで、宗彦は村の人々に二ヶ月間の旅に行くことを告げにると、故郷を離れました。


 一週目は、宗彦は近隣の村を歩きながら、空というものが一体何なのか、尋ねました。しかし、その答えは誰も知らないどころか、くうなどは知らないと突っ返されてしまいました。


 二週目は、森を抜け、古い寺院を訪れました。くうとは何かを尋ねても、禅僧たちは素知らぬ顔をしていました。そこで彼は禅僧たちと共に座禅を組み、心の静寂を探求しました。


 三、四週目、山々を越え、草原を歩きました。自然の中で、彼は空の静けさと広がりを感じることにしました。しかし、空一面を眺めても、くうが何かは理解できません。


 五、六週目、再び山々を越えました。もうそろそろ、故郷へと戻らなければなりません。自分の小ささを感じ続けました。


 七週目には、とうとう宗彦は自分の刀を胸に突き立てようかと考えました。なんとなくくうを感じましたが、それは少年の言うものとは違うのではないかと考えました。


 明日で故郷へと帰る最後の日。

 

 考え事をしていた宗彦は近隣の村にある井戸に落ちてしまいそうになりました。その時、何かと自分自身の心が調和し、少年の言うくうに出合いそうになりました。それは必死で掴んだものでした。


 宗彦は故郷に帰り、自分の見つけたくうを伝えました。しかし、彼は他の人々空を知るにはそれでは足りないことを知っていました。


 しかしそれでも、宗彦の心の中のそらは、喜びと満足で満たされ晴々としていました。

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空はどこだ! 松井みのり @mnr_matsui

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