第31話 絶望と希望

戦場の中心で、アルケミスは静かに古代の呪文を唱え始めた。


彼の手から広がる魔法陣は、地面に複雑な模様を描き出し、それは徐々に暗黒の光を放ち始める。




ルナとアリーシャの足元にその光が伸び、二人は不意に力を奪われる感覚に襲われた。


青白い光が彼らの体からアルケミスへと流れ込むと、彼女らの膝は地に落ち、意識が朦朧としてきた。




ルナは自分たちが何のためにこんな目に遭っているのか、その理由を知りたくてたまらなかった。


彼女は力を振り絞り、アルケミスに問いかける。




「アルケミス、なぜ? なぜ、私たちの魔力を奪うのですか?」


その問いには怒りと困惑が交じり合っていた。




アルケミスは、彼女の質問に冷静に応え始めた。


「私が持つ『万物の声を聞く者』というスキルは、ただのコミュニケーションツールではない。」


「このスキルの真骨頂は、精霊を完全に支配下に置き、彼らの力を使うことができることだ。」




アルケミスの目は彼の力の源である魔法陣を一瞥し、続けた。


「しかし、そのためには通常では考えられないほどの魔力が必要なのだ。」


「ドラゴニア国王からはすでに力を吸い取った。」


「だがそれだけでは不十分、お前たちルナとアリーシャの力が必要だった。」




ルナはその言葉を聞き、自分たちがただの魔力の源として利用されていたことにショックを受けた。




アリーシャも力を振り絞り、立ち上がろうと試みるが、体はすでに限界に近かった。


アルケミスは彼らの魔力をさらに吸い上げると、自らの計画を語り始めた。




「これで私の力は完璧になる。」


「これから新たな世界を創造し、精霊たちを完全に支配下に置く。この世界に真の秩序をもたらすのだ。」




ルミナリス代表団はアルケミスの計画の全貌を知り、動揺が広がっていた。


緊張で静まり返り、その空気は重く、誰もが深刻な表情を浮かべている。




彼らはアルケミスの野望に対する恐怖と不安で一杯だった。




「私たちだけでは、彼を止めることはできないのか?」とある代表が静かに言った。




しかし、ニュートラリア内でアルケミスに匹敵する力を持つ者はいなかった。


それぞれの顔には絶望が浮かぶ。






「僕自身がこの会場で一番強くなることができれば…」




他人を強化することができるなら


自分自身を強化することもできるはずだ。


問題なのは最大まで強化された能力に体が耐えられるかといったところだ。




「…そんなこと気にしている場合じゃないよな」




リハビリスキル「改善する者」を使い、自身の身体と精神の限界を拡張することに決めた。


「改善する者」


僕自身のパワー、脳からの情報伝達速度、瞬発力、視力


全てを最大限強化




意識は徐々に集中し、内面の力が呼び覚まされ始めた。




体からはわずかに光が漏れ始め、リハビリスキルが彼の潜在能力を引き出していた。


その力は次第に強まり、ナオル自身もその変化を肌で感じ取ることができた。

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