少女改変-オルタードマン-
あやちん
第1話 朝、起きたら……
「え、なにこれ……」
朝起きたら女の子になってた。
何言ってるんだこいつ、『あたおか』かって思われそうだけど、俺だって好きでそんなこと言ってるわけじゃない。
実際そうなんだからしかたないじゃないか!
起きてすぐは気付かなかった。
昨晩食べたものが良くなかったのか腹痛でトイレに駆け込む羽目になったし、寝起きで頭がボヤっとしてたってこともある。
で、トレイで便座に座って出すものを出し、一息ついたところで何気に視線を落とした。
自然に股間のそれが目に入った。
「へ? なに? なんなのこれ?」
在ったけど、無かった……。
俺は気が動転した。とんでもなく動転した。
その間にまだ残っていた便意が襲ってきた。まぁ今度は大でなく、小だけど。
否応もなく、その無くなったものの代わりに在ったものからそれが出る。出てしまった。
いやでも俺は、それを認識せざるを得ない。
「ゆ、夢じゃないよな? お、俺、なんで女になってんの?」
嘘のようなほんとの話し。
俺は便座でパンツを降ろしたまま、しばし呆然とする他なかった。
***
なんとか部屋に戻ったものの、あまりの出来事に俺は未だ呆けたままで、心ここに在らずって状態だ。
「マジなんなの? どういうこと?」
頭の中が、今起きてる不条理でぐるぐる回ってる。
ふとスースーする下半身に我に返る。
トイレから戻ってきた俺は下半身ノーパンのまま。別に露出狂じゃないけど、股間を見てから……なんというか、脱いだパンツを再びはく気になれなかった。けどさすがにこのままはまずいよな。
「と、とりあえずなんか履こ……」
そう思って下半身を見てたらちょっと変な気持ちになってきた。
二十分後。
若干の気だるさと罪悪感を感じながらも、とりあえずジャージに着替えた俺。パンツは新品のボクサーパンツを履いておいたが全くもってしっくりこない。そりゃそうだ。股間のアレがないし、尻のサイズだって違うんだから。胸の方もほどほど膨らんでいたので本来ならアレが必要だろうけど、残念ながら独身一人暮らしの俺の家にそんなものはない。
「はぁ、何でこんなことになったかなぁ?」
あんなことを致した後にこんなこと今更だけど……、間違いなく俺は女の子の体に変わってしまったみたいだ。
改めて姿見の前に立って自分を見る。
見た感じ、十四、五歳ってとこかな?
中学の高学年、無理すればなんとか高校生になったばかりくらいの見た目で、俺は今二十三歳だから随分若返って見える。その顔はシミ一つない色白できめ細かな肌をしていて、自分を見つめる
髪の毛は手櫛でちょいちょいと撫でれば整えられる程度のショートヘアだったはずが、なぜか不気味に伸びて、微妙にくせを持つ髪が腰に届く長さになってる。髪の色にいたってはピンクブロンドっていうの? 桃色が強い金髪って感じだけど、若干色素の抜けたような色合いは、光の加減で|白っぽく輝いて見える。
背格好は、もともと男にしては小柄でギリ百六十センチの身長だったけど、ジャージのズボンが随分余ってることから多少縮んでるみたいだし、ウエストもかなり細くなってて紐をかなり絞らないとずり落ちる。ただ、尻がでかくなったみたいで下まで落ちずにそこで食い止められる。……なんだかなぁ。
胸はさっきも見たけど、まぁ、その、ごく標準的な大きさじゃないのかな? わからないけど。
ちなみに顔の好みは人それぞれだとしても、正直俺が彼女にするならドストライクの可愛い系美少女。ちょっと幼く見えるとはいえ、こんな子に笑顔で話しかけられたら俺絶対硬直して返事すら出来ない自信ある。
「まじ、コレどうしたらいいんだよ……」
こうなってしまった原因を考えるも、引きこもり系社会人である俺にそんなことわかるはずもない。
とりあえず、昨夜、寝る前の行動を思い出す。
仕事を終えた後、サブスクで推しアニメを見たあと、ネットのイラスト投稿サイトに流れ込むのが毎日のルーティーンだった俺は、お気に入りの絵師の新着がないか確認し、新たに投稿されるイラストに自分の好みがないかをニヨニヨしながら閲覧してた。隠れオタクな俺は二次元の絵を見て喜んでるのを知られると困るので、家族以外、誰も知らない趣味だけど。
可愛くも美麗な美少女たちのイラストを見ながらこんな可愛い子を彼女にしたり、自分がこんな美少女になれたら人生楽しいだろなぁ。俺と変わってくれないかな……なんて馬鹿なこと考えながら見てた気もする。
昨晩は見たことのない投稿サイトを掘り出したので、ワクワクしながら見てたっけ……。今まで知らなかったのを後悔するほどの充実ぶりを見せるサイトで、僕の好みにドンピシャだった。
けど、それだけ。
俺がこんなことになってる原因には全くなりそうもない。
そう考えながら、ふらふらとPCの置いてある趣味部屋――一応仕事でも使用してるけど――に移動する。つけっぱなしのPCの画面に最後に見てたイラストが映ってて、ふんわりしたピンクブロンドの可愛らしい色合いの髪がまず目に入る。
「そうそう、これこれ、めちゃ可愛くて俺好みだったんだよなぁ、この絵……、って、あれ? これ、なんかめっちゃ見覚えが……」
イラストの女の子の顔。やたら既視感があるな……と考えること数秒。
「あっ!」
俺はマウスをひっつかみ、イラストを大きくしようとしたところで画面がフリーズした。
「ちょ、まっ!」
そう思った時にはすでに遅し。PCはあえなく落ちた。慌てて再起動しブラウザを立ち上げ、閲覧履歴から先ほどのサイトを立ち上げる。
【404 Not Found】
「え、マジ? うそ、だろ……」
表示されたのは、ネット検索でたまによく見る、お馴染みの表示だった。試しに何度かリロードしてみたし、キャッシュも読み込んでみたけど、結果は同じ。
「何だよそれ、結構凝った造りのサイトだったじゃんか。何で無くなってるんだよ!」
なんか
俺はすこし怖くなってきた。
『ピンポーン』
え? 何? 誰?
突然鳴り響いたインターフォンにビクリとしてしまう俺。
でも、ちょっと今は出たくない。
『ピンポン、ピンポン、ピンポーン』
う、うるせぇ……。さっさと
『ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポーーーン』
し、しつけぇ~。
『ちょっと兄貴ぃ、いないの~? もう、どこか出かけてるのかなぁ……』
げ、妹だ。
なんで……、って、ああっ、こんな事態になってコロッと忘れてた。今日ってディズキューランドに連れてく約束してたんだった。もっと言えばここに泊めてあげてって母さんに頼まれてるんだった。
『ちゃんと時間伝えておいたのにさぁ。まったく、あの隠れオタ兄貴。……ま、いいか、合鍵あるし。勝手に入って待ってよ』
なんか好き勝手言ってるな、
つうか、入ってくんな~!
帰れ、いやそれは無理か……、せめて出直してきてくれ~!
ど、どうする?
どうすりゃいいの、俺~!
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