100円ガチャのスキャリー。

猫野 尻尾

第1話:カプセルトイ。

幽霊&憑依シリーズです。


俺は高校が休みの日、映画を観に行こうと思って、大型スーパーの中にある

映画館へ映画を観に行った。


上映時間までに時間があったから、カプセルトイ(ガチャガチャ)の専門店

に入って面白そうなガチャを物色していた。

こんなにたくさんガチャがあったら迷うな。


「お、これ行ってみようかな」


それはホラー系の可愛いデフォルメのキャラだった。

で、ガチャガチャしてみた。

出てきたカプセルケースを開けたら、中に可愛い女の子のキャラが出てきた。


キャラの名前は「スキャリー」

顔に擦り傷がったり口から血がたれてたり、けっこうリアルじゃん。


「うん、悪くない」


でキャラが入ったカプセルをバッグにしまって店を出ると映画館に急いだ。

映画を堪能して家に帰ってバッグから出したカプセル中からデフォルメキャラ

を出してパソコンの横に飾った。

いい機会だからこれから少しつづキャラを揃えていてもいいかな。


でも、キャラをそこに飾ったことなど、すぐ忘れて寝た。


で、次の朝・・・。


「え?、なに?」


「うそ、誰?・・・おまえ誰?」


目が覚めえたら僕の横に誰か寝てた。

まじで誰って思ったけど、誰かすぐに分かった。

でも、そんなことアホなことありえる?

俺が昨日買ったガチャのキャラが等身大になって僕の横で寝てるじゃん。


ありえない、ありえない・・・まだ夢見てるんだ。

いやいや、ちゃんと起きてるし・・・。


じゃ〜これってなに?


「むにゃむにゃ・・・腹減った・・・」


「寝言ってやがる」


俺はキャラを起こさないようベッドから降りると椅子に座ってしばらく、

現状を把握しようと考えた。

いくら考えても、目の前の出来事がリセットされるわけじゃなし・・・。

受け入れるしかないのかな?


「スキャリーって言ったっけ?」


気持ちよさそうに寝てるけど、とにかく起こしてみるしかないかな。

で、俺はスキャリーを揺り起こした。


「おきろ・・・起きろってば・・・おい、お・き・ろ〜」


「むちゃむにゃ・・・ん?・・・なに?」

「あ、おはよう」


「おはようじゃなくて・・・どうなってんだよ、これ?」


「あ〜あ、よく寝た」


いろんなキャラの登場の仕方あると思うけど、おもちゃが大きくなって

しかも動いて、しゃべって・・・トイ・ストーリーの日本版か?

まあ、映画があるんだから、そう言うことがあっても不思議じゃないか?


って変な理屈で納得しようとした。


「私、スキャリー・・・よろしくね、 富太くん」


「なんで、俺の名前知ってんの?」


「私、外身はスキャリーだけど、中身は、隣の同級生の美希みきだから」


「なに言ってんの?・・・どう言うことだよ」


「だから、君希みきだって・・・」


「よく分かんねえ・・・美希は三日前、交通事故で亡くなってんだけど」


「うん、告別式が終わったあと夕べ、富太くんの部屋を覗きに来たの」


「え?死んでるのに?」


「魂だよ・・・生き返るわけないし・・・」


「あ、そうだ、昨日さ、おまえの告別式ボイコットしてごめんな」


「そうだよ、富太くん来ないんだもん、お葬式」


「悪い・・・昨日の映画、最終日だったから観に行ってたんだ」


「ひどいっ!!」


「正直言って俺も悲しかったんだ・・・美希を失って・・・」


「口だけ男〜」

「で、私をほったらかして映画を観に行ったのか?富太!!」


「悪かったって、で?それで俺の部屋に逆恨みで来たのか?」


「そうじゃなくって私、前から富太くんのことが好きだったの」

「好きって気持ちを告白できないまま死んじゃったから・・・」

「せめて、もう一度会っておきたいと思って・・・」


「うそ〜俺のこと好きだったなんてそんなの初耳だけど・・・」

「で、なに?・・・体がないからスキャリーに乗り移ったわけか?」


「だね」


「だね、じゃなくてそんな器用なことできるのか?」


「魂だし・・・生き物以外でものり移れるから・・・」


「もうカプセルトイじゃないし、れっきとした生身の女だよ、生身の・・・私」

「生き返ったの」


「そう言うのは生き返ったとは言わないだろ?」


「ってことで、スキャリーって呼んでくれていいけど、中身は美希だからね」


「まじで?」


「って言うかさ・・・その顔の傷とか垂れた血とか、なんとかならないのか?」

「もうさ、ホラーキャラ演じなくていいんじゃないか?」

「綺麗にしたら可愛いと思うぞ」


「血糊は私のトレードマークだし・・・」


「スキャリーのトレードマークだろ?・・・美希のじゃないし・・・」


「いいの、スキャリーは美希で美希はスキャリー」


「ややこしいからどっちかにしてくれないか?」


「まあ、どっちにしてもその顔じゃ〜連れて歩けないだろ?」

「俺の父ちゃんと母ちゃんが見たら、びっくりするだろうしな」

「その血、取れるもんなら僕が取ってやるから・・・」


ってことで、俺は洗面所から化粧水を持ってきて、ティッシュで

スキャリーの顔の血を綺麗に拭き取ってやった。


「ほら見ろよ・・・可愛くなったじゃん」


「こんなに綺麗にされちゃって、私のキャラ設定台無しだね」


「それなら俺の友達にだって紹介できるわ」


あ、言い忘れてたけど、俺の名前は「宝田 富太あたからだ とみた」って言うんだ。

100円ガチャのスキャリーに隣の亡くなった美希の魂が乗り移っちゃうっていうね。

そんな非現実的なことってあるんだな。


とりあえず手始めに父ちゃんと母ちゃんに紹介しとかなきゃいけないだろうけど。

なんて説明すりゃいいんだ・・・なんか一悶着ありそう。


おしまい。


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