第4話 龍宮(りゅうきゅう)の学び舎

長いようで短かった赴任休暇も終わり、いよいよ大学で教鞭を執る日がやって来た。いつもより少し早起きして朝食を済ませ、身支度を整えるとジープに乗り颯爽と大学に向かった。青空に米軍の飛行機が轟音と共に白い線を描き、大海の門出を祝ってくれているようにも見える。道はそれ程渋滞することもなく、30分程度で大学に着いた。


大海は事務棟で手続きを済ませると、学部長の所に挨拶に行った。


「歴史・民俗学の専攻過程を担当することになりました小出です。東京の国学院大学から赴任して参りました。どうぞ宜しくお願い致します。」


「小出先生、東京の大都会から南西の端にある沖縄の我が琉球大学への赴任ありがとうございます。人文社会学部を担当している学部長の真弓です。君の話は、農学部の山下先生からよく聞いていますよ。考古学専攻なのに、マングローブに興味を持たれているとか?」


「そうなんです。彼とはインドネシアでのマングローブ植林ボランティアで知り合い、それからマングローブに興味を持つようになり、彼とも親しくお付き合いさせていただいているんです。そうですか、大輔のやつ、宣伝してくれてたんですね。」


「農学部ではマングローブの研究を盛んにやっていますよ。山下先生にも聞かれていると思いますがね。」


「そうですか。実はマングローブの森が二酸化炭素を吸収して酸素を生み出す地球温暖化対策の救世主であると同時に、津波などへの減災効果があると知って、気候変動で温暖化が進んでいる本土の海岸にも植林できそうなので、そういう活動に繋げて行けたらなあと思っているんです。」


「それは良いアイデアですね。日本では沖縄や奄美辺りにしか生えないと思われているマングローブですが、実際には鹿児島辺りにも自生しつつあるようですよ。ぜひ農学部の皆さんも巻き込んで発信されたらいいかも知れませんね。」


「ありがとうございます。大輔ともまた、連携を取りながら進めたいと思っています。」


「それじゃあ、まずは、学長に紹介しますので、その後、助手の二階堂さんに構内を案内してもらいますね。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」


そういう話の後、二人は学長室に向かった。


「学長、こちらは今度東京から赴任いただいて歴史・民俗学の専攻課程を担当いただく小出先生です。」


「小出です。東京の国学院大学で考古学の研究をしておりました。琉球の歴史とマングローブに興味があり、こちらに転籍の希望を出して受理いただき、本日赴任致しました。どうぞ、よろしくお願い致します。」


「小出さん、メンソーレ、ウチナー。ようこそいらっしゃいました。学長の玉城(たまき)です。琉球はアジア太平洋地域の海上交通の要衝に位置し、古くから海洋貿易で栄えてきました。そんな琉球の歴史を学生諸君に伝えて、広く世界にも発信していただけると嬉しいですね。」


「ありがとうございます。私の持論で恐縮ですが、実は『琉球』とは竜宮城の在り処を指していて、通常は『りゅうぐう』と読みますが、龍の宮と書いて『龍宮(りゅうきゅう)』とも読めますよね。ですから、『琉球(りゅうきゅう)=龍宮(りゅうぐう)』だと思っているんです。古代日本で海上交通を司った海神(わだつみ)は、東シナ海を中心に活動していたはずです。そのホームグラウンドが沖縄だったので、浦島太郎の竜宮城伝説が生まれ、琉球と呼ばれるようになったのではないかと。まあ、私の仮説でまだ証明できたわけではないんですけどね。」


