第23話 和平交渉2日目
大聖堂の会議室に緊張が漂い、ルナが立ち上がって言葉を始めた。
「我々ルミナリアは、ドラゴニアの再生魔法の情報開示とその技術の共有を和平の条件として要求します。この技術が全国に広がれば、世界の均衡を保ち、未来への投資となるでしょう。」
「……再生魔法」
アリーシャはその要求に対して慎重な姿勢を示した。
「そこにいるナオルさんが再生魔法を使えるのはルミナリアの調査機関が調べ上げています。」
「ルナさん、私たちドラゴニアは皆さんとの平和を心から願っています。しかしながら、再生魔法の公開はナオルの安全に直結する問題です。その技術が誤った手に渡れば、取り返しのつかない事態を引き起こしかねません。」
会場からは異なる反応が返ってきた。
ある国の代表が声を上げた。
「ドラゴニアの主張も理解できますが、その再生魔法が本当に存在するのか、その証拠はありますか?」
ルナは即座に応じた。「我々はその存在を確信しています。ナオルさん自身がその技術を使い、多くの奇跡を成し遂げてきました。」
「最近のドラゴニアの急激な戦力増強も再生魔法が要因となっています。」
ルナの説明は矛盾がなかった。
「これを世界が共有することで、多大な利益をもたらすはずです。」
アリーシャは頭を振りながら答えた。
「私たちはナオルを守る責任があります。
彼の技術を公開することは、彼自身の命に危険を及ぼす行為です。それは私たちが避けなければなりません。」
ナオル自身もこの議論に参加し、静かに自分の意見を述べた。
「僕の力が世界の平和を遠ざけているなら、それは本意ではありません。僕はこの力で皆を助けたいだけです。」
このナオルの言葉に、会場は一時的に沈黙した。
そして、交渉はさらに数時間続き、一進一退の議論が繰り返された。
最終的に、ニュートラリアの市長が介入して、競技の結果発表を例外的に3日目に持ち越すと発表した。
「皆さん、明日には決定的な結論を出しましょう。それまで、各自、よく考えてください。」
僕は会議が終わると、ひとりで聖堂の外に出て夜空を見上げた。
星々が静かに輝く中、彼は深くため息をついた。
「自分の力がこんなにも問題を引き起こすとは…」
自分のスキルの責任について、真剣に考え直す必要があると感じていた。
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