第87話 日記20240924 電車

 電車に乗る。

 前に並ぶはわずかに二人。ホームに滑り込んで来た電車の空き具合を見て、これは座れるなとほくそ笑む。

 ドアが開く。

 中から出て来る乗客が扉のこちら側に偏る。反対側で待っている連中が強引に乗り込むので、降りる乗客は自然とこちらに寄る。

 ようやく降りる客が尽きるが、前の人間がくずぐずと乗らない。

 何を遠慮しているんだ、さっさと体を割り込ませろ。お前がぐずぐずしているからこちら側は全然乗れないじゃないか。

 心の中で叫ぶが口には出さない。

 次の人が電車に足を踏み入れると、そこで自分はこれで安心とばかりに立ち止まる。

 ふざけんじゃないぞ、このクソ野郎。後ろに行列できているのが分からないのか馬鹿野郎。ふたたび心の中で毒づくがもちろん口には出さない。

 その馬鹿を後ろから電車の中に押しこむと、そいつはそこに立ち止まりまだ空いている席がないかと物色している。

 そして最後に一つだけ空いていた席に割り込むようにして座り込む。

 このバカ野郎二人。お前たちのために座れなかったじゃないか。他人の幸運を潰しやがって。そして自分たちだけはちゃっかりと座っている。


 いつかこの殺意を抑えきれなくなる日が来ることを私は知っている。

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