「面白いお話ですね。じゃあこれからは琉球大学ならぬ龍宮大学をキャッチフレーズに大学の広報にも一役買っていただけるとありがたいですよね、真弓先生。」


「そうですね。まだまだ、琉球の歴史は文献も少なく、未知の分野ですからね。面白いお話が聞けそうで、楽しみです。」


「お二人ともそう言っていただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。」



真弓と小出はそんな話をして、学長室を後にした。


「そうしたら、小出先生の所属される歴史人類学の稲垣研究室にご案内しますので、これからのことは稲垣教授と二階堂さんに相談していただけますか。」


「わかりました。真弓先生、お忙しい中、ほんとうにありがとうございました。」


真弓は、稲垣研究室の前まで案内してくれて、中を覗くと、若い女性と軽く話をして、自室に戻って行った。


「お世話になります。今度赴任して来ました小出です。ご厄介になります。よろしくお願いします。」


「小出先生、ようこそいらっしゃいました。私は助手の二階堂です。どうぞよろしくお願いします。稲垣先生は、今講義中なので、取り敢えず、私が構内を案内させていただきますね。」


「ありがとうございます。」


「小出先生はどちらからおいでになったんですか?」


「東京の国学院大学におりました。二階堂さんは地元の方ですか?」


「ええ、私は那覇市の出身なんですが、今は北谷町(ちゃたんちょう)に住んでいます。」


「北谷町ですか。アメリカ西海岸を思わせるような素敵な街だと聞きましたが。」


「ええ、基地の人も多く住んでいて、観光客も多いので、国際色豊かで賑やかな街ですけど、住んでいるとそれ程でもないんですよ。小出先生はどちらにお住まいなんですか?」


「私は、隣町の宜野湾市にアパートを借りました。普天満宮と、それに米軍基地も近いですけどね。西海岸の浜辺のテラスで潮風に吹かれてジャズなんか聴きながら、クラフトビールを飲んでみたいですね。」


「先生独身なんですか?」


「いいえ、妻と子供がいるんですけどね。まだ、子供の学校の都合なんかもあるんで、私だけ先に来ているんです。」


「なーんだ、そうなんですね。じゃあ、今度奥様と子供さんがお見えになったら、ご案内しますよ。」


「ありがとうございます。二階堂さんもご結婚されているんですか?」


「いいえ、私はまだ一人の方が気楽なんで、仲間の人たちとスキューバダイビングなどに興じています。」


「そうなんだ。沖縄はきれいな海に囲まれているから、マリンスポーツの聖地ですよね。」



そんな他愛無い話をしながら、千原キャンパスと上原キャンパスの全容をキャンパスマップで一通り説明してもらった後、人文社会学部の他に、隣接する国際地域創造学部、教育学部、理学部、図書館、中央食堂売店などを見て廻り、再び研究室に戻ると、稲垣教授が講義を終えて戻っていた。


「稲垣先生、こちらが今日赴任された小出先生です。隣接する学部棟を一通りご案内して来ました。」


「東京から赴任して来ました小出です。まだ、沖縄の土地勘や大学内の作法などはあまりわかっていないので、ご迷惑をおかけすることが多々あるかと思いますが、一日も早く慣れて微力ながら稲垣先生のお役に立てればと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。」


「小出先生は確か考古学が専門でしたよね。歴史・民俗学分野における言語や民俗や史料などを基にした総合的統計的手法で推論した仮説を、考古学的見地から実証して行っていただきたいのですよ。中国と盛んに交易していた中世以降の時代考証を裏付けるために首里城近辺の発掘はだいぶ進んでいるのですが、沖縄本島を始め周辺の島々には往古の時代を示すと思われるまだ多くの古代遺跡が手つかずで残っているんです。あなたには是非それらの遺跡が物語るアジア太平洋の古代人の足跡と営みを仮説と実証を交えて明らかにして行ってほしいんです。」


「はあ、わかりました。まだ、私も古代の日本や東アジア辺りまでしか把握できておりませんが、徐々に守備範囲を広げて行けるように頑張りたいと思います。」


大海は少し苦笑しながらも、稲垣の容赦ない要求に同意せざるを得なかった。


「稲垣先生、小出先生はまだ赴任されたばかりですから、そんなに難題を持ち出されると東京に帰ってしまわれるかも知れませんよ。」


「二階堂さん、お気遣いありがとうございます。でも私なら大丈夫です。」


「小出先生、私も遠慮しないほうなんで、気を悪くされたのならすみませんね。まあ、兎に角楽しくやりましょう。どうぞよろしく。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」



