序幕

 今はもう廃れつつある古き名の女神たち。

 彼女らは時間の始まりから世界と共にあった。

 すべてを生みだし、すべてを育て、すべてをあるべき姿へと据えた者たち。

 この七柱の女神たちは天上から地上を眺めているという。


 彼女たちは人間に干渉することはないけれど、気まぐれを起こすことはある。

 ごく稀に【予言】という形で恩恵をもたらす。

 それは乙女の身体のうちにのみ宿り、ときに世間のありようを大きく変える。

 また、世界の崩壊を押しとどめた例も過去にはあったとか。

 とはいうものの、定かな話ではない。ただ、そう信じられているというだけ。


 七柱の女神はそれぞれに異なる【予言】を乙女に与える。

 ゆえに、予言の乙女も七つに分けられる。

 そのうちのひとつを、【一つ予言】という。


 他の力と異なり、その乙女は己の能力の何たるかを知られずにに消えていく。

 ゆえに、どのような予言なのかをはっきりと事実を知る者は少ない。

 この性質から、世間では【沈黙の予言者】とも呼ばれていた。


 これは、その乙女が珍しくも歴史の表舞台に現れたときのお話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る