卵焼き君
ピザー
第1話
世界経済は下がることもあるが、何だかんだで成長を続けていくと聞いたことがある。
それじゃあいつかは世界中みんな金持ちになるのか?
いや、ならないよとクラスで3番目に勉強できる子が言った。
嫌な仕事を誰かにやらせなければいけない、そうだとすると、みんな金持ちだと困るんだ。勝者と敗者がこの世界にはいなければならない。
生活保護ってあるじゃん?
嫌な仕事やるよりそっちの方行かない?
誰かが言った。
3番目君はそれにも答えた。
生活保護ってのはなかなか受けさせてもらえないんだよ。
それに、保護が決まっても少ないお金だよ。
自炊上手なら分からないけど、カップ麺とか食パンとかで細々暮らすことになるんだよ。
40番目君(この4年3組、この小学校は40人クラス制だ)がそれに反論(?)した。
俺はカップ麺大好きだよ。カップ麺毎日食べられるんだったら働かないね。
5番目さんは言った。
「飽きるよそれ。カップ麺はたまに食べるぐらいが美味しいんだよ」
10番目さんは言った。
「飽きるなんてもう通り越したよ。それなりに美味いよ。そういう人もいるんだよ。うちは生活保護家庭だよ」
3番目君はそれに対して言う。
「でも生活保護は辛いだろう?服とかプレステ7とか車とか...」
10番目さんは答える。
「音楽や映画のサブスクは安いし、娯楽はまぁ。でも確かに、服とか車とか。大学も行けるか分からないし」
3番目君はうなずく。
「何だかんだで生活保護って辛いんだよ。カップ麺もいつかはゲロ吐きそうになるぐらい嫌になると思うよ。マクドナルドのビッグマックでもいつかは嫌になるよ、普通はね」
5番目さんは「あっ。知ってる」と言って続けた。
「ビッグマックをずーっと食べ続けてるアメリカ人でしょ。よく飽きないよね。1週間に一回とかでもいつかは飽きが来てしばらく食べたくなくなるんじゃないかな普通は」
「俺はカップ麺好きだから飽きねーけどな」
40番目君がボソッと言った。
3番目君は「そうかもね」とだけ軽く言った。
5番目さんは少し考えてから口を開いた。
「とにかく、世界は絶妙に調節されているんだね。勝ち組、金持ちが幸せに暮らせるように」
3番目君は「うん」と答えて続けた。
「生活保護はね、生活保護らしい貧しい暮らしを続けている内はシステムの一部として機能するんだ。生活保護で泥棒とかが起きないように、ちょっと難しい言葉で言えば犯罪抑止って言うのかな。その役割をしているし、働かなければこの程度の暮らししかできないってことで、お金の価値も守っているんだ。だから月額7万円とか8万円なのさ、財源ということなら国債を発行すればいい。お金の価値、これをしっかり考えておけば、国の借金がどうだこうだと言うのはまやかしみたいなものだ」
40番目君は感心して言った。
「そういうことか、赤字国債がどうのこうのとか消費税がいくらになったとか、それら全て単純化すれば、お金の価値をどれだけのところで保持するかということなんだな」
3番目君はうなずいて言った。
「そういうことだと思うよ。税が財源にならないとかいう話が、どこかのネット掲示板で盛り上がったとか聞くけど、お金の価値をどれだけにするかっていうのを色んなシステムで調整しているんだ、この世界は。だから税が財源になるかどうかってのはどちらとも言えるんだと思う」
沈黙を守っていた1番目君が口を開いた。
彼は卵焼きが好きで、卵焼き君と子供の頃呼ばれていた。今でもたまに彼のことを卵君とかエッグマンとか呼ぶ人がいる。まぁ、その1番目君が喋り出したんだ。
「そうだよ。労働と我慢、それがお金の価値の基本だ。そして僕らはね、太陽系管理局から経済を監視されているんだ。この地球はね、貧しい星だからそこそこの娯楽までしかないんだ。僕はアンドロメダ銀河の100星レストランという所に行ったことがあるんだ。それは本当にもう天上の食べ物だったよ。僕はお父様から言われている、お前が私の息子としての力を示せばまたこんな美味い物が食えるのだと」
それが小学校で一番インパクトのあった話なんだと、元3番目君、夏木順(なつきじゅん)は言った。
1番目君の話は面白いフィクションとしてその時は処理されたが、最近本当のことなんじゃないかなって、そう思うようになったんだ。
中学2年生、夏木順。
冒険はまだ始まらない。
卵焼き君 ピザー @pizza417
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