それから三人はおもむろに昼食を摂るために食堂に移動した。食堂はカフェテリア方式になっており、思い思いにご飯と、主菜、副菜、汁物などを取ってトレーに載せ、空いているテーブルに持ってきて食べる。大海はチゲ風の少し辛めのタンメンを単品で注文して食べた。


「小出先生、無難なメニューにされたんですね。沖縄料理とかは苦手なんですか?」


トマト風パスタとコンソメスープを前にして、二階堂が微笑みながら聞いた。


「いいえ、そんなことはなくて偶々ですよ。そう言う二階堂さんも無難なメニューじゃないですか。でも、私は基本的に沖縄料理は何でも好きですよ。まだそんなに何でもトライした訳ではありませんけどね。テビチなんかでも大丈夫かな。」


「そうなんですね。じゃあ、私、美味しい沖縄料理のお店知ってるので、研究室に学生が入ってくる前に一度そこで歓迎会でもやりませんか?」


「そうじゃなあ。小出先生の歓迎会をやらんとなあ。ナミちゃん、週末辺りで予約頼むよ。」


稲垣も素麺チャンプルーを食べながら付け加えた。


「わかりました。じゃあ、早速ですが、今度の金曜日18時くらいで予約しますけどいいですね。」


「ありがとうございます。僕は大丈夫です。じゃあ、美味しい沖縄料理を味わいながら、みんなでこれからの活動計画でも練りますか?」


そんな訳で、次の週末にささやかながら大海の歓迎会を催してもらうことになった。


大海は翌日10時から日本古代史概論の講義を受け持つので、その資料準備と教室や備品などの確認を済ませて早めに帰宅した。



「皆さんこんにちは。今年度は12回に亘って『日本古代史概論』を開講します。講師は東京から赴任したばかりでほやほやの私、小出が担当します。どうぞ、よろしく。」


「皆さんは古代史と言うといつぐらいからをイメージしますか? 奈良時代? 飛鳥時代? 通常は古事記や日本書紀などの史書としての資料が記され、大和朝廷が発足してほぼ国家として統一された奈良時代くらいからを対象としますが、僕の視点は少し違って、クニと呼ばれる環濠遺跡などで守備を固めながらその中に住居や稲作などの共同体を形作るようになった弥生時代からを対象とします。何故そんなに遡るかって?それはね、古事記や日本書紀:この二つを合わせて『記紀』と言いますが、この記紀には実は弥生時代のことから記述されているんです。この二つの文献と東アジア周辺諸国の文献を注意深く照らし合わせながら解読すると、神話に紛れて弥生時代のことが見えてくるんですよ。そうすると、今まで謎だった邪馬台国や大和朝廷の成り立ちが見えてきて、古代史が実に興味深くなること請け合いです。」


「では、第一回は、まず、大和朝廷成立の礎となる聖徳太子が活躍した飛鳥時代からを題材に導入編とします。・・・」


大海は第一回目の講義をこのような形でスタートした。中には遡る時代も単位取得試験の対象になるのかといった質問をする学生もいたが、大海は「それは興味の問題なので選択式にするので大丈夫だ」と答えた。受講する学生も40名程度集まり、概ね好評のようだった。



こうして大海の助教としての生活が始まり一週間が過ぎた金曜日の夜、歓迎会が催された。


大学から程近い沖縄料理の店には『ナンクルナイサー』という看板が掛かっている。三人は暖簾を潜り予約席に座ると、大海にアルコールが大丈夫なことを確認して二階堂がメニューを見ながら早速注文した。


