十五話
時刻は、16時30分。
本来なら、30分早い時間にここを出るのだが。
「…………」
場所は三階の選択教室。ここには、蓮人とリリー以外誰もいない。
「ごめんね、本当だったら早く帰りたかったよね?」
「ああ、いや大丈夫だよ」
「それでね、話なんだけど」
蓮人がここに来たのは、リリーに呼ばれたからだった。
「16時に三階の選択教室に来てね」
帰りのホームルーム終了後、隣の席であるリリーが一言そう言ってきたのだ。
そう言われた蓮人は、内心少しドキドキしていた。もしかしたら告白かもしれない、と思ったのだ。
そして、時間通りに教室に来たのは良いが、なぜかリリーはいなかった。
おかしいな、確かに16時に来いと言っていたはず……と思ったが、リリーが来るまでここで待つこと30分。
「ごめんね、本当だったら早く帰りたかったよね?」
と、最初に戻るわけだった。
「うん、それでどうしたんだ?」
「その……言っていいのか、分かんないけど」
なぜかそこで口ごもるリリー。
とりあえず蓮人は、リリーが言うまで黙っていることにした。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
数分の沈黙の後。
「黒い怪物を見たの」
「っ!?」
瞬間、蓮人は頭に電撃が走ったかのように全身を震わせた。
やはり、先週の出来事は夢ではなかった。
いやそれよりも、ごく普通の高校生がそんなことを言うという事は……大変なことになっているに違いない。
「そ、そそうか……ええと」
返す言葉が見つからない。ここは驚いた方がいいのだろうか。それとも、何を言っているんだというような顔をすればいいのだろうか。
「あ、心配しなくていいよ。一応——倒したから」
「………………は?」
蓮人は間の抜けた声を出した。目が点になる。呆然としてしまう。
——ちょっと意味が分からない。今この少女はなんと言った?
「な……なんて?」
「倒したって言った」
「なななななにが?」
「怪物を倒したの」
「…………ッ!?」
蓮人は顔中に汗を噴き出した。おでこに手を当て、そんなはずはない、そんなはずはない、と自分に言い聞かせるようにする。
考えられない。普通に考えて、あり得ないことだ。こんな普通の少女が、どうして黒い怪物——<ベスティア>を倒した、と言えるのだろう。
蓮人が知っている限りでは、レア、フェアリーの二人しか倒せないはずだが……。
「……というか、その腕……」
「ん?……ああ、えへへ。大丈夫だよ」
信じられない言葉を聞いてしまい圧倒されていたが、ふと目に入る。
リリーの右腕から血のようなものがしたたり落ちているのが。
「ね?言ったでしょ」
肘辺りから流れており、それが小指に来ると、ピチャ、ピチャ、と地面に血だまりをつくる。
彼女は——本当に、<ベスティア>と戦ったのだ。そういう解釈でないと、この血はなんなんだ、となってしまう。つまり、辻褄が合わないのだ。
「蓮人!ここにいたの!?」
「えっ」
と、教室に現れたのはレアだった。焦っている様子が見える。
「今<ベスティア>が学校内にいて大変なの!蓮人は早く帰って!」
「お、おう……!」
花の魔法少女 minonライル @minon13
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