黒対白華

·

暗闇の中で誰かが僕に問いかける

『君は誰?』

「分からない」

不意に脳裏に疲れきった紫髪の研究者が浮かぶ

「僕は、紫雲響也です」

気が付けばそう答えていた

『ふーん?』

誰かはもう一度僕に問いかける

『きみは誰?』

同じ様に僕の名前を答えようとした

だけど

先程と同じ様に脳裏に

爆撃にあったあとのような荒地で祈るように歌う青年が浮かんだ

「俺は、深海零夜」

と答えた

すると誰かはまだ聞きたげな顔で

『じゃあ、君は?』

とまた問いかける

「ぼくは……」言い淀んだ、

すると

歌を愛し、音に愛され

1度失ったけれども自分で取り戻しに全力を尽くした青髪の青年が浮かんだ

「ぼくは、月城涼太だよ」

誰かは、さらに問いかける

『君は誰だい?』

今度は緑の髪のみんなに愛された少年だった

「僕はね、ミセリア!ミセリア·レイ·リーフェルトだよ!!」

誰かはまだまだと言った顔で問う

『君は?』

愛のために正義を捨てることを選んだオッドアイの女性が浮かんだ

「私は、三日月蒼龍です」

誰かはその答えを聞き、今度は違うよね?と言わんばかりの目で私に問う

『本当の君は?君の創った誰かじゃない、君自身は誰だい?』

本当の私?それって何?

わかんない、わかんない、

紫雲も深海も月城もリーフェルトも三日月も

僕、俺、ぼく、私、

分からない、わかんない

少しづつ自分の中からから

彼らが消えていく

シャボン玉が弾けるように

壊れて弾けて消えていく

暗闇の中で自分だと思っていた

彼らが弾けて消えていく

痛い、痛いよ、やめて、やめてよ

心が、身体が、引き裂かれるように、

大切な何かが壊されていくように痛む

痛い痛い痛い痛い

いたいいたいいたいいたい

イタイイタイイタイイタイ

イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ

ある瞬間、どこからか誰かが呼ぶ声が聞こえた

それはうまく聴き取れなかったけど

確かに私を呼ぶ声だった

今までに浮かんだ彼らじゃなく

迷いなく『私』を呼ぶ声だった

ゆっくりと私を飲み込んでいた痛みは消え去りはじめ

少しづつ周りが明るくなっていく

ふと、指先からじんわりと温もりを感じた

あぁ、暖かいってこういう事なんだと思いながら

私はそっと目を閉じた


どれくらいだったか分からないけど

痛みも眩しさも感じなくなった頃、目を開いた

そこは病院のベットの上で

温もりを感じた手の方を見てみれば

私の大切な人が手を握り私にもたれるように寝ていた

一体、あの光景はなんだったのか、そして彼らは誰なのか、

そう私は悩んだけどこれ以上気にしない事にした

だって、私は、彼らじゃない

私は私自身、そう『豐ウ蜷亥スゥ豁�error』なのだから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒対白華 @kiminokoe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る