「オリオンの生三つと、ミミガー、テビチ、ゴーヤチャンプルー、それに、グルクンの唐揚げ、取り敢えず、そのくらいで。」


「二階堂さんの行きつけなんですね。お名前は『ナミ』さんで良かったんでしたっけ?」


「ええ、ちょっと恥ずかしいんですけど、南に美しいと書いて『南美(なみ)』と言います。『ナミ』って呼んでもらえばいいですよ。」


「そうなんだ。南国的で素敵な名前じゃないですか。じゃあ、南美さん、実は僕の娘も那覇の『那』に美しいと書いて『那美(なみ)』って言うんですよ。なんか親しみを感じますね。」


「そうか、じゃあ、今日は酒を『なみなみ』に注いでとことん飲むか。なんちゃって。」


「稲垣先生、相変わらず絶好調じゃないですか。」


そんな話をしていると、店員が注文したビールを持ってきたので、みんなで乾杯した。


「じゃあ、今日は小出先生の着任のお祝いと、研究室のみんなの健康と益々の発展を祈って乾杯じゃ。乾杯!」


そうこうしているうちに料理も運ばれてきた。



料理を味わって酒が進む。南美はジョッキを空けると、今度は泡盛の水割りを注文しようと、大海と稲垣に追加注文はないかと確認した。


「ここの泡盛は古酒でなかなか行けるんですよ。いかがですか?」


まだ、ジョッキにはビールが多少残っていたが、二人とも、もう一杯飲みたくなって、南美の誘いに便乗した。


「薩摩焼酎の原料は薩摩芋だけど、泡盛の原料って何を使っているか知ってますか?」


大海が稲垣に聞いた。


「泡盛は歴史が古くてね。今では『タイ米』が使われているそうじゃが、昔は島で採れる米以外に粟も原料にしていたようじゃ。現在、沖縄の稲作跡が確認できているのはグスク時代(10世紀以降)辺りからなんじゃが、その前には畑作で粟などの雑穀を栽培していたのかも知れん。その昔、本土との間に『貝の道』と呼ばれる交易が行われてイモガイやヤコウガイなんかが弥生式土器などと交換する形で取引されていたらしいんじゃ。そうすると、貝類や魚でたんぱく源は補給できるが、それに合わせて炭水化物なんかも補充せんといかんわな。島はそれほど広くないから自生する木の実や穀類も多くないし、農耕でもして作物を育てないといかんじゃろ。交換で得た土器を使って穀類なんかも煮炊きして食べていたとすれば、焼畑などの畑作も行われていた可能性は高いと思わんか。」


「そうですね。畑作をやっていたのかも知れませんね。そうだ、だから『粟』を使って酒も造ったんで『粟盛(あわもり)』っていうんじゃないですかね?」


大海がそう言うと、南美がさらに次のように付け加えた。


「そうそう、泡盛という名前の由来には『泡』の立ち具合でアルコールの度数を測るからという説と、原料に『粟』を使っていたからという二つの説があるって聞いたことがあるわ。それって、粟を使って古代琉球で独自にお酒を蒸留するようになったってことじゃないんですか?なんか凄くないですか?」


「そうなんじゃよ。穀物で酒を造るには、麹菌で糖化する必要があるんじゃが、泡盛の特徴は『黒麹』を使うという点にある。本土の酒造りの場合、日本酒では『黄麹』なんじゃが、沖縄のように温暖で湿気があると、黄麹では雑菌が混じって良い酒が造れないらしい。ところが、黒麹だと雑菌を寄せ付けない酸を出すと同時に奥深い風味が加味されて良い泡盛が作れるらしいんじゃ。黒麹は後に本土にも伝わり、焼酎造りにも使われるようになったそうじゃ。そして、アジアでも黒麹を使う酒は他に無くて、どうも琉球泡盛が発祥みたいなんじゃよ。」


