第25話 オークランドへの報告
『赤い瞳の奴隷娘が黄金宮殿に到着』。
アルワーン潜入の間者からの一報がオークランドに届く。
それは、宮殿に潜入中の間者から、市中に紛れている間者に届き、そこから旅芸人の一座を介して届けられたものだ。
たった1文の情報だったが、ドレイクを激怒させるには十分な内容だった。
ユリウスはドレイクの様子を見て、すぐさま人払いをする。
定期報告を上げていた大臣達は直ちに退出し、ユリウスは執務室の扉を固く閉め切る。
「では、やはりアルワーンがフィオナ様をさらっていたと?」
ドレイクは無言で答えない。
険しい顔で、窓の外を見つめているばかりだ。
「赤い瞳、つまりピンク色の瞳を持つ人間は、フィオナ以外、俺は知らない。滅多にいないだろう」
ドレイクが唸った。
「アルワーンでは奴隷は合法だ。奴隷にされてしまえば、後宮を持つ国王に勝手に献上されたとしても、文句は言えない。奴隷娘であるとされたなら、アルファイドはフィオナを所有することができる」
「何者かが、フィオナ様を陛下の大切な人間であると知り、奪い取ったと?」
「フィオナの正体を知る者は誰もいない。おそらくは、黒竜は知っているのだと思う。だが、黒竜はフィオナについて何も話さない。アルファイドはただ、俺を陥れるためだけにフィオナが何者かは関係なく、彼女を手に入れるように指示したのだろう」
ドレイクの黒い瞳には、何も映っていない。
時折、揺らぐ瞳が、まるで炎の残像のように見える。
ユリウスの目には、ドレイクはとても平静に見えた。
「竜舎に行ってくる。後は頼む。アルファイドについて調べておいてくれ。オークランドに来た経緯に裏はないか、アルワーン帰国後の経緯は特に詳しく調べろ。何か見落としていたことがあるような気がする」
ドレイクは椅子の背にかけていたマントを掴んだ。
机に立てかけてあった、大剣を肩に掛ける。
「もちろん、どんな理由があっても関係ない。遺恨は断つ。誰であっても」
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