「『粟』で思い出したけど、本島の西に『粟国島(あぐにじま)』って言う島もありますよね。」


研究室の事業計画はさておいて、今宵の宴会はこのようにして泡盛談義に花が咲き、夜が更けるとともに幕を閉じた。



ある時、大海が古代史概論の講義をしていると、受講生の橘八羽重(たちばな やはうぇ)がこんな質問をした。


「先生、倭国大乱があったことが、記紀にも載っているって何でわかるんですか?」


「中国の後漢書東夷伝には『桓帝・霊帝の治世の間(西暦146年~189年)、倭国は大いに乱れ、さらに互いに攻め合い、何年も主(しゅ)がいなかった。』と記されている。一方、記紀には、伊邪那岐神と伊邪那美神の国生みの神話の後、伊邪那美神が火之迦具土神を産んで火傷を負い亡くなるんだが、伊邪那岐神は亡くなった伊邪那美神にもう一度会いたくて黄泉国に行き、そこで雷神となった伊邪那美神を始めとする八柱の雷神に追われ、命辛々逃れて、竺紫(ちくし)の日向の橘の小門の阿波岐原で禊(みそぎ)をするんだ。これは、倭国大乱を伊邪那岐神率いる高天原軍と、雷神率いる葦原中国軍の戦いと仮定すると、年代的にも、卑弥呼の女王即位の経緯とも辻褄が合うんだよ。卑弥呼が亡くなったのは西暦248年頃とされている。そこで、伊邪那岐神という王の庇護のもと13歳くらいで立太子を済ませたのが189年頃とすると、それにより争いが収まり、卑弥呼が亡くなったのが72歳くらいとなり妥当な年齢と思われる。卑弥呼は日の巫女と捉えることができ、これはつまり天照大御神と同じ太陽神と考えられるので、世の中でよく言われている卑弥呼と天照大御神の同一人物説とも合致するんだ。また、伊邪那美神が火傷を負って亡くなったという記述を、大乱勃発が原因で伊邪那岐神と別れて雷神側に付いたということを意味する比喩表現とすればこれも辻褄が合うんだよ。そして、魏志倭人伝では、卑弥呼には弟が居たとされているが、天照大御神にも須佐之男命という弟が居たんだ。」


「なるほど、先生のおっしゃる説も一理ありそうですね。でも、なぜ、伊邪那美神は雷神側に付いたのでしょう?私が伊邪那美神の立場だったら、雷神たちが悪い人たちなら、敢えて伊邪那岐神を裏切ってまで離反しないはずです。」


「君もそう思うかい。僕だって、その意見には賛成だな。勝てば官軍って言葉があるだろう。つまり、歴史っていうのは、常に勝者の側で作られるってことさ。だから、歴史の真実は往々にして隠されているものなんだ。争いの背景には、いずれにもその時点での多少の正義があるものさ。でも、その先の将来も踏まえて、どちらが正しかったかは、新しい時代が来て初めてわかるものじゃないかな。だから、歴史を振り返る時は、表面に現れている勝者の歴史と共に隠された敗者の歴史にも光を当ててみる必要があると思っているんだ。」


「先生ってフェミニストなんですね。でも、生存競争ってきれいごとだけじゃ済まされないでしょ。人類の歴史も結局は弱肉強食の闘争の歴史じゃないんですか?」


「僕はそうは思わない。過去の人類の歴史は確かに争いに満ちていたけれど、争いと直接関係しない愛に満ちた芸術や宗教や福祉の場をも生み出して来たじゃないか。そして、現代においては、一部の非民主的な国家を除いて、強者弱者に関わらず誰もが自由で人権を尊重されるべき存在であるという共通の価値観が共有されているじゃないか。」


「先生は全ての人に平等に光を当てようとされているのね。何かゴールが見えて来たような気がするわ。先生の遠くて長い旅ももうすぐ終わるのね。」


橘のひめゆりのような白いブラウスの胸元でエメラルドグリーンに輝くペンダントが少し揺れ、仄かにかぐわしく爽やかな香りがした。

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